出会い
~??? 森原俊也~
暗闇から意識が浮上する。だんだんと穏やかな光が目から入ってくる。
うっすら目を開けると俺は花畑の真ん中で寝ていた。
「う……ん?」
あれ、ここは……天国?ってことは、死んだのか。……うん、まあ、そうだよな。仕方ない、か……。
にしてもきれいなとこだな~。なんて花かな?
近くにあった花を引き寄せてみると、葉っぱの陰からピンク色の花のついた小さな人(?)見たいのが飛び出して。ちょっと気になって、手を近づけたら消えてしまった。
「……は? なに、今の。……妖精?」
えーと、天国にも妖精っているの……?!考えてみれば咲いてる花も見たことのないモノ、というか不思議な形してるし……。
もしかしてここ天国じゃなくて夢? 俺の夢?
そう思い、頬をむぎゅっとつねってみる。
「うん。いたい」
夢じゃないらしい。じゃあ、なに? やっぱ天国?
あ~~~~、わっかんねぇ!
訳が分からなくなって空を見上げると小さな影が見えた。それはだんだんと大きくなり、人の形をしているのが分かった。陰からして多分ドレスっぽいのを着ている。
……エ゛。つま、り
「空から女の子が降ってきてるー?!」
マジかよ、あるのかよ、こんな事!!
えー、あー、あ! とにかく受け止めなきゃ死んじゃうよね?!
そう思い腕を空に向かって広げる。
だけど……受け止めきれるわけがなかった。
ろくに鍛えてもいない体は女の子の重みと落下の衝撃に耐えきれず、そのまま下敷きになったものの、奇跡的にけがはなかった。
「いった~。
生きてる、よね……? おーい、大丈夫?」
なんとか這い出て女の子に声を掛ける。息はしてるみたいだけど、大丈夫なのかな。
よく見るとドレスはボロボロだし、ところどころに小さな傷がたくさんある。あ、この子髪の毛白だ、珍し。初めて見たかも。
水でも汲んできた方がいいのかな?あ、でも入れ物がないや。
何をすればいいのかもわからなかったのでとにかく目を覚ますまで待ってみることにした。
十分ぐらいたった後にその子は目を覚ました。
寝てた時から思ってたけど、超可愛い。え、人形みたい。目はピンク? ってそうじゃなくて。
「あ、気付いた?痛いところとかない?」
「?!……まさか本当に……はあ」
信じられないとでもいうようにつぶやいたその子は、大きいため息をついた後にガバっと起き上がった。
「ッ!急に起き上がっちゃだめだよ!
……怪我とかはない? 」
「……ない。
お主名前は? 余は……私はどれくらい眠っていた?」
なんとういか、見た目と口調がちぐはぐだなぁ。なんか無駄に威厳もあるし。
……少女の見た目で中身おじいちゃんとかないよね?やめてよ、反応に困るから。
「どれぐらい寝ていた? 正確でなくてよい」
「えっと……10分ぐらいだと思、います?
名前は、も……」
あれ、こういう時って名前行っていいんだっけ?ここがどこかも分からないし、これからどうなるのかもわかんないんだから馬鹿正直に言わない方がいいような気がする。
どうしよう?
「名前がないのか?」
「いや、ありますけど……。えっとぉ」
「?……ああ、そうじゃな。先に名乗るのを忘れていた。
私の名はフレイシア、花属性じゃ」
「ああハイ、フレイシアさん。花属性。
……?! 花属性!?」
属性?なんの?!……魔法?ってことは異世界? いやいやいや、ゲームとかラノベの世界でもないんだからそんなことあるわけ……あるかもしれない。
だって、そうだとしたらここの花とさっきの妖精(?)の説明ができてしまう。しかもテンプレじゃないか、事故にあってそのまま異世界へ GOなんて。昔ラノベよく読んでたからたくさん見たわ、この流れ。
「なんじゃ、いきなり大声を出すでない。
属性がどうしたというのだ」
「あの、一ついいですか?」
「なんじゃ」
「ここってどこですか? 後、魔法ってありますか? あるとしたらみんな使えるんですか?
フレイシアさんはなんで「待て」
「一つと言っておいて何故そういくつも聞いてくるのじゃ。一度に言うでない」
「すいません。なんか聞きたい事がどんどん出てきて……」
「はぁ。まず、ここがどこかは分からん。私がなぜ降ってきたのかはわからんが心当たりはあ る。
それと魔法はあるし、ほとんどの者が使えるはずじゃ。が、お主妙なことを聞くのぅ。」
フレイシアさんが怪しむような眼で見てくる。
もっとオブラートに包めばよかった。どストレートに聞いちゃだめだよな、本当に魔法の世界だったら相当変なこと聞いてるはずだから。
「まあ、いい。
私からもいくつか聞いてもいいかの?」
「あ、はい。なんですか」
「まず、なぜお主は私に敬語を使う? 初対面であろう?」
「意識せずに使ってました、まじですか。
フレイシアさんが威厳あふれる口調とオーラを醸し出してるからですかね?」
馬鹿正直に考え付いたことを言うとフレイシアさんが一瞬固まった。
「……。口調については気を付けよう。
次、おぬ……名前は? 先ほど聞きそびれただろう」
「え、どうしよ。……お、れの名前は……俊也です」
本名言っちゃった。テキトーに偽名教えればよかったのに!!
「……ふむ、あまり聞かない名だな。来ている服も珍しい。
どこからきたのだ?」
本当のことは言いたくないし。……あ、そうだ。
「実は……魔法で飛ばされてしまいまして、俺もなにがなんだか分かんないんですよ。
俺が住んでた村については、掟があるので詳しいことは話せません。でも、ほとんど外部と
の接触はありませんでした」
「そうか、災難だったな。
私も魔法で飛ばされたようなものだから、似た者同士仲良くできるといいな」
うまくごまかせたかな? 怪しまれてもないみたい、よかった。
「はい、お願いします。
……あの、フレイシアさん」
「何じゃ」
「これからどうするんですか? 」
少し考えるそぶりを見せてからフレイシアさんが口を開く。
「そうじゃな、特に何も決めておらぬが……ともに行くか? あてのない旅へ」
「えっ……? 」
どう、しよう。ここがどこかも分からないから下手に動かない方がいい気がする。……でも、この人と一緒にいれば何とかなる気がする。うん、あてのない旅っていうのも楽しいかも。
「ま、よく考えろと言いたいところじゃが……別れた方が「行きます」
「は?」
「一緒に行きます、あなたと。
俺一人じゃ心ともないですし、これもきっと何かの縁ですから」
笑ってそう答えるとフレイシアさんは何故?という表情になった。
「言い出しておいてなんじゃが、本気か?
何者かも分からぬ者と共に? それに、空から降ってきたのだぞ? 余は」
「え? そこ怪しがるとこなんですか?!」
「……。よく分からぬの、お主は。
まあ、社交的と捉えればよいか……」
あれ?これって褒められてる?!
「え、ありがとうございま「能天気ともいう」
……ヒド。言われてないけど調子に乗るなって言われた気がする。
「さて、此処に何時までも留まる訳にもいかぬ。行くぞ」
「はい! ……あっ!!!」
「! なんじゃいきなりっ」
ものすっごく重要なことに気づきました。それは、それは……
「フレイシアさん。
服がボロボロなうえにぶかぶかです……!」
「……!! くぁwせdrftgyふじこlp~~っ?!
ゴホン。こ、この程度なら、魔法でどうにかなる」
そういうや魔法陣っぽいのが広がって、今までとは違う葉っぱとかがあしらわれた服になっていた。
わぁー、ホントの魔法だぁ。……にしてもなんで今まで気づかなかったのかな、俺。
フレイシアさんが服をすっかり直してしまってから、俺たちは花畑を出た。
次回は、フレイシア視点と少し話が進みます。
お楽しみに!!