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第44話 「家族旅行8」

ペンギンもいいけどラッコもよき

 イルカになつかれた嬉しさの余韻が抜けきれずにいた私かと思われたが、そんなことはすっかりと忘れ切っており、現在はペンギンに魅了されていた。


「よちよち歩いてんで」

「かわいいね」


 このよちよち歩いている感じは東京の人でもわかりやすく例えるなら、カルガモの引っ越しがわかりやすいのではなかろうか。

 カルガモの引っ越しは警備員さんがしっかり守っている感じだが、こっちは周りの観客がやさしく見守っている感じだ。なにも前者が周りの人たちに見守られていないわけではない。だが、国家権力が作動しているのだ。

 どちらも優雅に散歩しているが、こっちのほうが楽しく散歩しているように思われる。


「自由っていいな」

「おいおい急だな」


 ふとそんなことを呟いたさくらだった。でも確かに言いたいことはわかる。

 のびのびと誰からにも拘束されず思うがままの世界、そんな世界に一度は行ってみたい。一番なくなってほしいのは時間だ。それがあるからこそ、今この一瞬を楽しもうと思えるのだが、それがない世界を創造したってかまわない。


「強くなりたいってこと?」

「そんなことじゃなくて単純に、休息がずっとないと息苦しいなって」

「そっか。じゃあゆっくりできる所を探そっか」

「もう着くけどね」

「うっす」


 せっかくいいムードにしてやろうと思っていたが出ばなをくじかせられてしまった。


 そうです。いまから釣りをします。


 城崎マリンワールドでアジ釣りができるということは、言わずと知れた有名である。

 道具やエサといった釣りに必要なものを諸々受け取り、セルフで釣りを楽しむことができる場所となっている。


「あれ?お姉ちゃんムリじゃない?」

「なにがよ?」

「だってセルフで釣りをするってことはその、釣れた魚どうするの?」

「あっ…」


 これはもう宿命です。魚釣りにはとって避けては来られないもの。それは釣った魚を針から外すという作業である。私にとって苦痛な作業であるということは言うまでもない。


「どっちが釣れるか勝負しよう。釣ったカウントは魚を針から外した人で」

「勝ち目ないやん」


 アジ釣りをし始めてから数分後、さくらの提案は私が勝てない内容だった。


「つまんないなあ」

「ごめんなさい。今日だけは楽しくしよ」

「いつも楽しいけど?」


 意地でも私1人でやらせるつもりだ。

 これまでの行いをすべてごめんなさいするか。もうそれしかない。


「いままでの非行をお許しください」

「あなたの非行じゃなくて奇行なのよ」


 奇行とはこれいかに。身に覚えがない。というか記憶に一切ない。

 うーむ…これといった思い当たる節が何もない。


「覚えてないなら思い出させてやろう。はんだごてをペン握り。修学旅行のSAで自分のバスをスルー。授業中に学校から脱走。全科目の試験で寝る。それ以外にいっぱいあるけど、その対応するの全部私だったんだからね」


 全て思い出しました。その節はどうもありがとうございました。こう思い返すと本当にごめんなさいしかでてこないな。


「今の私の中学校の先生から私がどう見られてるか知ってる?姉のインパクトが強すぎて私じゃなくてお姉ちゃんを心配するんだからね」

「心配かけさせてしまってごめんなさい」


 そんな話をしているとさくらの釣り竿が海面に引っ張られた。


「お姉ちゃんごめん。一番釣りは私だったわ」

「あんたイルカの時もそうだけど海の生き物になにかしたの?」

「愛さえあれば来る」


 まるで私が愛のかけらもないみたいな言い方。普段魚が嫌いなのがわかっているのだろうか。そのくらい私の竿には食いつきが悪い。

 こればかりは気長に待つしかない。


「さくら最近どうなの?」

「どうって何?」

「いろいろだよ。いろいろ」

「普通」

「学校が楽しくないなら私もついていこうか?」

「そこまでくるとキショいっす」


 そんなたわいもない話をしながらアジを釣っていくのだった。

気になる妹の学校生活

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