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わんだーけみかる!~煩悩まみれな薬剤師男が美女の尻に敷かれる異世界旅~  作者: ぽんぽこ@銀郎殿下5/16コミカライズ開始!!
第一世界編

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第45話 No.12 やればできる


 ――俺のオリジナル魔法、化学魔法(ワンダーケミカル)


 龍鱗狼ウルフザードの行動パターン、そして生物学的特徴。

 そこから推察し、コイツの弱点を予想して即興で創り上げた新魔法。


 その名も、『フラッシュバン』。

 前の世界(地球)では閃光手榴弾せんこうしゅりゅうだんとも呼ばれていた、非殺傷性の兵器だ。

 相手を行動不能にすることを目的としたこの兵器を、俺の化学魔法でなんとか再現した。


 龍鱗狼の頭上に放たれたこのフラッシュバンは、大気を震わせる爆音をたてながら、周囲を(まばゆ)い光で白く塗り潰していった。


「……やったか?」


 えて自分からヤラレ役ようなセリフを言ってみる。

 もしコレが効かなかったら――うん、その先は考えたくないな。


「さすがにコレを間近で喰らっておいて、まったくの無傷ってことはないと願いたいが……」

「ふひゅぅ~??」

「ちょ、ちょっとリタ! 大丈夫!? 私も……め、目が……」


 光が収まった頃、ドキドキしながら恐る恐る目を開いてみた。

 目と耳はちゃんと閉じていたんだけど、至近距離で起爆した所為(せい)で頭がクラクラだ。


 こめかみを抑えながら辺りを確認してみると、目をクルクルと回して地面に倒れているリタを発見した。

 ……やばい。そういえばリタは視覚や聴覚がかなり敏感なんだっけ。

 うーん。説明をしている暇なんて無かったし、緊急事態だったということで何とか許してもらおう。


「今の爆発は一体なんなのよ!? アンタまさか、また《《あるみにうむ》》でも使ったの?」

「おぉ、気付いたか? そうそう。以前スライムを爆散させたあのアルミニウムを使ってみた。ただ、今回はそれだけじゃあない」


 暴食グルメスライムの時のように、動き回る龍鱗狼たちに爆弾を飲み込ませるのは流石に無理だった。

 その代わりに利用したのがスライムには無く、龍鱗狼は持っていた《《とある》》特徴。

 ぶっつけ本番だったので、ちゃんと上手くいくかは不安だったが――


「……すごいわね。あの凶暴なトカゲ狼たちが、みんな揃ってひっくり返っちゃってるわよ」

「ぐるぐるぐる~です~」


 狙いはちゃんと思い通りにいったみたいで良かった。

 まぁリタまでヤラレちまったのは想定外だったけど。


 詳細は省くが、地球産のフラッシュバンの中にはアルミニウム片と、これまた以前にロロルに披露した塩素酸カリウムが詰め込まれているらしい。

 コイツを空中に拡散させてやると空気中の酸素と結合、化学反応を起こして閃光を放つのだ。

 それに――


「ちょっと試しにマグネシウムも入れてみた」

「まぐね、しうむ? それがこの太陽みたいな光を生み出したっていうの?」


 異世界人であるロロルにマグネシウムなんて言ったって分からないか。

 マグネシウムの原子番号は12。常温で結晶の形をした、割とどこにでも存在している元素だ。

 理科の燃焼実験をしたことがある人なら知っているかもしれないが、こいつも火をつけると空気中の酸素と良く反応してくれるんだよね。


「そして凄まじい勢いで発火、爆発することで閃光と爆音が発生するってワケだ」

「え? じゃあそのまぐねしうむは、爆発の威力を上げるためにワザと入れたってわけね!? やるじゃない!」

「あぁ、それは……」

「それは?」


 想像以上の威力を示した新魔法に、新しいもの好きなロロルは興味深々だ。

 泥やすすが付いた顔で、目をキラキラとさせながら俺の答えを待っている。

 うむうむ。化学の面白さを分かってくれて俺も嬉しいよ。


「マグネシウムを入れたらどうなるか、見てみたかったからやってみた」

「え?」

「いやぁ、元素をひとつ追加するだけでここまで威力って増すんだなぁ、うん。……いや、リタにはちょっと悪かったと思ってる」

「……ちょっと?」

「ほへへ~? アキラさんがゴブリンにえるですぅ~。殴り殺さなきゃです~」


 おい、やめろ。

 顔はゴブ似かもしれないが、これでもちゃんとした人間だぞ。

 だからそのメイス(釘バット)は地面に置きなさい。


 せっかく興味を持ってくれていたロロルまで呆れたようなジト目で見てくるし。

 なんだよもう。『やればできる』ならやるべきだろうに……。


 ちなみにマグネシウムはひじきに多く含まれているんだよね。

 ……まぁ、火をつけても爆発はしないけど。

 いためている間にいちいち閃光を放って爆発していたら煮物も作れない。


 ……ふぅ。あんなラストダンジョンに出てくるような敵も、こうなっちまえば怖くないな。

 そんなことを考えながら、舌を出してピクピクと痙攣けいれんをしている龍鱗狼のトドメを聖剣でサクサクと刺していく。

 医療用メスを巨大化させたようなふざけた形状の聖剣だが、切れ味は一級品だ。

 流石のドラゴンモドキも、頭と胴体が泣き別れてしまえばその生命活動を停止した。


「そういえば、なんで急にこんな魔法を思いついたの?」


 今はもう動かなくなった龍鱗狼を、白くすらっとした足でツンツンと(つつ)きながらロロルがそう尋ねてきた。

 いいなぁ、素足だったら俺も是非ツンツンして欲しい。


「そんなキッツい目でにらむなよ……。まぁこの魔法ができたのは偶然だったよ。というより、アンさんのおかげだな、これは」

「きゅるるぅ~?」


 突然自分の名前を呼ばれたセキセイインコの姿のアンさんは、俺の肩の上で鳴き声を上げながら首をかしげた。

 うん、ワンコの姿も可愛いけどインコも可愛いな。


「アンさんが空から龍鱗狼に攻撃をしてくれただろ? あの時のアイツら、アンさんを目で追えてなかった」

「たしかにそうだったわね。でもそれはアンさんが小さくて小回りがきくからじゃないの?」

「でも、この暗闇の森で俺たちを見つけ出した。つまり、何かしらの探索能力があったってワケだ」

「え? じゃあもしかして……」


 そう、決して龍鱗狼は目が悪いわけじゃ無い。

 では何故か?

 その答えはこのトカゲの生物学的特徴にあった。


「この龍鱗狼は恐らく、第三の眼を持っているんだ」



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