どのような顔して学園生活を送れというのか
違和感しか感じないウィリアムの丁寧な言葉で語られる言葉により簡単に納得したカイザル殿下は「そなたの有耶無耶にする作戦も失敗に終わったなっ!!」と声高らかに、勝ち誇った様な表情と共にスフィア様を連れて足取り軽くこの場から去っていく。
そもそも言った言わないの水掛け論になるからちゃんとしろと言ったのはわたくしだと、あの水を掬った瞬間に流れ出てしまうザルの様な脳みそに、一生忘れる事が出来ぬように叩き込んでやりたい。
そして、カイザル殿下が突き当りの角を曲がった所で緊張の糸が切れたのかわたくしは崩れ落ちそうになってしまう。
文字通り死にかけたのだから腰が抜けたのかもしれない。
そう思いながら重力に抵抗することなくそのまま倒れると思ったその時、懐かしい衝撃が背中に伝わる。
「おっと、危なかったですね」
そう言いながら、いつの日かの様にわたくしの背中に腕を回して倒れないように身体を支えるウィリアムの姿があった。
「あ、ありがとうございま──ひゃわぁっ!?」
いくら宿敵の一人であるウィリアムであろうとも助けて頂いた恩をあだで返すほどわたくしは落ちぶれてはいない為ウィリアムへ感謝の言葉をかけようとしたその時、わたくしの身体はふわりとウィリアムにお姫様抱っこの要領で抱きかかえられてしまう。
「な、なななななな何をををするのでですかっ!?」
あまりの出来事にうまく言葉を発する事ができず、壊れたおもちゃの様になってしまう。
「どうせ今も立っている事すら限界だったのでしょう? また私の目の前で吐血されても困りますので失礼だとは思いますが抱えさせて頂きます」
すこし恥ずかしそうに頬を染めながらそっぽを向きそう語るウィリアムが眩しいくて見れないだとか、近衛兵を目指していただけはある分厚い胸板だとか、その分厚い胸板に押し付けるように背中を支える太い腕であるとか、そもそもお姫抱っことかいう乙女の夢でもあり最早都市伝説と思っていた行為をなんの心構えもなくされたこととか、何故だかいい匂いがするだとか、そんな事ばかりが頭の中で高速回転してしまう。
唯一分かる事と言えば『まともな判断ができない』ということくらいであろうか。
むしろなんとかその事だけでも理解できているだけマシだと判断すべきか。
そしてわたくしは自分でも分かるくらい真っ赤に染まった顔を見られない様にウィリアムの胸板で隠す。
こいつはあれだ。
すけこましだ。
決して騙されてはいけない。
そして聞こえて来る周囲からの黄色い声と嫉妬の声。
明日からどのような顔して学園生活を送れというのか。




