始まり2
~東京~
俺の名前は森原 俊也、28歳。現在無職
最初に就職した会社は一瞬で倒産し、アルバイトを転々として何とかこれまで生きてきたけど家賃滞納で住んでたアパートをとうとう追い出されてしまった。……我ながら情けない。
これからどうしよう。親には極力頼りたくないし、こういう時に頼れる友達もいない。それよりも、お腹すいたなぁ。あといくらあったっけ?
そんなことを考えながら横断歩道を歩いていると、駄々をこねる男の子と母親がいた。その子が結構大きい声を出して母親にモノを強請だっていて、かなり目立っていた。
「なぁんでぇ! かってよー!!」
「買いません。お約束したでしょ?今日は何も買わないって」
「してないもん! ……ぅわーん! もうままのばかぁ!!!」
そういうと男の子は母親の手を振りほどいてこちらに走ってくる。
……そういえば俺、横断歩道渡ってきたよね?もう、赤なんじゃ……。
俺が後ろを向くのと男の子が横を走りすぎるのが同時だった。男の子が赤信号の横断歩道に向かって走っていく。
「まって!」
その手を捕まえようと手を伸ばしたけど、すんでのところで捕まえることができなかった。
ああ、もう!俺は足遅いんだよ!
それでも必死に男の子を追うと横断歩道の直前で何とか止まらせることができた。でも、その子は余程母親のことが嫌だったのかさらに逃げようと暴れだした。予想外のことで、俺は手を簡単に離してしまう。
その時一台の車がかなりのスピードでこっちに走ってきた。
「あぶない!!!」
考える前に体が動いた。男の子を突き飛ばした瞬間体に衝撃が走る。地面にたたきつけられ、何回か体がはねた。不思議と体に痛みは感じなかった。
ああ、俺死ぬのか。そりゃそうだよな。
未練はないけど、最後にご飯食べた、かった、な……。
それを最後に視界が真っ暗になって、何も感じなくなった。