第30話 「近似」
腹ごしらえ
「らっせえ。どちら様ですか?」
『じゃ、帰ります』
おっとこのお客さんはインターホンの使い方をご存知でないらしい。どうやら私が使い方というものを伝授しないといけないらしい。
「インターホンを押したということはつまり、この家に用事があったから訪れたのでしょう。それなのに何もせずにそのまま帰るというのはいかがなものかと思います。まずはお名前を言ってから要件を伝えてもらうと対応するこちら側からするとありがたいです」
『それより知っている人をこんな灼熱な外に放置するのは外にいる人からするといかがなものかと思いますけど』
はは、これは一本取られましたな。
そら先生に正論を正論で言い換えさえれてしまった。対策されていたらしい。対策というか思ったことを言ったまでだと思う。いや、そう思いたい。そうしないとこれから自分がどうするか先に読まれてしまう。つまり、補習をバックレられなくなるってことなんだよね。
「今すぐ開けます」
灼熱地獄から2人の先生を開放すべく玄関に向かった。ドアを開けると「待ちくたびれたぞ」と言わんばかりの表情で立っていた。
「その、中は冷えてます」
「一応まだ梅雨は開けてないってことだけ言っとく」
ぼそっとかえで先生が呟き2人を天国へ誘ったのでした。(続きます)
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「めっちゃいい匂いする」
「お腹空いた」
この光景なんかデジャブな気が...気のせいか。疲れてんのかな。いや、そうに違いねえ。あの人たちがあおいと同じなはずがない、と思いたい。
「もしかしてなにも食べてきてないんですか?」
「「そうだけど」」
ちょっと先生方、「その当たり前でしょ?ついに暑さで頭がおかしくなったか」みたいな顔で見てくるのやめて!こっちが悪いみたいになる。確かにお昼は食べてこいとは言ってない。そうだ、この人たち今さっき起きたんだ。私のコンピューターは故障しているが脳内コンピューターは正常に働いた。いやフル回転している。(してない)
確か、袋麺は私たちが食べたので最後だった気がする。
「パスタでいいですか?」
「田所さんが作るんですか?
てっきりキャベツしか切れないものだと」
「ちょっと先生、その情報どこからか詳しく」
「一応名前は伏せますがこの家にいる誰かとだけ」
わかってはいたがあおいだったかそりゃそうだよね、そのことを知っているのはあおいしかいない。高校に知り合いなどいないさくらはもってのほかだ。千切り事件は置いといてパスタをどの味付けにするか迷う。暑い中来てカルボナーラやナポリタンといった濃い目の味付けのものは望んでないだろう。こんな時はさっぱりしたものがいいはず。簡単でさっぱりしたパスタなんて一つしかないよね。
そう、お茶漬けの素で作るパスタ
「じゃあ先生方はできるまで妹と戯れててください」
「長谷川さんじゃないんだ」
「その子とも遊んであげてください。私の部屋で暇してるはずなので」
「そもそもこの家初なのですが」
「じゃあ妹しか残ってないですね。トイレの場所だけ説明するんで自由に使ってください」
「もしかしてハメました?」
「なんのことかわかりませんね」
一体私が誰をどうハメたというのだろうか。あおいより妹と居ろなんか一言も言いてないけどな。さくらと会いたそうにしてたし、あおいなんかといつでも会えるから我が妹の可愛さを十分に味わってほしい。一応あおいも呼んでおこう。取られた、と言われなくて大丈夫のために。
パスタが茹で上がるには時間がかかる。それまでの時間にすることといえば一つ。材料を切って炒めるだけだ。炒めるといってもベーコンだけだ。最後にのせるようのねぎはラーメンの余りが残っている。料理は効率が命だと私は思っています。
そうこうしていると茹であがり、焦げ目をつけたべコーンとお茶漬けの素で和えるとあら不思議、もう完成寸前ではありませんか。お皿に盛り付け、最後にねぎをあしらえて完成。
「腹ぺこの人、できましたよ」
「待ってました」
「お腹空いた」
「少々時間はかかりましたが、どうぞお召あがりください」
「「いただきます」」
「あっさりしてて美味しい。ご飯だけにかけるものかと思ってました」
「暑い日はあっさりしたのがいい」
2人のお皿にのったパスタがあっという間に消えてしまった。嬉しいことにお茶漬けパスタは大好評だった。
腹が減ってはなんとやらだよ!




