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16話

1ヶ月経つのが早く感じてやばいね!(反省の色なし)


大学がオンラインだけになってつまらなくなってしまった。






俺はディノとコリアと一緒に、とある神様を待っていた。とある神様というのは、ディノ曰く武神らしい。さっきディノが、『武神のご登場でございます〜』と意気揚々と言ってから五分くらいが経過していた。


つまるところ、俺達は武神がここに現れるのを待っているのだった。ちなみにその間、俺たちの間に会話がなかった、というより、俺がディノに話しかけられなかった。正直、気まずいことこの上ない。ディノは恥ずかしいのか、さっきから顔を赤らめながら細かく震えている。


「……………」


「……………」


俺はちらりとコリアの方に助けを求めるように目を向けると、彼女は微笑みを絶やさないまま、ずっと俺たちを見ていた。ついでに言うと、コリアは俺たちがわいわい(?)している間、ずっと表情を崩していない。まるで人形のようだった。普通にすごいと思う。


「……………」


いつまでもこうする訳にも行かないので、俺はディノにいつ武神が来るのか聞いてみる。


「…………なぁ、いつ来るんだよ。武神様は」


「……………」


「なぁ、おい」


「……………」


「おいって!聞いてるのか!?」


「うるさいな!私だってこうなるとは思ってなかったんだよ!」


こいつ………逆上しやがった。


「じゃあどうするんだよこれから」


「…………私が適当に加護与える」


「は?」


なんて言った?こいつ。

適当て、そんなことしてもいいのだろうか。


「おい、それでいいのか?」


「私だってあいつと同じ加護を与えることはできるし大丈夫でしょ」


心配だ。すこぶる心配だ。ディノの事だから変な加護が付きそうだ。というかこいつは武神のことをアイツ呼ばわりするくらい仲がいいのだろうかと、俺はすごくどうでもいいことを思った。


「はいはーい。それじゃあ加護つけマース」


「あ、おい!どんな加護がつくのか聞いてないぞ!」


「うーんと、確か武神の加護だから身体能力が上がったり、武器が使えるようになるとかじゃない?」


「すごく抽象的だな」


「私だって、他の神の加護がどんなやつなのか知りたいけれど、神のルールでは、加護をつけることはできるけど内容は知ることができないみたいなやつがあったから、知りたくても知ることができないんだよね」


「それって無闇に他の神の加護をつけないようにするための措置なんじゃ」


「いいのいいの!………はい、これで君に武神の加護がつきました」


ディノは目の前で手をかざすと、加護がついたと俺に言った。


「はぁ!?こんな簡単につけてもいいのかよ!?」


「大丈夫でしょ。どうせあいつの事だしそこまで気にしないと思うから!…………まぁ本当はもっと手順を踏まないといけないんだけどね(ボソッ)」


思うだけかい!なんだか益々不安になってきた。しかもその後にブツブツと変なこと言ってるし。


「はい、それじゃあ今から君を向こうの世界に送ります!」


「やっとか」


ここまで来るのに色々あったせいで余計長く感じていたが、ようやくその時が来たようだ。


「あ、ちなみに言っとくと、加護が君に力を与えるのは向こうの世界で君の記憶が戻った時だから、まあ君の感覚からすればすぐに付くだろうけど、一応伝えとくね」


「わかった。色々ありがとうな」


「感謝なんて必要ないよ。元はと言えば私の不手際だからね。本当に申し訳なかったと思っている」


そう言ってディノは俺に頭を下げた。


なんというか、神様が俺みたいなやつに頭を下げてるというこの光景はある意味レアなのかもしれない。


「おい、頭上げろって。別にそういうのは求めてないから」


確かにディノのせいで俺は死んでしまったが、それと同時にこいつは俺に対して色んなことをしてくれた。そんな相手に頭を下げられるというのは、なんだかモヤッとするものである。


「君がそういうのならやめるね。じゃあコリア、手伝って欲しいな」


「わかりました。ディノ様」


あ、久しぶりの天使様だ。全然喋ってなかったからこれ以上は喋らないのかと思っていたが、そうではなかったらしい。


「じゃあ君は、そのへんに立ってもらうね」


そう言ってディノが指さした場所には、いつの間にか台座が現れていた。俺は言われた通りに、その場所に立った。


すると次の瞬間、足元に幾何学模様の円、つまりは魔法陣が浮かび上がった。


「うわ、すご」


その魔法陣のあまりの美しさに、つい目を奪われてしまう。だが、ディノに呼びかけられ俺の意識は現実に引き戻された。


「感動しているところ申し訳ないんだけど、一応確認だけしておくね」


「あ、あぁ。わかった」


そして、ディノとさっきまでの話の内容を一通り確認した後、今度こそ転生する時が来た。いやほんと何回溜めるんだよってツッコミたくなる気持ちはあったが、そんな気持ちもどこかに行ってしまったようだ。


「それじゃあ、今から転生させるね。心の準備はいいかい?」


「大丈夫だ」


ここに来てから色んなことがあったせいか、

いざ転生するとなると、名残惜しく感じるものである。


「じゃあいくね……ほほいのほいっと!」


「うお!」


ディノが手をちょちょいと動かした瞬間、俺の足元にある魔法陣が光り始めた。


「それじゃあ、向こうの世界でも頑張ってね!」


「………あのさ、転生したらもうお前らには会えないのか?」


気づけば、俺はそんなことを口に出していた。って、俺は何を聞いてんだ!?


「す、すまん!今のは無「会えるよ」………え?」


ディノは顔を逸らしてそう言った。こいつがどんな気持ちで言ったのかは知らないが、俺はそれを聞いて何故か安堵していた。どうしてこんな気持ちになるのかは分からないが、俺はこいつと出会って居心地の良さを覚えていたのかもしれない。ちなみに再び会う方法などは教えてくれなかった。


「じゃ、じゃあ、またね!」


逸らした顔を戻した時のディノの表情は、照れを含んだ清々しい笑顔だった。俺はその可愛さに一瞬思考を奪われる。はっ!いかんいかん。俺は雫玖一筋俺は雫玖一筋俺は雫玖一筋…………。


頭の中で必死に雫玖のことを考えたら、だんだん冷静になることができた。


「おう!また会おうな!」


その直後、俺の意識は霧がかかるような感覚に襲われ、徐々に目の前が暗くなっていった。


俺がその時にみた光景は、ディノが現れてからほとんど喋らず、ずっと見守っていたコリアと…………















目に涙を浮かべているディノの姿だった。







*******




「ふぅ…………行っちゃったね」


満天の星空で埋め尽くされた空間に、一人の少女と一人の女性がいた。


少女はとある台座に向かって立っていた。その視線の先にはついさっきまで、とある青年の魂があった。少女はその魂を、地球とは違う別の世界に送ったばかりである。しかし、その表情はあまり優れたものではなかった。


少女は目に浮かべていた涙を拭うと、女性の方に向き直って、なるべくいつもの調子を意識しながら仕事に戻るように促した。


「それじゃあ、通常業務に戻ろっか!」


そう言って、少女は後ろにあった台座を消すと空間に穴を作り、そこに入ろうとした。


しかし、女性の次の一言でその動きを止めることとなる。


月詠(・・)様、本当にこれでよろしかったのですか?」


女性は少女のことを月詠と呼んだ。


「わざわざ名前まで偽る必要はなかったと思うのですが……」


「………いいんだよ、これで」


少女はそう言って再び穴の中に入ろうとする。


しかし、女性が引くことは無かった。


「しかし、彼の前世(・・)記憶(・・)はもう既にないのですよ?正体はともかく、名前を変えることはなかったと……」


「これでいいと言っている」


「っ!………………」


少女がそう言った瞬間、女性の体がおぞましいくらいの寒気に襲われた。女性は忘れていた。目の前にいる少女が神だということを。普段は女性が怒る立場にあるせいで、そのことが頭から抜けていた。今、目の前にいる少女は、紛れもなく神様だった。そこにさっきまでの緩やかな雰囲気など微塵もない。


(う、動けない。さすがにここまでとは………)


女性が少女に目を向けると、少女の顔から表情が抜け落ちているのが見て取れた。


彼女は神気を発していた。神気とは、神だけが発動することができるオーラ、圧のようなものである。ちなみに女性はこれまで、これ程の神気を向けられたことが無かった。


しかし今回は違った。


普通、動けなくなるくらいの神気を神様が放つ時は、神様が本気で怒る時か、あるいは命令を絶対に受けなければならない時である。それをこんな形で放つということは、少女がそれ程この件に関して、他人に介入して欲しくないということだろう。


それを察した女性はこれ以上、質問をすることは無かった。元より、質問をする余裕すらなかったが。


長いようで短い時間が経つと、少女は神気を抑えた。それと同時に、女性の体から汗が滝のように溢れ出てくる。


「それじゃ、コリアも仕事に戻ってね〜。あ、そうだ!タケミカヅチが来たら、私が感謝してたことを伝えといてね!」


そう言って少女は、何事も無かったかのように穴の中に入っていった。その直後、穴は空間を埋めるように消えていった。


(感謝するも何も、月詠様はタケミカヅチ様との約束の時間を、もっと後の方にしてただけじゃないですか……)


女性は心の中でそう愚痴りながら、これから来るであろう頭がかたい武神を待つのだった。

次からやっと転生後の話になりますはい。

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