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第33話 「姉妹」

新年明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いします。

「そういえば昨日、かなたから連絡がきてた」


 もみじとそら先生がパソコンについて話し合っている中、私たち2人は退屈だった。そんな静寂を切り裂いたのはかえで先生だった。


「ついに妹を落としましたって?」

「それについては安心してほしい。あの子は臆病者だから」

「それ本人が聞いたら泣かない?」

「長谷川さんが言わないまでバレないから」


 もみじもそうだけど、この人も姉としての威厳は大丈夫なのかと心配してしまう。私も傍から見ると甘やかしすぎているのかもしれない。しかし、それは2年前のことだ。


 ――――――


 私には妹がいる。年齢は3つ離れていて、名前は麗星(りほ)。彼女は今成長期真っ只中の中学3年生だ。父が転勤することが決まったのは妹が中学2年の夏休み前だった。父の転勤で私か妹のどちらかがついていくことになり、なんでもできる彼女が父を支えるという名目上、渋々父についていったのだ。


 私は当時妹と離れるのは嫌だった。なぜなら、未知の人達に彼女がとられるかもしれないと思ったからだ。こう思ったのは私だけじゃない。さくらちゃんも同じ風に思っていた。同い年の幼馴染。そして何よりも大切な友達が次に会うときに自分が忘れられてしまっているのではないかという心配。このことを聞いたとき、私はさくらちゃんの姉がもみじなのだな、と確信した。


 姉であるもみじもついつい大事なことになると、そのことについて深く考えてしまうことがある。ひかりのこともそうだが、さくらちゃんがこれから、学校で1人でやっていけるか心配で、一か月間寝不足の日々が続いた。


 そんなある日、妹から一通の連絡がきた。それは、初めてさくらちゃん以外の友達ができたということだ。さくらちゃんもこのことを聞いて悲しくもあり、嬉しくもあるような、複雑な顔をしていた。その友達が男の子だということを聞いた瞬間、さくらちゃんは麗星みたいにはならないと決心していた。あくまで一定の子を贔屓にせず、みんな対等に関わっていこうという決断だそうだ。


 妹が転校した先はそら先生とかえで先生が通っていた中学校だった。父が転勤することになり、妹がついていかなければならないということを話した。すると、偶然にも転勤先が2人の地元だった。驚いたことに、かえで先生には年の離れた弟がいた。かえで先生の弟と一緒の学校にいけないか頼んでみた。


 だが、私が思っていたこととは異なる答えが返ってきた。それは、かえで先生の弟も通う中学校に行ってもいいということだった。公立中学校でもそんなことができて、これこそが社会でいうコネクションパワーなんだなと思った。


 そこの学校の校長先生と教頭先生は2人の担任の先生だったらしい。ダメもとで、今生徒が親の転勤でそっちに行くことになって大変だ。知り合いが1人でもいたほうがいい。これを解決させるには先生達しかしない。このことを強調して伝えると、簡単に許可が下りたらしい。何よりも教え子が自分に頼ってきたことがうれしかったらしい。


 父と妹が金沢に行く日になった。当日、麗星とさくらちゃんの最後の2人だけの空間を少しだけお邪魔した。


「また会えるんだから、向こうの人と仲良くなってきてね。それで、帰ってきたらどんな人か教えてね。そしたら、麗星より私のほうが顔が広くなるから」

「さくら何もしてないじゃん」

「期待はしてないけど、頑張ってね」

「なにそれ」

「何?別れるのが悲しいとか言ってほしかった?」

「これも私たちらしくていいよね」

「そうそう。悲しみながら『いってらっしゃい』を言う親はいないから。笑顔で送り出さないと」

「送り出さないと?」

「会えなくなるかもしれないし」

「さくらの願いを叶えるために、ここは私が負けといてやろう」

「『さよなら』は言わないよ」


 これが2人の最後の会話だった。


 なにを隠そう、妹が初めてできた友達がかえで先生の弟だ。送られてきたメッセージには写真も添付してあった。それはさくらちゃんに自分は大丈夫だ、と安心させるためだろう。私は一目見た瞬間にこの子のことを見たことがあるなと思った。それを確認するために先生に話した。


「先生の弟ってもしかしてすごく先生に似てます?」

「自分では似てないと思うけど、そらは似てるっていうね」


「女の子らしい顔つき?」

「そらはそういうね」


「もしかして、この子だったりします?」

「その子だね。貴様どこから仕入れてきた?」

「妹が送ってきました。すごく似てる」

「そうかなあ、家族はみんな違うっていうんだけどな」


 ――――――


「それで、なんて書いてあったんですか?」

「麗星ちゃんが不登校だって」

「は?」

「修学旅行に行ってきたって。ちょっと、ボコボコにしたそうな顔でこっちに来ないで。今のは悪ふざけ、ジョークだから!」


 妹が万が一不登校になったらお姉ちゃんが迎えに行くから安心してほしい。送り迎え、授業参観も込みだから妹も安心して過ごせるだろう。


「何見てるんですか?」

「送られてきた写真」

「楽しそうですね」

「東北らしいからね」

「私たちも修学旅行か」

「私たちは完全自由性だから、きっと楽しいよ」


 最後の修学旅行は私や先生にしても、かけがえのない思い出になるに違いない。

明日はあの子の意外な一面が見られるかも!

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