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6話




*******




「……っと……ちょっと、聞いてるの?」


「…………」


「ねえってば!」


「…………」


「(ぷくー)………えい!」


「いて!何すんだよいきなり……」


いきなり雫玖が俺の頬をつねってきてびっくりした。


「むぅ〜。ヒロキが話を聞かないのが悪い!」


「え?何か話してたか?」


「うそ!まさかの最初から話聞いてなかった!」


「悪い。何話してたんだ?」


「もぉ、ちゃんと聞いてよ!」


俺はいつの間にか、意識がどこかへ飛んでいたらしい。


「ごめんごめん」


「ほんとにそう思ってる〜?」


「思ってる思ってる」


「なんか返事が適当すぎない?まぁいいけど。それでねーーーー」


現在、俺こと横河(よこがわ)弘樹(ひろき)は、幼なじみである中村(なかむら)雫玖(しずく)と一緒に下校していた。


季節が冬に近づいているのもあってか、今の時刻は午後五時をすぎたばかりだというのに、日は既に沈みかけており、道路の脇に均等に設置されている街灯が、俺たちの姿を点々と照らしていた。


「それでね、やっとちーちゃんとゆーいちが付き合うことになったんだ!」


「へぇ〜。あいつらが付き合うなんて、なんか意外だな。なんか想像つかないわ」




雫玖の話に出ていた『ちーちゃん』というのは、クラスの学級委員長である川上(かわかみ)千雪(ちゆき)といい、そのクールさが男女共々に人気な女子である。



そして『ゆーいち』というのが、瀬戸(せと)雄一(ゆういち)。運動と勉強ができるイケメンという、モテる三拍子が揃っているクラスの人気者だ(主に女子)。同時に嫉妬する人も多い(主に男子)。




「へっへーん。私がちーちゃん達の仲を取り持ってあげたんだから、当然の結果だね!」


「はいはい、すごいすごい」


「なんか扱いが雑じゃない!?」


「いや、何となく分かってた。お前はそういうことに関しては人一倍すごいからな」


「え、そ、そうかな?私ってそんなにすごい?」


「あぁ、凄いよ。その凄さを勉強に活かせたら尊敬してたぐらい凄い」


「うぐ……そ、それを言われるとちょっと……」


俺はクラスの中で陰キャと呼ばれる存在であり、雫玖は陽キャと呼ばれる存在である。


陽キャと言っても、某SNSで炎上するようなことをしている奴らとは違い、普通に真面目な陽キャである。勉強はあまり芳しくないが。


そんな真反対の二人が一緒に帰っているという絵面は、他の人から見ればかなり変な感じに見えるだろう。


しかし、俺はそんな目で見られても特には気にしていない。




はっきり言うが、俺は雫玖のことが好きなのである。




雫玖は、さっきのやり取りでもそうだが明るい性格をしており、顔も川上さんといい勝負をしていて、千雪や雄一同様、クラスでの人気者だ。


理由はそれだけじゃないが、そんな彼女が好きだからこそ、こうして一緒に帰る時間は俺にとって、特別な時間なのだ。…………雫玖がどう思っているか知らないが。


「いや〜、世の中彼氏彼女で溢れてますな!」


「そういえば、雫玖は彼氏を作ろうとは思わないのか?」


「え?どうしたの?普段そういうことに興味がなさそうなヒロキが、そんなこと言うなんて。まさか、あした雪でも降るんじゃ!?」


違います。興味が無いんじゃなくて一途なだけです。


そう言おうと思ったが、恥ずかしくてやめた。


「いや、何となくな。仲を取り持つことは得意なのに、自分で彼氏を作ろうとは思わないのかなーって。ほら、あれだ。雫玖ってモテるだろ?」


なんか言ってて悲しくなるな、これ。


「えーそんなことないよ!確かに私は可愛いかもだけど?そういうことは今はしないかなー」


「今は、ってことはいつかは作るつもりなのか?」


「もちろん!高校生の間は作るつもりは無いけどね。あ、でもヒロキに迫られたら私、簡単に籠絡されちゃうかも………」


一瞬ドキッとした。今の俺の動揺が雫玖に悟られていないだろうか。


そう思い、雫玖の方を見るが時すでに遅し。


「ドキッとした?ドキッとしたよね今」


どこぞのオフロ○キーみたいなノリでニヤニヤしながら聞いてくる雫玖。


周りの暗さのせいなのか、街灯が照らす彼女の顔は、こころなしか赤くなっているように見えた。


そんな顔でさっきみたいな事を言われてドキッとしない男子がこの世にいるだろうか。いや、いないだろう。


「んな馬鹿なことを言ってないで、さっさと帰るぞ」


これ以上はまずいと思った俺は、この話を無理やり終わらせようと、雫玖より一歩先を歩き始める。


「へいへい……ってちょっと待ってぇ〜ん!」


「その口調似合わないだろ絶対」


それでも可愛いと思ってしまう俺は、もう手遅れなのかもしれない。





*******




「……………ん………ん〜」


目を覚ますと、そこはいつもの自室(物置小屋の中)だった。


夢を見た。


まるでどこか違う世界の人に乗り移ったような、そんな夢だった。


今回は夢の内容もだいたい覚えていた。


夢の中の自分は、横河 弘樹という名前の男子高校生で、幼なじみの中村 雫玖と共に下校しているという内容だった。




何故かさっきから色々な言葉が頭に浮かんでくるが、どういう意味なのだろうか。


自分でも知らない間に、体……いや、心に変化が来ているのかもしれない。


ひとまず起きないと。


()は体を起こすと起きた時の感覚がいつもとは違っていることに気がついた。


あぁ、そういえば………


そう、僕はベッドではなく、床で雑魚寝をしていた。




そしてベッドでは、


「(スー、スー)…………」


まるでこの世のものとは思えないくらいの美貌を持った少女が寝ていた。


窓から差し込んでくる太陽の光が、その子の体を神秘的に照らし、その美しさがより一層際立って見えるように感じた。




昨日の記憶通りだと、この子はシャナという名の大精霊で、僕が森の中で倒れているのを見つけた。


その後、なんやかんやあってーー恥ずかしくて思い出したくないーー契約を交わした後、おじいちゃんが帰ってくるまで色々な話をした。


好きなことや精霊の村のこと、他にもシャナが旅でいろんな所に行った時の話や、この街のことなどたくさんの話題で盛り上がり、気づけば夕方になっていた。


そしておじいちゃんが帰ってきたから、シャナの紹介をして、そのあと晩ごはんをこの部屋の中でシャナとおじいちゃんと一緒に食べた………という所までは覚えているが、多分その後に直ぐに寝たのだろう、そのあとからの記憶が曖昧である。


おじいちゃんに紹介する時にはシャナのことを、遠くから来た家族の娘として紹介した。


大精霊だと言っても多分信じて貰えないだろうから。


そして、晩ご飯はリビングに行ったら既に家族は食べ終えていたので、簡単に持ち出すことが出来た。


おじいちゃん以外の誰かと、一緒にご飯を食べるのは久しぶりだったので、楽しく過ごすことが出来た。


ちなみに、おじいちゃんにクッキーを作って欲しいと頼んだら快く作ってくれたので、今日はおやつにクッキーが出るだろう。




こうして昨日のことを思い出してみると、すごく濃い一日だったなと思う。


昨日みたいな日はいつぶりだろうか。


今まで同じような日々を過ごしてきた僕にとっては昨日は新しいことが多くて充実した一日だった。


昨日のことを振り返りながら、いつものように川で顔を洗い、口をゆすぐと小屋の中に戻った。




小屋に戻ると、シャナはまだベッドで寝ていた。


さっきも見たけど、やっぱり綺麗な寝顔だな。って見惚れてる場合じゃないや。


「シャナ、起きて。朝だよ」


すると直ぐにシャナは目を覚ました。


「ん…………おはよ………」


「おはよう。これから朝ごはんだから早く準備してね」


シャナは現在、ボロボロのシャツとズボン、つまりは昨日の服のままで寝ていた。


「ん、わかった」


僕はシャナが起きたことを確認すると、中で服を着替える訳には行かないので、外に出て着替えた。






「シャナ、もう入ってもいい?」


「いいよ」


僕は中に入ると、シャナの姿が目に入った瞬間、動かなくなった。否、動けなくなってしまった。


彼女の姿は、出会ったばかりのボロボロのシャツとズボンではなく、白いワンピース姿だった。


ワンピースは、おじいちゃんがわざわざ自分の部屋にあったおばあちゃんのお下がりを用意してくれた。


ただ服が変わっただけなのに、その印象はガラッと変わっていた。


まるで女神のようではなく、女神そのものと言っても過言ではないくらい、美しい少女がそこにいた。


「ユーリス、大丈夫?」


「え?あ、うん。大丈夫大丈夫」


ダメだ。シャナと会ってから、僕はずっとシャナに見惚れっぱなしだ。


このままだと僕が平常心を保てない毎日が続くだろう。


だが、どうしてもこれだけは言いたかった。


「シャナ………」


「ん、どうしたの?」


「……すごく…………綺麗だ」


するとシャナは、


「…………………ふぇ?」


と変な声を漏らし、その場で固まってしまい、その白い頬が朱色に染まった。


そこで僕は自分がどれだけ恥ずかしいことを言ったのかをようやく理解し、


「え……あ、ち、違うんだ!た、ただ、その、つい口から出てしまっただけで、そんなつもりは一切ないから安心して!…………?」


僕は混乱して自分が途中から何を言っているのか分からなくなってしまった。


そんなつもりとは一体どういうつもりなのだろう。


「と、とりあえず朝ごはん食べようか!」


「……………(コク)」


僕とシャナは、半ばこの状況から脱するため、そそくさと小屋から出た。


そして朝ごはんを食べに、家へと向かうのだった。


オフ○スキー懐かしいなぁと思う今日この頃。

受験の発表までの期間って胃が痛くなりますよね_(┐「ε:)_

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