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17話

人との触れ合いを感じたいと思った今日この頃。



目の前が真っ暗だった。



上下左右が分からないようなそんな感覚。



ただ、沈んでいるということだけは何となく感じていた。



言葉で言い表すなら、真っ暗な底なし沼を延々と沈んでいってるような、そんな感覚だった。










時間の感覚も分からないので実際にはどれだけ経ったのか分からないが、しばらくの間流れに任せていると、突然目の前に一筋のひかりが刺してきた。


すると真っ暗だった周りの景色が、音もなく崩れ去っていった。

そしてその先にあったのは、映画のフィルムのようなものが何枚も連なってあちらこちらに散らばっている光景だった。


そんなあまりにも幻想的な光景に呆けていると、急にフィルムみたいなものが俺の頭の中に入ってきた。

あまりに非現実な出来事に頭が混乱するが、俺の知らない記憶が流れ込んでくると、自然とその現象を受け入れることができた。

もしかしなくとも、俺の魂の器となる体が経験した記憶だろう。


あの神が言ったことが正しいのなら、この流れ込んで来る記憶は、向こうの体が15歳になると止まる。

そして俺は目を覚ますはずなので、それまでこれらの記憶を見てみることにした。




(これは………酷いな)


現在、俺の頭にとある記憶がダイジェストで入ってきている。


しかし、その内容はあまり気分がいいものではなかった。


俺の意識が宿る前はユーリスと呼ばれていた。そんな彼は自意識が覚醒する前から、魔法の才能がないせいで家族や友人知人、挙句には赤の他人からも酷い扱いを受けてきたのだ。彼には、唯一優しくしてくれる祖父とキアラが心の拠り所だった。


そんな生活が続く中、ユーリスはある日シャナという大精霊と出会う。それから紆余曲折あってシャナと一緒に暮らすことになった。


その日からユーリスの日々は変わっていった。まず、シャナと出会ったことで、ユーリスの隠れた才能がわかった。彼は魔法が使えたのだ。正確には、シャナと出会ったおかげで使えるようになった。そしてユーリスは、シャナから魔法の特訓をしてもらうことになった。




大雑把になったが、これがユーリスの人生だった。


しかし、ふと疑問に思うことがあった。これらの記憶はシャナと出会ってから数日経ったところで途絶えていたのだ。そして、今のユーリスの年齢は九歳である。一体どういうことなのだろうか。


このままでは九歳の体で転生することになってしまう。それともこれが正しいのか?それだとあの神が言っていたことは間違っていたことになるが。


そうやって思考に深けていると、突然落ちていく感覚が無くなり、俺の記憶はどこか遠い場所へ吸い込まれるような感覚を最後に途絶えたのだった。





*******





「…………うっわあああああああ!!!」


どこかも分からない場所へ吸い込まれるというあまりにも気色の悪い感覚を体験して、俺は目を覚ました。


するとすぐ横から、「ん………」と声がしたので咄嗟に顔を向けると…………


「……………ゆーりす?」


さっきまで一緒に話していた神様と天使様にも引けを取らないレベルの美少女がいた……………………


俺と添い寝しているという形で。


「………………」


人が本当の意味で驚いた時は声が出ないというのは正しくこのことだろう。少女は寝惚けているのか、じっと俺の方を見続けていて……………って、


「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!???」


この光景を見るのは二度目だが()は初めてだ。なので二回目も同じ反応をしてしまった。


すると次の瞬間、


「ユーリス!」


真横で添い寝していた美少女もとい、シャナが俺に抱きついてきた。しかし俺は混乱していたせいか、体に力が入らずそのまま押し倒されてしまった。その際に押し付けられたシャナの胸のふくらみによって、俺の思考はさらにぐちゃぐちゃになった。


だがそれもつかの間、


「………ひぐっ………ぐすっ……」


「っ!」


シャナは、泣いていた。それにより、ぐちゃぐちゃになっていた俺の思考が一気にクリアになる。それと同時に、違う意味で俺は混乱することとなった。


「シャナ、お前なんで泣いて………」


シャナは俺の問いに答えず、ずっと泣き続けていた。俺の麻でできた服がシャナの鼻水や涙でびしょびしょになっているが、俺にはそんなことを気にする余裕などなかった。


その後、シャナが泣き疲れて眠りに落ちるまで、俺は居心地がいいような悪いような、なんとも言えない心境で過ごしたのだった。







「すぅ…………すぅ………」


現在、俺の真横でシャナが寝ている………俺が膝枕をするという形で。時刻はもうすぐ日没へと差し掛かっていた。もうすぐで晩御飯の時間である。その間に俺は、シャナの頭を撫でながら状況を整理することにした。


まず俺が気づいたのは、十五歳になってから記憶が戻るはずだったのが、九歳で記憶が戻ったという点である。これはユーリスの記憶を見るに、シャナが俺の状態異常である記憶喪失を直したのが原因だろう。俺の体に異常があったせいじゃなかった事が幸いである。


問題は、雫玖達がこの世界に来るのは俺が十五歳になった時、つまりあと六年は会えないことになってしまうということだ。六年も雫玖に会えないとか地獄すぎだろマジで。


まぁこれは諦めるしか無かった。


そしてもうひとつ問題だったのが、九歳で記憶が戻ったということは、俺の魂がこの体が九歳の時点で宿ったということになる。なのになぜか、拒否反応を示さなかったということだ。

繰り返し言うが、ディノいわく魂を成長した体に直接転生させると、魂と体の違いが違和感となり、やがて自殺に追い込まれるという話だった。

だから俺は、ディノからこの体が十五歳になるまで前世の記憶をシャットアウトして、その違和感を軽くしようという話を聞いていたのだが………シャナを撫でている感覚や、肌に感じる空気も前世と変わってないのでどうやら大丈夫そうだった。


あとは俺が置かれているこの状況だ。


シャナが来てから、この生活も格段に良くなってきてはいるが、それはおじいちゃんが匿ってくれたり、兄達が忙しくて俺と関わる余裕が無いことが折り重なってできた、ただの 偶然だった。


だからいつまでもこんな生活が遅れるとは限らない。なんなら今、この瞬間、俺は兄達に呼ばれて記憶の中で見た事をされるかもしれない。それだけはどうしても我慢ならなかった。

だったらどうすればいいのか、そんなの簡単だ。


俺が強くなればいいだけの話である。


とりあえず今は、俺の膝でぐっすりと眠っているシャナに、色々と弁解をしないといけない。


俺はそんなことを考えながら、シャナが起きるまでずっと頭を撫で続けるのだった。

なんだか最近、スマホ触ってたら一日すぎてたということが多すぎて、悲しくなってくる。

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