少年の名は有原
イジャギリパンという国の王様が隠し子を出産。
国家は大慌てでこれを隠すため動きだす。
赤子にはその事実を知らされないように、北の大地である「ホーカイドー」へ送った。
「ホーカイドー」で極寒の地上であれば、という考えであった。
しかし赤子は成長の過程にて
なんと自ら王様の隠し子説を説き始めるが、周囲のじんぶつはもちろん知らんぷり。
さぁ、どうなる、王様の隠し子。
名づけられた名前は、有原咲蔵
彼の人生物語は精神科から始まる。
ホーカイドーリツホスピタル、精神科。
精神科医が渋めな表情で有原に診断名のかかれた書類を提示した。
「君は、シゾ・パーソナリティ障害というものだ」
「シゾ?」
「そう、シゾだ」
この国ではシゾとは、妄想や幻聴を発症させた脳の疾患として病名をつけられるものだった。
「君は今日から、エビリ・ファイアという薬を飲んでもらう」
「エビリ・ファイア……ですか」
「そう、エビリ・ファイアだ」
きれいな看護師がやってきて、注射器とお薬のカプセルの入ったものを持ってきた。
「うちでは、月に一度の注射か、毎日の服薬かのどちらかだが、どうするかね?」
「注射は嫌いなので、服薬でお願いします……」
有原くんは大の注射嫌いだった。
優しそうな看護師が「はい、口あけて」とエビリ・ファイアと思わしきお薬を有原の口に入れる。
「んあ……」
はい、お水。
「ごくり」
飲み込んだ有原くん。
「じゃあ、今日から入院だから、ベッドまで案内するよ、ようこそ、ホーカイドーリツホスピタリスへ」
ホーカイドーリツホスピタリスでの生活物語が幕を開ける。
10分も満たないうちに、有原の思考は鈍くなり、体が重く、眠くなってきた。
「なんだか体がむずむずします」
「アカシジアかもしれないな、お薬を追加するね」
看護師がアカシジアというふくさようどめの薬をさらに有原に服薬させる。
「なんだか、もう何も……」
考えられない、と言うことすらできずに、ベッドに倒れこむ。
一方病室Bでは
「(彼か……)」
一人の男の患者がいた。
次回、「オオアサにおぼれた男」