第40話 「家族旅行4」
おそば食べたい
「参りました」
そう敗北宣言したのは私だった。
今回の勝負は僅差でさくらの勝ちになった。
言い訳はありません。負けは負けなのでこの結果を真摯に受け止めます。
「老人の人にドア譲ってそのついでに私も譲ったのは迂闊だったでしょ」
「もう1人来てるなって思って譲ったらさくらだった」
そんな自分のミスを反省しながら今、お蕎麦屋さんを待っている。
さくらが優しかったから罰ゲームは無しとなった。私としては負けは負けなので妹に罰ゲームを執行してほしかったのだが、本当に僅差だったため無しとなった。
電車に乗る前、いや、改札を入る時私たちはICOCAをタッチし忘れて2人とも引っかかっている。その時駅員さんに言われたのは、ゆっくりタッチしてください、だった。私が引っかかっているのを横目に、さくらはというと私と同じように引っかかっている。
なんて間抜けな姉妹なんだろう。
「さくらもなんで私と同じように引っかかるの」
「いやあ、血筋は争えませんな」
「私たちが本当の姉妹かどうか知ってるのはお母さんだけだから」
「なにそれ怖い」
事実だから仕方ない。お母さんが万が一、ないとは思うが、不倫していたら私たちは義理の姉と妹になってしまう。そんなことはないことを願うばかりです。
いや、逆も然りなのか。お父さんがお母さん以外の女性と一線を越えて、その女性と別れて親権を勝ち取ったら、私とさくらは血が繋がってない状態になるのか。
こう考えるのは両親に悪いからもうしないでおこう。
恐らく血が繋がっていないということはあり得ない。
なぜなら、私たちの名前が花にまつわるからだ。
母親に名前の意味を聞いてみると、
『もみじは秋に色づいて、さくらは春に色づくでしょ。そこからとったのと、どっちも一度葉を落としても、必ずまた見れるってことから、挫けても何度でも立ち上がってこれるようにってことで名前をつけたの』
父親に名前の意味を聞いてみると、
『ひらがななのはどっちも漢字より平仮名のほうが女の子っぽいから』
もう確定です。
「さくらは私たちの名前の由来がなんだか知ってる?」
「うん。占い師さんにつけてもらったんだって」
この子に本当の意味を言うべきだろうか。ここで一番面白いのは真実を黙っておくことだ。ごめんだけどさくら、お前は純粋な子に育ちな。
「なんだ、知ってたんだ」
「え。ウソに決まってんじゃん」
うそ?今私純粋にすくすく育った妹だほめたばかりから嘘をつかれたのか?
いや、そんなことはない。あるはずがない。あのさくらだ。人をだますようなことは決してしないはずだ。
「ひらがなが可愛いのと花でしょ」
「知ってんのかい」
「ちょっとかまをかけてみただけ」
『お次にお待ちの2名の長谷川様』
「はーい」
そこで使う偽名があおい宅なんだ。
「どうするの?」
「温かいのも食べたくなってきた」
「じゃあ先に温かいの食べて追加で皿そば食べよう」
「そんなに食べれる?」
「今さっき何してか思い出させてやろうか」
普通とは違う山登りしてそのあとに山頂から駅までダッシュだぞ。食べれるにきまってる。
冷たいお蕎麦だけだと飽きるからね。
「すみません。天ぷらそばと山菜そばお願いします」
『少々お待ちください』
「なんでわかったの?」
「私はあなたのお姉さんですから」
妹が天ぷらそばが食べたいというのは長年のお姉さんパワーである。私がこういうところの天ぷらが美味しいとわかりきってのことである。実際に妹がこういうところの天ぷらそばを頼みがちというのをわかりきってのことである。
「本格的な蕎麦食べるのいつぶり?」
「私が作る昼の蕎麦は本格的じゃないってか?それいちゃもんですか?」
「そうだけど?」
「えーと去年の年越しそば以来じゃない?」
「それはスーパーで売ってるのをお姉ちゃんがアレンジしたからノーカン」
「じゃあ、数年ぶりだ。最後の食べたの覚えてない」
そんな話をしていると注文してものの数分で温かいお蕎麦がやってきた。
「美味」
「一瞬でございます」
「ぺろりでござる」
私たちの空腹が満たされた。ここまで来たのに冷たいそばを食べずに帰るのはさすがにお店側に失礼なので皿そばも追加で注文することにした。
うむ。皿そばも美味である。美味しすぎて無言で食べちゃう。
蟹を食べるときと同じ感じ。ご飯に夢中になってしまうあの状態と同じだ。
「お腹が満たされたでござる」
「お魚を見に行きましょう」
お蕎麦を堪能しつくした私たちは海の民たちをみることにした。
どっちも捨てがたい




