地獄の日々も日常となる
ホント、良く自分でもあの地獄の日々を耐えしのいだと思うレベルだ。
しかし、あの頃のわたくしからしてみれば、あれが日常であり、前世の記憶がある今だからこそあの頃の環境が如何に酷いものであったのかが客観的に理解できるのである。
友達と楽しい会話も、一緒に街で買い物したり遊んだりする楽しさも、何もかも知らなければ地獄の日々も日常となる。
もしあの頃にそれらを知ってしまっていたのであれば当の昔にわたくしの精神は壊れていたのかもしれない。
「まったく、なんて顔をしているのですか?そんな怖い表情の方と一緒に食べても美味しくありませんわ。ほら、笑ってくださいな」
「す、すまん」
そして目の前のウィリアムが心の中でどのような事を企んでいるかは分からないのだが、今だけでもわたくしの話し相手になってくれれば有り難い。
そう思うのであった。
◆
昼食も食べ終え、午後の授業はサボる事にしたのだがウィリアムがなぜかついてきて一緒に学園裏の森でサボっている。
わたくしのせいでウィリアムの内申評価に傷がつくのは何だか気が引けるため授業をサボらずにちゃんと出なさいと言ったのだが、説得する事が出来ずこうしてついて来てしまった。
もしかしたらわたくしを口実にサボりたかったのかもしれない。
いや、きっとそうだ。そうに違いない。
「まったく、サボりたいからってわたくしを利用するのは如何なものと思いますわ」
「俺は既にマリーの剣なのだから最早学園になど意味が無い」
そしてその事を注意するとこれである。
これを言われてはウィリアムをわたくしの騎士にした張本人は何も言い返せなくなる事を知っているのだろう。
ウィリアムのどこか誇らしげな表情が腹が立つ。
「将来何か、就職や跡継ぎなどで不利益が出たとしてもわたくしは一切庇いませんからね。その時はご自分でご自分のケツを拭いてくださいまし」
「だから後を継ぐ事もどこかに就職するつもりもないと言っているだろう。 分からず屋」
「そっくりそのままお返しいたしますわ。 将来後悔しても知りませんわよ」
なんだか今のウィリアムを見ていると若い頃の前世のわたくしを見ているようだ。
あの頃はただ漠然と大人に敷かれたレールをお利口に進む事をなぜか反抗したくなり、勉強もそこそこしかしなかったのだが大人になってから後悔したものである。
あの頃もっと勉強してもっと良い大学に入っておけば良かったと。
「なんだその表情は?」
「いえ、ウィリアムもまだまだ子供だなと」




