それはまるで繊細なガラス細工の様に
あぁ、令嬢たちの好奇な視線がダイレクトにわたくしの胃へと攻撃してきますわ……。
そして当然の様にウィリアムはわたくしの教室までお姫様抱っこで運んでくれる。
体力的には確かにありがたいのだが、精神的ダメージがそれをはるかに凌駕してくるので朝から気が滅入ってしまいそうだ。
そして当然聞こえてくるのは黄色い悲鳴と黄色いひそひそ声。
それら黄色い声など気にしないと思えるだけの精神力があればいいのだが、残念ながらわたくしの肝はそこまで座っていないし図太くもない。
それはまるで繊細なガラス細工の様に。
嗚呼、可哀そうなあたくし……。
と、悲劇のヒロインぶらなくてはやっていけない程には追い詰められている。
それでも一限目から三限目までは出席日数がギリギリの歴史の授業である為気を引き締めなおして授業に挑む。
あぁ、前世に戻って栄養ドリンクを大量に買ってがぶ飲みしたい……。
そんな精神的に疲れている状況なのだが、大好きなゲームの、実際に起こったこの国の歴史を学ぶのはそれはそれで興味がある話であり、気が付けば先生の話にのめり込んでいたみたいでいつの間にか昼を告げるベルが鳴っていたようである。
そして、それに気付いたのが廊下から近づいて来る黄色い悲鳴であった。
それだけで誰が近づいて来ているのか理解できるのだから、頼むからこの教室が目的地でない事を祈るのみだ。
しかし現実などそうそう甘くない。
「迎えに来たぞ。 どうせ今日も昼飯は食堂だろ?」
ダッシュで近づきぶん殴ってくる現実さんはわたくしを殺したいのか。
「今まで一人で学園を過ごして来たのです。 そして今までそうして来たように、これからも一人で大丈夫ですのでわざわざ騒ぎになるような事はしないでくださいまし」
「分かった。 これからは気を付けよう。 では食堂に行こうか」
「ちょっと、わたくしの話を聞いてましたのっ!?」
「何かあれば俺が守ってあげるから大丈夫だ」
そしてわたくしは言っても無駄だとおもいつつも言わなきゃ分からないと、目の前で手を差し伸べて来るウィリアムへこの様な事をするなと忠告するのだが、あのウィリアムの表情からわたくしの、ほぼ直球に近い嫌味を理解していないという事だけは理解できた。
そしてわたくしは黄色い声と好奇な視線に包まれながらウィリアムの手を取り食堂へ向かうのであった。
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『今まで一人で学園を過ごして来たのです。 そして今までそうして来たように、これからも一人で大丈夫ですのでわざわざ騒ぎになるような事はしないでくださいまし』




