諏訪ノ森のサラリーマン教師
校友会へ出席した私は、同級生の顔を見つけてホッと胸を撫で下ろした。
何せ学年や学級毎に集まる同窓会と違い、OGなら誰でも参加出来る校友会は色んな世代が混ざってるんだもん。
友達の友達って間柄でも、顔見知りは有り難いよ。
「久し振り!高須一奈ちゃんだよね。私の事、覚えてる?」
「確か…沢野蝶葉ちゃんだよね?高1の時一緒だった!」
向こうも考えは同じみたい。
卒業式以来の私に嬉々として駆け寄ったんだから。
そうして料理を食べつつ旧交を温めていると、一奈ちゃんが得意気に閃いたの。
「折角だし、担任の船尾先生に御挨拶しようよ!見て、あっちのグループでお酒飲んでるから。」
同級生に促されて先生達のテーブルへ伺うと、何とも言えぬ郷愁と安堵の想いが沸いてきたんだ。
何せその顔ぶれは、高等部時代の私達を担当されていた教師陣その物だったんだもの。
考えてみれば、我が母校は私立諏訪ノ森女学園高等部。
色んな学校に赴任する公立校の先生と違って、私立校教師は学園に雇用されるサラリーマン。
退職しない限り諏訪女にいるんだから、見知った顔が揃っているのも当然だね。
「お久しぶりです、船尾先生!」
「まあ、高須さんに沢野さん…御2人とも御元気そうで何よりですよ。」
私達に呼ばれた国語教師は、卒業写真そのままの穏和な笑顔で応じてくれた。
顔を見れば教え子の名前を思い出せるとは、流石は担任教師だね。
「良かったですね、浅香マヤ先生。同級生が2人もいらしてくれて。」
「はい、船尾先生…一奈ちゃん、蝶葉ちゃん。覚えてる、私の事?」
船尾先生に軽く頷き、私達に歩み寄って来たスーツ姿。
見覚えある童顔は、高2の同級生だったの。
「マヤちゃんじゃない!でも、浅香先生って…」
「採用試験に合格出来たんだ。今年度から中等部で現代文を教えているの。」
活字中毒の文学少女は持ち前の読書愛を見事に昇華し、教師として母校に戻って来たんだね。
「教員は校友会に原則参加だから…来年も来てくれたら心強いな。」
だけどマヤちゃんの照れ臭そうな笑顔は、諏訪女の生徒時代と同じ物だったの。
「う~ん…」
「どうする、一奈ちゃん?」
白々しく唸ったけど、答えは決まり!
私達だって顔見知りがいた方が心強いし、それに楽しいもん!