たかが口約束
「口頭で婚約破棄、そして婚約願いをするのはマナー違反であり、言った言わないの水掛け論にもなりかねず、更に家同士、特に公爵家と皇族との婚約ですので平民や下級貴族と違い仕来りを尚一層重んじておりますので貴族界のルールに乗っ取った婚約の申し込みしてくださいませ。当然、この場でカイザル殿下が申した婚約の申し込みは無効とさせて頂きますので、一度帰られまして、仕来りに詳しい使用人なりなんなりに確認を取り、やるべき事をやり、仕来りに沿った正式な申し込みをして頂きますよう何卒宜しくお願い致しますわ」
そしてわたくしは盛大に溜息を吐くと張り付けた笑顔でカイザル殿下へ、正式な申し込みじゃないので出直してください。その際ちゃんと詳しい人に方法を確認してくだいという言葉を、歯に絹着せまくって発言する。
「まぁっ! カイザル殿下に向かって何て物言いっ!!」
「黙って聞いておれば、貴様という奴は……。この俺がいつまでも下手にでていると思うなよっ! あくまでも俺の情けで下手に出ているだけだという事も分からぬ愚か者めがっ!!」
あ、やばっ、煽り過ぎた。
そう思った時には既に遅く、カイザル殿下が顔を真っ赤に染め上げて拳を振り上げ襲い掛かってきている姿がスローモーションの様にゆっくりと流れ始めている。
前世の身体であればいざ知らず、今世のこの雑魚弱ボディーであれを喰らってしまっては、当たりどころが悪ければ死んでしまうのではないか?
その様な恐怖がわたくしを襲ってくる。
そしてカイザル殿下の拳がわたくしの顔面へと近づいて来たところでわたくしは目をぎゅっと瞑り、来る衝撃へ備える。
「……………………ん?」
しかし、想像していた衝撃や痛みは一向に来る気が無く、ついに時を止める能力に目覚めてしまったのかとあり得ない事を思いつつも不思議に思ったわたくしは恐る恐る目を開ける。
「さすがにやり過ぎですカイザル殿下。 殿下が無抵抗の女性を殴ったと噂が立ち、しかもそれが真実となれば本当に終わってしまわれます」
そして、そこにはわたくしへ届くはずであったカイザル殿下の拳を右手で受け止め、違和感しかない丁寧な口調で喋るウィリアムの姿があった。
「し、しかし──」
「貴族には貴族の仕来りがございます。 それに、たかが口約束でございますので覚えていないとマリー様が言う可能性もございますので、ここはやはり証拠が残るやり方が好ましいものと思われます」
「そ、それもそうだなっ! こんな女信用できる訳もなかろうっ!! おぬしの言う通り証拠が残るやり方で早速婚約の申し込みをゴールド家へと送るとしようっ!!」
カクヨムコンテスト7にて6日連続で当作品が週今ランキング1位でございますっ!!
ありがとうございますっ!ありがとうございますっ!
誤字脱字報告につきましても大変助かっておりますっ!!
カクヨムと並行して誤字脱字は直しておりますので、修正には少しお時間がかかります事をお詫び申し上げてます。




