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生き様に惚れ込んだ少女と惚れ込まれた少年

作者: タカヒロ

私は人がどんな人生を送ってきたのかが見える。ひと目見ればわかってしまうのだ。



そしていつしか私は人の生き様をランクづけしていた。平凡はB、非常につまらなく、醜いものだだったらC、そして感動的で心が揺り動かされるのはAと自分の中で評価していた。



しかし、私はまだAをつけたことがない。このゲームを始めて3年以上経つが私の合格点を超えた者は一人もいないのだ。



今日もどうせ私を楽しませてくれる生き様はないのだろう。



そう思い登校していると、急な坂道を猛スピードで上がる自転車を見かけた。彼の額には汗が滴れており、シャツはびっしょりと濡れている。



そんなことを気に留めない彼は一心不乱にペダルを漕ぐ。彼の生き様が気になった私はいつもの通り鑑定してみた。すると、私の脳は初めて生き様ランクAをつけた。これまでの人たちと全く違う人生に衝撃を受けた私はその場に倒れ込んでしまった。そして惚れ込んでしまった。






目が覚めると、フカフカの布団に包まれていた。天井は白く、見慣れたものである。そうだ。私は坂道で倒れてしまったんだ。初めてみるAランク生き様に痺れて。



いろいろと振り返っていると横開きのドアが開いた。その先に立っていたのは先ほどの彼だった。


「気がつきましたか。」


「はい。」


「いいですか落ち着いて聞いてください。」


彼は唐突にあの医者のモノマネをしだした。そしてそのまま私が倒れていたことと、鼻血を出していたこと、昇天しかけていたことを事細かに話してくれた。私は話を聞いていくたびに彼の生き様に対する気持ちが抑えきれなくなった。



「実はあなたの生き様に惚れてしまって昇天しかけたのです」


彼に本当のことを言うと彼は優しく微笑んで

「あなたには僕が見えるんですね。嬉しいです。最近は全く気付いてくれなくてね。」


「私はどうしてあなたのような人がいるというのに誰も振り向かないのか不思議でなりません。」





「みんな知らないんだよ。


そして興味がないんだ。


人のことなんて。


自分のことだけが気になってそのために人と話して自己評価をする。人間ってそんなものだろ。


よく自分を客観的に観察することはできないと言われる。


確かに物理的にはできない。


でも実は自分の心をよく理解すればできるんだよ。


でもそれが怖いから逃げ出すんだ。本当の自己評価は他人と比べて出すのではなく、自分自身と向き合った結果のことだ。それを知らない君の愛には応えられないな。」







彼はそう言い放つとどこかに消えてしまった。


一体彼がどんな人間でどのような人なのかはわからない。またどこの住民で何処にいるのかもわからない。


ただ一つ言えるのは彼は私に何かを伝えるために現れたということだ。


そして私はその意図を私なりに理解したつもりだ。そうして教室に戻ると生き様は見えなくなっていた。

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