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そんな相手でしかなかったのだ

馬車を降りるだけでもしんどい。


そこから歩くだけで息切れと動機が激しくなる。


以前までであればパーティーに参加できるという高揚感の方が勝っていたためあまり気にも留めてなかったのと、何よりも前世での『普通の身体』という経験もなかった為、この魔力欠乏症の身体が私にとっての普通であった。


だけど今は違う。


この身体がどれ程普通からかけ離れている身体か身をもって分かってしまう上に、これから行くパーティーの会場は今の私にとってはある意味で死刑台へと登って行くような気分でしかない。


「大丈夫ですか?マリーお嬢様」

「心配してくれてありがとう、セバスチャン。でも大丈夫ですわ。腐ってもわたくしはゴールド家長女ですもの」


そんな私を気遣って執事のセバスチャンが声をかけてくれる。


そのほんの少しの優しさが今の私にとっては何よりも嬉しく感じてくると共にパーティー会場へと向かう気力を回復させてくれる。


「アンナもそんな顔しないの」

「で、ですが……パーティーの日でこんなに楽しくなさそうなお嬢様を見るのが初めてで……」

「ふふ、そんなに心配しなくても大丈夫ですわよ。それに、わたくしの事をここまで気遣ってくれる側仕えの二人がいるんですもの。わたくしはそれだけで力が漲ってまいりますの」


そしてセバスチャンに続いてアンナまで心配げに声をかけて来る為、問題ないと細い腕で力こぶを作る素振りをしながら答える。


しかし、それでも長年ゴールド家、そしてわたくしの側仕えとして仕えて来た二人だからこそ魔力欠乏症であるわたくしの事が心配で仕方が無いのだろう。


そんな頼もしくも心優しい二人がわたくしをサポートしてくれるからこそわたくしは安心して学園にも通うことができるし、こうしてパーティーへと参加をする事もできるのだ。


この二人には本当に頭が上がらない。


それにしても、とわたくしは思う。


とうとう婚約破棄をするであろう今日になってもカイザル殿下は一度たりともわたくしをエスコートして同伴してくださらなかったな、と。


その事が遠回しに『お前なんか要らない存在だ』といわれている様な、そんな風に思ってしまう。


そしてそれは案外当たっていたのかもしれないな、と思う。


でなければ学園でスフィアとであったとしても婚約者であるわたくしを無視する事もなかったであろうし、顔に泥を塗るような婚約破棄のしかたもしなかっただろう。


カイザル殿下にとってのわたくしは、居ないものとして無視してもいいし、公衆の面前でこっぴどく婚約破棄をしても良い、そんな相手でしかなかったのだ。

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