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わたくしが生きる理由

その問題とは、私が余りにも病弱だったからである。


かかっている病気は魔力欠乏症という不治の病であり、ただ歩くだけで動機息切れ眩暈、最悪吐血や気絶までしてしまう。


激しい運動なんてもっての他。


立っているだけでもすぐに疲労し、立てなくなる。


だからこそわたくしはヒロインであるスフィアが羨ましかった。


地位も名誉も何もかもを投げうってでも欲した全てをスフィアは持っていた。


勉強ができる事は当たり前として、健康な身体は勿論の事、並外れた魔力にそれを行使する魔術の才能、見目麗しい美貌に人徳。


それに比べてわたくしは体調不良から勉強をする時間もろくに作ることができず、他の子どもたちと太陽のもとで遊ぶ事もできず、当然病気のせいで魔力保有量が極端に少ないので幼児ですら扱えるような簡単な魔術であっても行使する事が出来ない。


実家に権力や経済力があってもただ動くことすらままならない為に使うすべがない。


そんなわたくしの唯一の心の支えはカイザル・ドミナリア殿下と婚約する事ができたという事だけであった。


カイザル殿下と婚約した事によってわたくしはこの世に生まれて来た意味を持った気がした。


産まれてきて良かった存在なんだと思えることができた。


それが例え政略結婚であったとしても、カイザル殿下がわたくしを見る目が冷たいものであったとしても、それでもわたくしは、必要とされる事が何よりも嬉しかったのだ。


そもそも何故私がカイザル殿下の婚約者に選ばれたかというと、公爵家長女という肩書に魔力欠乏症であったからである。


この魔力欠乏症であるのだが原因は二種類存在し、一つはもともと魔力保有量が殆どなかったか、もう一つは産まれた時の魔力保有量が余りにも多すぎた場合人間の器では受け止めきれず、その魔力を保有する器が壊れる事により魔力を保有する事が出来なくなったかである。


そしてわたくしの場合は後者であり、ここ帝国でも二百年前に一人の事例があったくらいには珍しい事であった。


その結果皇族は私の、魔力欠乏症を起こしてしまう程の魔力の血を欲したのだ。


わたくしはそれでも良かった、むしろ嬉しかったし、私にとってはやっと出来た生きる理由でもあった。


だけどそれも学園へ入学するまでの話である。


その学園でカイザル殿下はスフィアに出会い、二人の関係は誰が見ても急速に縮まって行くのが目に見えて分かる程であった。


だからわたくしは、私が生きる理由を奪われないためにできる範囲で必死に抵抗したのだ。


だが、この身体で出来る事などたかが知れている。


出来る事は嫌味を言うくらいしか出来ない自分が嫌で嫌で仕方なかった。


出来る事ならばスフィアの頬を思いっきり叩いてやりたかった。

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