第28話 「前夜祭」
負けるんじゃねえぞ!
みんなが来る前日。私たち姉妹のムードは最悪だった。そこ、いつもの事って言わない。なぜこんな感じになってしまったのでしょうか。そしてどちらがこんな雰囲気を作り出してしまったのでしょうか。そうだね。私のせいだね。
帰宅した田所もみじ氏は妹が作っているご飯を今か今かと待っていました。そして、ご飯が出来上がり二人で楽しく食事をしているときにふと気がついてしまったのです。そういえば明日みんなが来るということを妹にはまだ伝えていなかったということを。もちろん、この時点で言うのが遅いと怒られてしまうのは目にみえていました。せっかくの休日に何してくれとるんじゃワレェ?と言われるまでがテンプレだなと思い、意を決して伝えることに決めました。
「明日人来るけどよろしくね」
「ハッ?」
あれえ、さらっといった気がしたんだけどな。だめだったかぁ。懇願するしかないか。そう思った瞬間、私はビビっときたよね。そうだ、家庭訪問にしてしまおうと。なんて賢いんだろう、そう思ったね。
「家庭訪問だよ」
「唐突に家庭訪問する学校があるか!さてはやらかしたな?」
「何もしてないから。なにも」
「じゃあ、お母さんに戻ってきてもらわないとだね」
こいつ、もしかして気づいているというのか。いや、それはない。冷静になれ。まだ負けたわけじゃない。
「いつものようにさくらで十分かな」
「いつもって、これまでお姉ちゃんの学校で家庭訪問なんかなかったでしょ」
ダメだこれ。いや、まだ詰んでないはず。でも、藤井竜王ならよめるかもしれない。助けて竜王。
「今年からするんだって」
「そんな紙もらってないけどね。しかも、そんなことホームページにも載ってないけどね」
参りました。まで73手で後手さくら挑戦者の勝ちになります。そして今に至ります。
「実はパソコンを治しに来てくれて...」
「その事か。じゃあ嘘なんかつかずにホントのこと言ってくれればよかったのに」
「さくらの貴重な休日が無くなるから」
「そんで、誰が来るの?」
「あおいと担任の先生とあおいの先生」
「勢揃いじゃん。そこに親いたら歴とした懇談だよ」
まあ、実際のところ懇談みたいのところではある。だって、あおい以外はさくら狙いだしね。
「いつから何時まで?」
「昼の1時からで夜はそんなに遅くならないと思うけど」
「全員昼まで寝てるやつじゃん」
わかっちゃうか。姉と同じように起きてくる人たちだもんね。ここでクソオタクというフレーズが出てこないだけ私は嬉しいよ。
「みんなクソオタクじゃん」
アアァァあ!言いよった。みんなの前では口にしてはいけない言葉を言いよった。お姉ちゃん悲しいよ。
「実質お姉ちゃん3人を相手かしんど。給料くらいでんかな」
「ホントにごめんなさい」
「いえいえ、謝って欲しいんじゃないです
私はタダで昼から働かされるのが嫌なだけです」
「いくらご所望で」
「1日五千円で許しましょう」
なんとも言えないような金額。最低賃金が930円だから実質五時間半ぐらいか。でも、パソコンが治るんならはした金じゃい。さようなら津田梅子。今は樋口一葉だけど。妹の口から福沢諭吉が出なくて本当によかった。
「明日よろしく」
「それが人にモノを頼む態度か?」
「ちゃんと給料分働けよ」
「ア?」
「明日はよろしくお願い致します」
「ブツは?」
「今すぐ」
人に頼み事をするときはしっかり礼儀をわきまえようね。くれぐれも私のようになるんじゃねえぞ。
屍を越えてけ!




