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14話








「うわああああああああぁぁぁぁ!!!」


気がつくと、俺は空に浮かんでいた。いや、正確には見えない地面に立っていた。


さっきまでは昼だったはずの空は、夜になっており、上を見上げると、都会では見られないようなたくさんの星が輝いていて、幻想的な景色を生み出していた。


「はぁ、はぁ、こ、ここは一体………」


突然消えたクラスメイト、制御不能になり落ちるバス、そしてその中にいたはずだったのに、夜空の上にいる自分。もはや何が起こっているのか、自分の頭では理解できなかった。それとも、俺は死んで今の俺は魂だけの存在で、ここはあの世なのか?


いや、そんなことはありえない。そもそも、あの世とは人間が作り出したものであって実際にあるとは限らない。だが、もしここがあの世じゃないなら、どこであるのか説明がつかなくなる。


延々と続く思考のループにハマっていると、突然声が聞こえてきた。


「あら?どうしてこんなところにヒトがいるのでしょう?」


「うわ!…………っ」


声のした方を振り向くと、俺は声を失った。


そこには、白い装束を身にまとい、頭の上には金色の輪っかのようなものが、そしてその下には、この世とは思えないような美しい顔があった。そう、それはまるで顔の黄金比をそのまま具現化したような………。


ふと気づくと、その手にはハープのようなものが握られていた。


やはり俺はあの世に来ているらしい。さっきまで思考のループにハマっていたはずの俺は自然とその結論にたどり着いた。


「あの、あなたはなぜここにいるのですか?」


「え?あ、はい。えぇっと………」


突然話しかけられたので、慌てて俺は今までの経緯をその女性に話した。するとその女性は、びっくりした様子で、


「まあ、そのようなことがあったのですね。ん、あれ?でも確かあの時…………っ!ま、まさか!」


なにかに気づいたようだった。


「えっと…。どうしたんですか?」


「あ、その……あなたはここに来る前に、目の前が真っ白に光ったと仰ってましたよね」


「はい。突然目の前が真っ白に光って、気づいたら他の人が消えていたんです」


「ふむ………もしかすると、あなたが目撃したのは、召喚魔法なのではないでしょうか」


「……………え?なに?魔法?」


「はい。魔法です。もしかしてご存知ありませんでしたか?」


「あ、いや、そうじゃなくて」


ありえない。俺はすぐにそう思った。魔法といえば、ラノベやアニメに出てくるような、人間が作り出したフィクションで、そんなものが現実で起きるわけが無いと思っていたからだ。


「ついでに申し上げますと、あなたが見たのは勇者召喚と言うものでして、我々が唯一あなたの世界に直接干渉できるものなんです」


「そ、そんなのがあるんですね。ところで、あなたは誰なんですか?あ、俺は横川弘樹といいます」


「あ、私としたことがすみません。私の名は、コリアと申します。ディノ神に使える天使のうちの一人です。横川弘樹さんですね。覚えました」


天使?ディノ神?俺にはさっぱりわからなかった。そもそも俺の中の天使のイメージは、素っ裸の幼稚園児くらいの子供に翼が生えたようなものくらいしか無かった。想像力が致命的に乏しいが、仕方の無いことだと思いたい。なのに目の前の女性は、翼があるということと、とびきりの美人だということ以外は、普通の人だった。


いや、翼がある時点で普通じゃないな。


「えっと……天使、ですか」


「はい。天使です。ついでに言っておきますと、この星の四分の一を管理している天使です」


そう言ってそのコリアとかいう美人な女性はニコッと微笑んだ。そのあまりの美しさに、つい顔を赤くしてしまう。


この星というのは、地球のことだろう。


「え、ということは、あなたの他に天使がいるんですか?」


「えぇ、いますよ。名前はそれぞれ、サーニャ、コリン、ピレーネです」


「そ、そうなん、ですね」


名前を言われてもいまいちピンと来なかった。知ってる名前が出てくると思っていたからだ。イザナミとかイザナギとか…………その二人は神か。


「では話を戻しますが、弘樹さんがここにいるということは、既にあなたは死んでいます。残念ですが」


「あ……やっぱり、そうなんですね」


やはり俺は死んでいたようだ。それならあの時、雫玖に告白しておけばよかったと今更ながらに後悔する。


すると突然、天使様がこんなことを聞いてきた。


「弘樹さんは、死んだ人間がどうなるか知ってますか?」


「え、なんですか急に」


「突然こんなことを聞いてすみません。実を言いますと、あなたがここにいるというのは本来ありえないことなんです」


「え、どういうことですか?」


俺にはこの天使様の言っていることがわからなかった。一体どういうことだろうか。


俺が黙っていると、天使様は話を続けた。


「本来、死んだ者の魂は、こことは違う場所で記憶を消されてから人間や犬、魚、植物など別の生き物の体に宿ります。ですが、弘樹さんが今居るのはそういった場所ではなく、それらを管理する者の場所にいるのです」


「ぇ……それって大丈夫なんですか?というか、それならどうして俺はこんなとこにいるんですか?」


「それは私にも分かりません。ですが、もしかしたらあなたが目撃した勇者召喚が関係しているのかも知れません」


「それってどういう……」


「もしかすると弘樹さん、あなたは本当は他の方と共に異世界に召喚されるはずだったのではないかと思うのです。あくまで予想ですが」


まじか。


「え、でも俺はバスの中で取り残されていましたよ」


「えぇ。それはさっき聞きました。つまり……」


「つ、つまり?」


「あなたは勇者召喚に失敗し、不幸にも死んでしまったということになります」


「え………」


俺はものすごく現実から離れたような話についていけず、ただの不幸によって死んでしまったということしか理解できなかった。え、俺何も悪くないじゃん。


「あれ?でもそれじゃあ俺がここにいる理由にはならないと思うのですが……」


「それに関しては、これも私の予想ですが、本当なら貴方は勇者として、他の方と勇者召喚されるはずでした。要は貴方は勇者達の一人となるはずだったのです」


そうか。落ち着いてよく考えてみたら、俺は今頃勇者になっているのか。そう思うとなんか勿体ないような気がしてきた。


「しかし、勇者召喚は失敗し、貴方だけが取り残された。そして貴方は死んでしまった。もしも貴方が病気や交通事故など、我々が干渉しないような死に方なら、貴方の魂は本来行くべきであろう場所に行くはずでした。しかし、今回の件は我々が干渉してしまっているので、こうして貴方がここにいるのだと思います」


「干渉って、あなた達は地上になにかしているんですか?」


「えぇ。人類の危機になりそうな災害や戦争が起こりそうな時は、我々が防いでいます。今回の勇者召喚も、あっちの世界から依頼が来たので我々が起こしたものです。正確にはディノ様が、ですが」


なるほど。大方理解できたぞ。


「要するに、俺はイレギュラーということですか」


「悪くいえばそういうことになります。ですが困りましたね。貴方には、私たちの事情に巻き込んでしまったお詫びをしないといけないのですが」


「え、お詫びですか?」


「はい。今回の件はこちらに非がありますので、そうですね………一つだけ、願いを叶えます。何かありますか?」


そう問われて俺は直ぐに思いついた。というかこれ以外に思いつくのがなかった。


「じゃあ、俺を雫玖達が召喚された世界に送ってくれませんか?」


「それは……あなたの肉体が存在しないので、できません」


そう言って天使様は申し訳なさそうな顔をする。


「そう……ですか」


ショックは受けたものの、俺はすぐに気を取り直し、別の願いを考える。しかし、全然思い浮かばなかった。


しばらくウンウンと悩んでいると、急に空から声がした。いや、ここだと上と表現した方が正しいだろうか。


「やっほーコリア!って、うわあああああああ!?」


俺は驚いて声がした方を向くと、上から人が降ってきた!


「え!?おわああああああ!?!?」


ドッシーン!


案の定、その人と俺はぶつかってしまい俺が下敷きになるような形になった。


「いてて………力の制御を忘れていたよ。いやー、失敗失敗」


「うぅ、な、なんだ?」


「ん?あぁ!ごめん!巻き込んじゃったね!」


現在俺の上に乗っかっている少女は、俺の存在に気づくとすぐに降りてくれた。俺はその後に立ち上がる。改めて見ると、その少女も天使様と同じく、この世とは思えないくらいの美しさだった。


「何をしているんですか?ディノ様」


天使様は俺の前に立っている少女のことを、ディノ様と言った。ということはつまり……


「え、あんたがディノ神?」


この子がさっき天使様が言ってたディノ神なのか?なんかやけに幼いような気がするのだが。


「ん?君は…………あー!君がそうなんだね!」


ディノ神らしき少女は俺の事を見ると、なにかに気づいたようだった。


「俺の事知ってるんですか?」


すると少女は人差し指を動かしながら「ちっちっち」と舌を鳴らすと、


「知ってるも何も、君は僕が勇者召喚をする際に手を滑らせて間違えて候補から外してしまったんだから!」


「…………………………」


俺と少女の間に変な間が空いた。


「ディノ様、それを本人の前で言いますか………」


天使様はなんか呆れていた。ディノ神はこういう性格らしい。しかし、俺は頭の中で「プツン」と何かが吹っ切れたような音がした。


「あんたが?お前があれを起こしたのか?」


「ん?どうしたんだい?な、何か変なオーラが出てるよ君!?」


俺は少女の言うことをスルーし、ゆっくりと近づく。


「え」


俺は少女の真ん前に立った。そして今回起こったことを整理してみる。


俺は勇者召喚されることはなく失敗してそのまま死亡。そしてこの場所に来た。そこにはコリアという天使とディノという神がいた。そしてその神は言った。『君は僕が勇者召喚をする際に手を滑らせて間違えて候補から外してしまった』と。まぁつまり、今回の原因というのは、


「お前のせいかあああああああああぁぁぁ!」


「ぎゃあああああああ!!痛い痛い痛い痛いぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


俺は少女のこめかみにぐりぐりをした。野原み〇えみたいな感じで、だ。そして少女はその美しさが台無しになるくらいの表情になっていた。


「ちょっとコリアぁ!助けてぇ!」


ディノ神は涙目になりながら、手のひらを天使様に向けて必死に伸ばして助けを求めていた。それに対する天使様の反応は、


「今回はディノ様が悪いと思います。大人しく謝られてはいかがでしょうか」


そう言ってニコッと笑った。いや、雰囲気が笑っていなかった。なんというか、とても辛辣だった。


「そんなあぁぁぁぁ!!!ていうかキミぃぃぃぃ!!いつまでそれをするんだよぉぉぉぉ!!」


「うるせええええええええ!!こっちはお前のせいで大変なことになってんだよおおおおおおおお!!」


俺はそう言ってグリグリの力を強めていく。なんだかグリグリの音がゴリゴリになってきているような気がするが俺は気にしない。


「ぎゃああああああ!!なんかなっては行けない音がなってるよぉぉぉぉぉぉ!!!わかった!!わかったから!!謝るからああああああああぁぁぁ!!!」


その後、しばらくの間この空間にディノ神の悲鳴が響くのだった。

モチベーションが上がんない。(´・ω・`)

しばらく投稿頻度少なくなります。

あぁ、自由だな。

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