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15話

一ヶ月以上も経ってしまった。時の流れは………残酷だな(´・ω・`)





現在、星がきらめく夜空の中で、土下座をしている少女とその前で腕を組んで立っている俺、そしてその光景を微笑みながら見ている天使の姿があった。


傍から見たら、俺が少女に土下座を強要している最低な野郎に見えるが、勘違いしないで欲しい。俺はこいつのせいで大変なことになっているのだ。


ちなみに目の前にいる少女はディノという名前の、一応神様である。だがついさっきまで俺がグリグリした跡が、こめかみに残っているせいで神様の威厳というものは無かった。


何があったのかは簡単に言うと、こいつのせいで俺は勇者になれるはずが、死んでしまったというところだろうか。しかもその割には反省の色がこいつからは見えなかった。よって今に至る。


うん。多分、いや絶対他の人に言っても信じてもらえなさそうだな。


「で?お前は俺の願いを聞いてくれるんだよな?」


「わ、わかってるよ………うぅ」


ディノ神は顔を上げてそう答えるが、まだこめかみが痛いのか涙目になっていた。俺は少女の泣き顔を見て興奮するような変態ではないが、流石にやりすぎたと少しだけ反省する。


「まぁ、俺からの願いはただ一つだ。雫玖や他の奴らが行った世界へ俺を送ってくれ」


「…………そ、それは無理じゃないんだけど………」


ディノが言い難いような素振りを見せるので、俺はその先を早く言うように言った。


「なんだよ。何かあるのか?」


その言葉にディノはこくりと頷き、話を続けた。


「うん。その……キミをあの世界へ送るとなると、神のルールに色々引っかかるんだ」


「で?」


「いや、でって言われてもこればかりはどうしても破る訳には行かないんだ。もし破ったら私が消されるからね」


「お前のミスなんだから自業自得だろ」


「辛辣!キミはもっと人にやさしくするべきだよ!」


ディノはそう言って俺を睨んでくるが、違う方向からのすごく大きなオーラに圧迫され れ、すぐにしゅんと小さくなる。


俺がそのオーラの元に視線を向けると、コリアが微笑みながらディノを見ていた。しかしその目は笑っていなかった。


「ディノ様?あなたのミスでこんなことになってしまったのですから、それを言う義理はないのでは?」


「うぅ……コリアがいつにも増して怖い……」


会話から察するに、ディノがコリアに怒られることはあるようだ。上下関係が不安になるような事態である。それとも神の世界では上下関係というものは無いのだろうか?


「もっとほかの神様方を見習ってはどうなんですか。天使に怒られるような神様はディノ様だけなんですから」


そんなことは無かった。まぁ、要するに様々な神が存在する中でディノ神がいわゆる残念系というやつだろう。俺からすれば、だからなんだという話なのだが。


「むぅ。だって私が生まれてからまだ二百五十年しか経ってないんだもん」


「このようなミスをするのは、いくら新人の神様であろうとあってはならないことなのです」


「あのぉ………」


すっかり二人の世界に入ってしまったディノとコリアが、聞きたくもないような生々しい話を始めたので、俺は二人に呼びかけた。


「結局のところ、お前は俺を異世界に送ることができるのかできないのかどっちなんだよ」


「うーん。できるのはできるんだけど、やり方を変えないといけないんだよね」


「やり方?」


「うん。私がさっき自分が消されるって言ったのは、キミをその姿のまま異世界に送る方法なんだ。けど、その他にも方法はあるんだよね」


「それはどういう方法なんだ?」


俺がそう言った瞬間、ディノの雰囲気が変わったような気がした。


「転生だよ」


そう言ったディノの顔は、なんだかやけに暗いようにも見えた。が、それも束の間、ディノはすぐに話を続けた。


「私がキミにできることは、君の記憶をそのままにして別の肉体に送ることなんだ。それだと輪廻転生という名目でできるから、神のルールにきちんと沿った方法となって私も消されなくて済むし、君も想い人のいる世界へと行ける。まさにウィン・ウィンの関係ってやつだね!」


ディノはそう言って俺にドヤ顔を見せてくる。しかし、その顔にはさっきまでの元気がないようにも思えた。俺の気のせいなのだろうか。


色々考えても仕方ないので、俺は敢えて気にせずその方法にすることにした。


「ふーん。じゃあそれで」


するとディノはこんなことを聞いてきた。


「………君は聞かないのかい?」


「ん?なんの事だよ」


「なんの事って………。例えば、転生するデメリットとか……」


「あぁ、お前の様子がおかしかったように見えたのはそれが原因か」


どうやら俺の気のせいではなかったらしい。


「うん………って、わかってたならなんで聞かないんだよ!」


「いや別に、そこまで気になることでもなかったし」


「そこは普通聞くでしょ!」


なんなんだこいつ。話してる途中に元気がないような素振りを見せるわ、それを指摘されなかったら一々掘り返してくるとか、かまってちゃんかよ。


「お前はかまってちゃんか」


「なっ………ち、ちがわい!」


ディノは顔を真っ赤にしながら強く否定していた。無意識の内に声に出ていたらしい。気をつけないとな。


とりあえず話を進める。


「んで、そのデメリットってやつはなんなんだ?」


「んもう!君って本当に意地悪だよね!」


「いいからさっさと話を進めろ」


「うぐぅ………さっきも言ったけど、この世界は輪廻転生という基盤を元に活動している。これはどの世界でも共通の理というやつだ。でも、転生するにあたって、私たちが必ずと言っていいほどやらなければいけないことがある。今回の最大のデメリットである記憶についてだ」


「それはさっき聞いた。転生する時は記憶を消すとか。でも俺は記憶を保ったまま転生させてくれるんだろ?それのどこが問題なんだ?」


「問題だらけだよ!これは私の友神の話なんだけど、とある事情でとある人を記憶を残したまま転生させることになったんだ」


「それってお前と同じ事情じゃねぇのか?」


ディノは一瞬体をビクつかせたが、素知らぬ振りをして話を続けた。この世界の神様達って大丈夫なのだろうか。


「………それでその友神は転生させることには成功したんだけど、その人がその後どうなったかわかるかい?」


突然の質問に俺は若干狼狽えるが、すぐに思いつくような答えを言った。


「え、どうって、普通に楽しく過ごしているんじゃないのか?」


普通はそうだと思った。前世の記憶を使って異世界を無双するとか、そんな内容のアニメやラノベは定番のひとつとなっているからだ。


「ううん。実はそうじゃないんだ。話がズレるけど、今の君は魂の状態だということは聞いたよね?」


「あぁ。天使様にな」


「つまり魂というのは記憶に倣って、そのかたちを形成していくものなんだ。だから君はその姿のままでいるんだよ」


「なるほど」


「つまり、転生する前に記憶を消すということは、魂の形を次の体に移すためにリセットするということだね。まぁつまり、粘土で例えるなら一度作った形のものを崩して、また新しい形を作るっていう感じかな」


その例え方で大方理解した。オマケに、今回の問題点も見えてきたような気がする。


「それで話を戻すけど、記憶を残したまま転生させるということは、その人や動物の魂の形のままほかの体の形に移すのと同じなんだよ」


「それで、その友神が転生させた人はどうなったんだ?」


「………結論から言うと、死んだよ」


「え………どうして」


突然の死のワードに俺はたじろいだ。


「死因は自殺だった。そして結局その人の魂は記憶を消されて輪廻転生の中に戻ったよ」


「自殺って………なんでそんなこと…」


「友神の話によると、その人が記憶が消される前に言ったのは、『自分の元の体と新しい体の違いに慣れなかった』だった」


「え、そんなことで自殺するものなのか?」


「君はそう思うかもしれないけれど、魂の形と体の形が違う状態で存在するっていうのは、すごく歪な存在になるようなものなんだ。

もちろん、例外もある。死ぬ前に強い願いを残したままだと、死んだ後に魂の中のしこりとなる。それは記憶が消され、魂の形がリセットされても残ってしまうんだ。だから新しく生まれ変わっても、動物や植物ではなく人間として生まれ変わり、前世の記憶を持ったままになるんだよ。それでも、人格や細かい記憶は残らないけどね。ここまで聞いて、なにか質問とかはあるかな?」


俺はここまで聞いて一番聞きたかったことを伝える。


「ひとつ聞きたいんだが、俺が知ってる異世界転生の話の中に、体が青年まで成長した状態で前世の記憶を取り戻すというものがあるんだが、そんときに二重人格にはならないのか?」


そんな俺の質問に対するディノの返答は、


「うん、ならないよ」


だった。


「それはなんで?」


「うーん、そうだなぁ。じゃあ、君がもし、前の記憶を取り戻したらどうなるか想像できるかな?」


またこの感じだ。『君がもし〜』のところからこいつの雰囲気が変わった。しかも今度は、悲しいようなそんな感情がディノから感じられた。


さっきから思ったが、こいつの雰囲気ってコロコロ変わりすぎやしないだろうか。


とりあえず俺は、こいつに言われたことを想像してみる。


確かによく考えれば、俺の前世の人格と今の人格が二つ存在するというのはあまり想像することができなかった。なんというか、俺の人格が無くなることがなく、前世の人格に俺の今までの記憶が上乗せされるというような感じだった。


「どうだった?」


ディノが頃合いを見て俺に聞いてきた。そして俺はありのままの感想を伝える。


「確かに、二重人格ってあんまり想像がつかないな」


「でしょ?だから二重人格になるとかならないとかそんな問題は大丈夫!」


「そっか……わかった。それじゃあ、俺を異世界に転生してくれ」


「っ……………ほんとに言ってるのかい?私がさっき言ったことを忘れたわけじゃないよね?」


ディノは俺の発言に驚いた後、真剣なトーンで聞いてきた。俺はそんなディノの雰囲気に取り乱しそうになるが、冷静を保ちつつ答える。


「あぁ、忘れたわけじゃない。それでもと思い、覚悟を決めたから頼んだまでだ」


「そっか。………うん、わかった。」


俺は自分の覚悟をディノに伝えた。ディノは俺の覚悟が伝わったのかどうかは知らないが、笑顔で俺の願いを了承してくれた。そして俺にとある提案をしてくる。


「よし、それじゃあ君を転生させるけど、君が死んじゃうようなリスクを少しでも減らすために、ちょっとした仕掛けをするね!」


「仕掛けって?」


「うーんとね、簡単に言うと君の記憶を一時的に消す、つまりは魂の形をリセットするということだね!君の話でもあった青年になって記憶を取り戻すっていうやつだよ」


「どうしてそんなことするんだよ」


「それは君の魂を転生先の身体に少しでもなじませるためだよ」


「………あぁ!なるほど!要は身体の形と魂の形のギャップを軽減するということか!」


俺はやっと理解した。さっきの話にでてきた転生した人は、いきなり成長した身体に転生したからダメだったけど、ディノが言ったやり方だと、徐々に魂の形が身体の形になることで、成長した後に記憶が戻っても大きな変化が生まれないということだろう。


「どう?これなら行けると思うんだけど。何か疑問に思ったことがあったら言ってね!」


「いや、大丈夫だ。だから早く転生させてくれ」


俺は、雫玖達のいる世界に行けるのと、今までフィクションだと思っていた異世界転生が今から行われるのだと改めて実感する。そのせいか気が高まって、まるで遊園地に行く前の子供みたいになっていた。


「まぁまぁそんな焦らないで。それじゃあ、今から君を転生させまーす!あ、そうだ。もうふたつだけいいかな?」


「なんだよ。早く転生させてくれよ」


「はいはい。すぐ終わるから待ってね。まず、君に武神の加護を授けるね!これは私から君へのお詫びの内の一つだね。それじゃあ、武神のご登場でございます〜。」


トントン拍子に話が進んでいった結果、武神がここに来るそうだ。一体どんな神様なのだろうか。


まだ忙しい期間が続くので、頑張りすぎない程度にやります(´∇`)

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