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15・ロイアスとの初デ-ト

今日はロイアスと街に買い物に行く日。

打倒イザベラを誓った日から3日目。

2人の予定を合わせて休みを取った。

張り切って、『ロイアスイメージアップ大作戦!』決行よ!


カイルにリストアップしてもらった行きたいお店の場所はしっかり頭に入れてきたし、下準備は万全。それに、この街の様子も知りたかったし、とっても楽しみ。


やる気に満ちながら馬車に揺られていると、向かいに座っているロイアスがクスッと笑った。


「アリエル、とても楽しそうだな」


「ええ!とても。わたくしとロイアスの初めてのデートね!」


上機嫌でニッコリ微笑むと、さっきまで余裕のあったロイアスの表情が一変した。


「デデ、デ-ト!だと…!?」


慌てふためいた様子のロイアス。耳がポワンと赤く染まっていく。あっという間に私から顔を背けて目も合わせてくれない。もう!この可愛い生き物は何?ピュアな反応がたまらないわ。私は密かな忍び笑いを洩らしながら、照れまくるロイアスから目が離せなかった。


街に着くとまず、私はロイアスを連れてカイルオススメの紳士服が売っている店へと向かった。


店は洗練されていて、流行を取り入れた服が並んでいた。王都の人気店と比べても全く引けを取っていない。入ってすぐに店主を探すと、奥からこちらに近づいてくる綺麗な女性に気がついた。きちんとした身なりで品格を感じる。

装いからして店主かしら?

私の隣に立つロイアスにチラチラと視線を向けている。


「こんにちは。ジャンヌ-ル侯爵家から参りました。アリエル・ジャンヌ-ルと申します」


女性に向かって話しかけると、女性はとびきりの笑顔で駆け寄ってきた。


「カイル様よりお話は伺っております。わたくし、店主のシイラ・ミリオンと申します。ジャンヌ-ル侯爵夫人、ご来店お待ちしておりました」


礼儀正しく挨拶をしてくれたシイラに好感を持った。うん。気持ちよく買い物が出来そうだわ。

それにしても、カイル、店にあらかじめ連絡を入れてくれていたのね。さすが、できる執事!


「あの…本日は、ジャンヌ-ル侯爵様と一緒にご来店されると聞いておりましたが…」


恐る恐るシイラが聞いてきた。


私の隣に立っているのがその本人とは夢にも思っていない様子。きっと、美形の護衛とでも思っているのね。


ここでもしっかりと噂を払拭しなければ。

私は隣に憮然とした表情で立ち尽くしているロイアスを見上げながら、気合いの拳を握りしめた。


「ええ。こちらがわたくしの夫。ロイアス・ジャンヌ-ル侯爵ですわ」


その時のシイラの顔。面白すぎて、一生忘れないと思う。吹き出しそうになるのをどうにかこらえたけど。目は大きく見開いて、顔を真っ赤にしながら、「えっ!?そ、そんなっ!」と叫んで、後退りしていくんだもの。


「何をそんなに驚いているんだ?噂通りの男だろう」


皮肉たっぷりのロイアスの呟きに、シイラが、慌てて両手を振った。


「違います!全く違います!取り乱してしまいまして、大変失礼致しました。すぐに最上級のタキシードをご用意致しますわ。侯爵様のように、美しく見映えのする方でしたら、きっと、どれもお似合いになりますわ」


興奮したシイラが大量のタキシードを持ってきた。シイラの選んだ服はどれも流行を取り入れながら、落ち着いた色味の物が多く、ロイアスのブルーブラックの瞳と肌の白さを際立たせた。縫製も美しく、細部の刺繍も凝っている。シイラと一緒になって、「これも素敵!あれも素敵!」と試着する度に声を上げてしまった。


さすがに、10着目にはロイアスもうんざりした顔になっていたけど。ロイアスは抜群のスタイルの良さで、どれも着こなしてしまう。

迷った挙げ句、10着とも購入した。

似合う靴と小物も合わせて大量のお買い上げよ。

カイルからは了解も得ているし、これくらいの散財は許されるわよね。


シイラは、帰り際、お礼を言いながら頭を下げた後、微笑んだ。


「本日は誠にありがとうございました。またぜひ、お二人でお越しくださいませ」


「ああ。また来よう。世話になった」


ロイアスが笑顔を見せると、シイラが顔を赤くしながら目をキラキラとさせている。

すっかりロイアスのファンになったみたい。

ロイアスは噂とは全く違ってこれだけの美形だし、紳士的だもの。インパクトは充分なはず。

出足は好調。満足して一人でニンマリしていると、ロイアスから突然の申し入れがあった。


「アリエル、今度は俺の買い物に付き合ってもらいたいのだが。良いだろうか?」


何かしら?お腹でも空いたのかしらね?


「もちろんいいわよ。どこにでも付き合うわ」


街は賑やかでとても活気があった。港が近い事もあって、新鮮な魚介類を扱うレストランが多く目に入ってくる。これは、食事をするのが楽しみ!とワクワクして街を散策しながら歩いていると、ロイアスがふと、足を止めた。


前を見ると、ドレスショップだった。ショ-ウィンドウに美しいドレスが飾られている。「綺麗…」思わず見とれていると、ロイアスが私の肩をそっと押した。


「入ろう、アリエル」


ロイアスに促されて店の中に足を踏み入れると、数人の従業員が私達を見るなり一斉に頭を下げて来た。


「ジャンヌ-ル侯爵様と奥様でいらっしゃいますね。どうぞ。お待ちしておりました」


穏やかで物腰の柔らかい中年の男性が声を掛けてきた。この店に来るのは初めてだけど。どうして、ロイアスと私の名前を知っているのかしら?首を傾げていると、ロイアスが男性に向かって意味深に微笑んだ。


「昨日、お願いしていた件だが、用意はできているだろうか?」


「はい。もちろんでございます。さっ、奥様。こちらへどうぞ」


昨日?もしかして、ロイアス、昨日この店に来たのかしら?そういえば、カイルも午後から休みを取っていたし。2人でここに来たんだわ!


男性の目配せで、控えていた女性たちが私を試着室へと案内する。状況が飲み込めないまま、試着室へと行くと、大量のドレスが用意されていた。どれも、豪華で美しいドレスばかり。

有名デザイナーの新作だと一目で分かる。

金策の為に私が手放した大好きなデザイナーが手掛けたドレスもあって、ついつい、頬ずりする程に興奮してしまった。


「アリエル、気に入ったドレスがあれば全部もらおう。好きなだけ買うといい」


楽しそうなロイアス。まるで子供を見るような目で私を見つめている。少し、はしゃぎすぎたかしら。

美しい物を前にすると理性が飛んでしまっていけない。


「ロイアス、いいのかしら?まさか、こんな所に連れてきてくれるなんて…申し訳ないわ」


「いいに決まっている。一緒にパ-ティーに行くのに、俺の服だけ買ってどうするんだ」


そういえば、そうよね。ロイアスの事で頭がいっぱいで…自分の事に全く考えが及ばなかったわ。


「確かに。自分が、何を着て行くかなんて、考えてもなかったわよ!」


しみじみと言うと、ロイアスが堪えきれない様子で吹き出した。


「全く。アリエル…君という人は…ククッ」


何だか、めちゃくちゃ笑われてるけど。

不思議と嫌な感じはしない。ロイアスの瞳がとても優しいんだもの。


「侯爵夫人としての仕事を頑張ってくれている礼だと思ってくれ。それに君は…ドレスを3着しか持っていない。それがずっと気になっていた」


売らずに残した3着のドレスをライラと相談しながら、小物を使ったりしてどうにか誤魔化していたつもりだったけど、しっかりバレていたみたい。


これは、恥ずかしい。


ドレスを試着する度に、ロイアスは「良い。似合っている。買おう」しか言わず。結局、試着した23着全て購入する事になった。聞けば、昨日、ロイアスが既に厳選した23着だったみたい。そりゃ、全部気に入るはずね。


もちろん私としても嬉しい。どれも素敵なドレスばかりなんだもの。意外と言えば失礼だけど、ロイアスのセンスは抜群だわ。


ドレスに合わせて、靴やアクセサリーも購入した。当然、物凄い金額。うちの借金の額を軽く超えたもの。

侯爵家、恐るべし。

お会計の場で青ざめる私の横で、ロイアスは余裕の表情。


「安心しろ。アリエル。ドレスを買ったくらいで、侯爵家は潰れん」


ははは。心配が顔に出ていたみたい。染み込んだ貧乏性は、侯爵夫人となっても、なかなか抜けそうにない。


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