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装備

 従業員通用口から売り場に出る道筋は、意外に簡単に見つけることが出来た。

 冷静に考えれば、元々商業施設なので従業員の利便性は考慮されており、分かりにくいはずは無い。ユーリが所々にある古代語が読めるのも大きかった。


「ここから入るんですね」

 ソウタが両開きの扉を開ける。


「!!!!」

 すかさず扉を閉めた。

「いますね。。。」

「いるどころじゃないですね。。。」

「しかもデカくないですか?!」

「電力になる振動起こすレベルなら、こうなりますよね。。」


 扉の向こうはかつての食料品売り場で、広いフロアに多くの棚が設置されている。

 その床、棚、そこかしこに大小様々なネズミがいた。

 彼らは5人を敵とも認識しない余裕ぶりだった。数の優位があまりに大きいからだろう。


「少し準備しましょうか・・・」

「ですね」

 そう言って、5人は受付まで戻る。

「しかし、なんでここにはいないんでしょう?」

 ソウタが疑問を発した。

「さぁ・・・何かネズミが嫌う音波や匂いが出てるのかもしれませんし、単純に生活導線に無いだけかもしれません」

 シンバが言った。

「こういうバックヤードは精密機械や情報機器も多いから、何かしらの対策がされている可能性もありますね」

 カンダが答える。

「機械仕掛けのネコでも巡回してるんですかね?」

 ソウタが冗談で言ったが、シンバの顔が引きつった。

「無い話では無いですね。。。基本的にネズミは学習能力が高いので、実際の危険が無いと音波も匂いも最初は効果があってもいずれ慣れるんですよ。ネコとは言いませんが、何かしらの物理的駆除システムがあるのかもしれません」

「ここも何があるか分からないので、長居は禁物ってことですね。じゃあ、進み方を決めましょう」

 オオモリが話題を本題に戻した。


「作戦は3つで、①堂々と行ってみる、②戦う、③何かしらの手段で追い払うですが・・・戦うは無いと思います。あの数は流石に相手に出来ない。堂々と行ってみる可能性はどうでしょう?」

「危険ですね。しばらくは大丈夫だと思いますが、何かの拍子に1匹に敵対されたら、それを契機に集団で襲われる可能性が高いです。それよりも・・・」

 シンバは自分の荷物を漁った。

「最後の『追い払う』ですがこんなものがあります」

 こぶし大の赤い缶のようなものだった。

「これを開封したらネズミが嫌って、かつ人体には影響がないハーブ由来の煙を出します。6本脚のネズミにも忌避効果があることは確認済みです」

「すごいじゃないですか!それはどれぐらい効果があるのでしょう?」

「1缶で約30分煙が出ます。半径10mに効果が及ぶので、退避行動が集団に伝播すれば目視できる範囲のネズミは一掃できるかと。使い捨てでこれが6缶あります」

「いいですね。1回これを放り込んで3分ぐらいしたら突入しますか。これって手で持って歩くことは出来ますか?」

「害が無いとはいえ、流石にキツいですよ。鼻や眼に染みると思います」

「それなら!ちょっと待ってください。すぐ戻りますが、念の為ソウタさん一緒に来て下さい!」

 そう言ってカンダがソウタを引き連れて場を離れた。そして1分立たず戻って来た。

「これに乗せて運んだらどうでしょう?」

 彼らが持って来たのは商品搬入用の台車だった。

「素晴らしい!これぐらいなら押す人がマスクをするぐらいで大丈夫かと」

 シンバがGoサインを出した。


 これで突破作戦の大筋が決まった。

 まず発煙させた駆除剤を台車に乗せて、フロアに転がし入れる。

 3分ほど待ってネズミ達が離れたら、その台車を押して進もうという算段だ。

 ユーリが案内図を読み取った所、フロアの中央に動く階段(エスカレーター)がありそうとのことで、まずはそこまで行くことにした。道中何事も無ければ1缶30分で2階の目的地までは行けるだろうと。


「後はこの際なので、全員の装備見直しと役割分担も決めましょう」

 オオモリが提案する。ネズミがあまりに多いので、教会メンバーもある程度の自衛が必要な場面が考えられるからだ。


 まず、カンダは拳銃をいつでも使用出来るよう装備する。ユーリとシンバも拳銃自体は持っているとのことだが、基本的には使用しない。乱戦になったら慣れない者達での銃撃は同士打ちが怖いからだ。

 その代わり、ユーリとシンバは警備ロボットが使用していた電撃棒を所持する。これはオオモリの予想通り、受付カウンターの裏にもう1本あった。


 オオモリとソウタは彼らの装備を使用するのだが、警備ロボットに備えてカンダが簡易的な絶縁処置を施した。警棒は握り部に彼が所持していた絶縁素材のテープを巻き付け、盾は警備ロボットの装甲の樹脂素材を加工して表面に張り付けた。

 銃弾をも跳ね返した樹脂の装甲が、カンダの持つ発熱ナイフ(ヒートナイフ)で切れる様は、民間の二人にはただただ不思議だった。

「人型みたいな複雑な形に加工出来るってことは、何かしらの方法で曲げたり切ったり溶かしたり出来るってことなんですよ。この素材は熱がポイントです」

 カンダはこともなげに言う。

 準備の際の会話で分かったことだが、教会の3人はやはり、それぞれが元々が研究職で得意分野を持っている。

 ユーリが歴史・文化、シンバが生物・行動学、カンダが機械工学とのこと。


「最初からこうやって準備すりゃ良かったな」

 フロア入口に向かいながらオオモリが呟いた。

「いえ、壁を作ってたのは私たちですから」

 ユーリが言う。

「そりゃお互い様です。そういうのはもう言いっこ無しにしましょう」

 ソウタが割って入った。

「ですね。じゃあそろそろ行きましょう。機械仕掛けの化け猫が出る前に」

 カンダが冗談を言う。

「じゃあ、そろそろ発煙しますよ。最初は煙の勢いが強いので少し下がってください」

 シンバが缶を開封して台車に乗せた。

 勢いよく白い煙が噴き出す。


「効いてくれよ!」

 全員が祈りながら、台車をフロアに押し出した。

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