パパっとやってしまおう
「あ、いや……その、断れると思いましたから……」
「そうですね、普通の、健康的な身体ならば恐らく断っていたでしょうが、今のわたくしには選んでいただけるだけでもありがたいと思えてしまうので、絶賛大安売り中でしてよっ」
そう、場の雰囲気を和ませるつもりで自虐ネタっぽく明るく言ってみたのだが、むしろカイザルやウィリアム達には逆効果だったらしく、一気に空気が変ったのが肌で感じる事が出来た。
どうせ今のわたくしの身体の状態は自分達のせいであると、わたくしが思っている以上に負い目を感じているのであろう。
まぁ、あながち間違いではないのだが、根本的な部分ではそういう身体だから致し方無いとわたくしは恐らくかなり前から自分でも分からない内に諦めており、カイザルとウィリアムはまだわたくしの身体の事を諦めていない、という違いから生まれて来る差異なのだろう。
そう、思ってくれている事が伝わって来るので、それもあってビンタ一発でカイザルを騎士にすることを承諾したというのは、カイザルとウィリアムには敢えて教えない。
これはある種、いままでされてきた事に対してのわたくしなりの小さな仕返しなのだ。
そうする事により彼らはわたくしの事を、わたくしが死んでもまるでしこりのように後悔が残り、その後悔と共に生きて行くだろう。
なんて、意地悪な女なのだとわたくしながら思う。
これは間違いなく呪いだ。
でも、わたくしは聖女でもなければ聖人君子でもないのだから、それくらいの仕返しは許してほしい。
「まったく、目は見えなくとも今あなた達がどのような表情をしているのか、まる分かりでしてよ? わたくしの騎士、そしてわたくしの騎士となるような人ならばもっとしゃっきっとしなさいなっ。 しゃきっとっ。 さぁ、わたくしの気が変わらない内にさっさと騎士の誓いをやりますわよっカイザルっ! 形式だけだとしてもするとしないとでは、例え誰も見ていなかろうともこういうのは大事でしてよっ!」
「それをマリー様が言いますかね」
そう答えるカイザルの声音は少しばかり元気が戻って来たようで一安心である。
この二人のしおらしい雰囲気は、わたくしの仲の彼らとは似合わな過ぎて、こっちが逆に居心地が悪くなってしまいそうであったので、またしおらしい雰囲気に戻ってしまう前にパパっとやってしまおう。
「では、準備をいまからするからマリーは少しだけそこで待っていてくれ。 とは言っても、俺の時と同様に剣を用意するだけなのだが」




