表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/47

この中に毒物取扱責任者はいませんか!?

 

 謁見の間を後にした二人は、ロロルの案内で王城にある部屋に入るアキラ。


「ふぃ〜。フレンドリーな王様だけど、一国を背負っているだけあって威厳というかプレッシャーが凄いんだよなぁ。ってアレ? なにしてるの?」



 ロロルもアキラに続いて部屋に入ると同時に、後ろ手で素早く鍵をガチャリと閉める。



「おっと白百合ちゃん、まだ真昼間だよ? いや、僕は良いんだけど。むしろバッチコイ? ってあれ? そんなに君ちみっこかったっけ? ……ていうか、誰??」



「はぁ〜。勇者勇者と様々な能力貰っても頭が悪いのね。というより、私の名前は白百合じゃなくてロロルよロロル。お花でいっぱいなのはその頭の中だけで十分よ? ていうか私の許可無く口開かないでくれる? 見て、鳥肌がさっきから止まらないの」



 突然人が変わったように、本気で嫌がりながら自分の身体を抱くロロル。

 ……というより本当に人が変化した。

 あれ程神々しく高貴なお嬢様らしかった容姿が、シンデレラのようにチェンジしてしまった。

 海外モデルもビックリな高身長は可愛らしい三頭身に。

 キリッとしていたオメメは三白眼に。

 ぷっくりプリプリしていたお口は、毒舌マシンガンと化し、驚愕しているアキラを見てニヤァとしている。

 ……今までの姿は幻覚? 魔法だったの??



「あ、コレ? 普段は幻覚を見せるスキルを使ってるの。アンタ、看破スキルかなにか持ってるでしょ。レジストしてたんだけどな〜」


「ふ、ふえぇぇええ」


「あぁ、そういえばアナタ、薬師なんですってね。向こうの世界にも馬鹿につける薬は無かったのね。それとも、つけないで飲んじゃったのかしら? アハハハハ」


「あは、アハハハハ! アババババ」


「うわっ泣いた! 成人したいい大人が! 勇者が! アハハハ!!」



 チートで完全に天狗になっていた勇者アキラは、この世界に来て初めて涙を流した。








 ◆◆◇◇


「で、これからの旅の目的だけど」


「……」


「あァ? 聞いてるの? 会話してるんだから返しなさいよ。さっきまで頼んでもないのにしゃべくり倒してきたくせにさぁ?」


「うん」


「この旅の大目標は魔王の討伐、もしくは侵攻をやめさせる。中目標が戦力の充実。小目標として、各地に点在するとされる神器を集めるわ」


「うん」


「……殴るわよ?」


「うん……って痛ぁ! え、この身体で初ダメージってコレ?! 防御チート貫通してくるってどんなスキルしてるの?!」


「あら、私が初めての人なんて光栄ね。アンタ殺しても死ななそうだし、私がそっちのバージン(生命)も奪ってあげようか?」


「やめて?! 心のライフはかなり失ったけど、死にたくはないよ??」


「……話を戻すわよ。王も言ってた通り、これから聖都ジークを目指す。まぁ魔導機を使えばそう遠くはないわ。あぁ、魔導機っていうのは地球で言う車を魔導エンジンにして、更にタイヤを無くして空を飛ぶ様にしたモノと考えて」


「おぉ〜街で見かけたアレかぁ。これぞファンタジー!って感動したよ」


「アレは個人で所有するには燃費が悪いし、何より燃料としてジールが必要だから、まだ一般利用されていないけどね。ジールについてはもう理解してるわよね?」


 ――ジール。

 戦争の原因ともなっているエネルギーの結晶体だが、魔法が発展したこの世界でも詳しくはまだ解明できていない。

 3つの世界を創生した神が創りたもうたシステムだとか、魔力が濃縮された結果結晶化しただとか様々な仮説は立てられているが、解明には至っていない。



「ジールはお金にも関係しているのよ。この世界での通貨は、古来から貨幣そのものに価値がある、本位貨幣だわ。アンタが居た国の様に信用貨幣の仕組みはまだ無理ね」



 この世界で過去に金貨や銀貨を使ってた時代は、含有量を誤魔化し鉄貨や銅貨は偽造され過ぎた。

 それこそ、技術が本物に負けて偽金が本物の貨幣として使われていたぐらいだ。

 真贋を判断する魔法を開発しても、偽金を作る魔法が新たに作られる、まさにイタチごっこだった。

 それぐらい貨幣制度というのは難しいようだ。



「あ〜俺がいた日本でもちょっと前まで自販機で海外のコインを削った偽金とか使われてたぐらいだしなぁ。でも、悪く言ってる金貨や銀貨だって実は割と優秀で、俺の国じゃ爺さんの時代でも普通に使われてたんだけどな」



 今でこそ創作話で金貨や銀貨が使われている表現がされ、ファンタジーのように扱われているが、日本においても昭和の時代まであったのだ。

 今の若者が昭和を最近と最近と感じるかは別としてだが。



「でね、数百年前のドワーフの練金王が画期的な新素材を発見したの。魔力を溜め込み、その魔力によって一定の輝きを示す、通称"魔鋼石"。結晶体(ジール)を魔鋼石に触れさせると魔力を吸い取り、蓄えるの」


「あれ? そういえば動物や世界によって魔力の性質は違うって聞いたけど?」


「そこが魔鋼石の便利なところでね。どんな性質でも、純粋な魔力として取り込む事ができるらしいの。まぁ貯めた魔力を放出する事もできるんだけど、その時も元々の性質は無くなってる訳だけどね。で、その一定の魔力を単位として魔鋼石に取り込んで、通貨としてるの。魔力一単位で一ジールって訳ね。」



 電池もビックリの不思議鉱石である。

 なんでもその発見だけで財を成し、国まで作ってしまったらしい。すげーな。



「うーん、理系としては興味深い物質だな〜。元々の結晶体にエンタルピー的なモノがあって、それが移動? エントロピーはどうなってるんだ? 目に見えないエネルギー? 熱? いや光に近いのか? 波長パターンで性質が変わる? いやそもそも魂がエネルギーになるって……」


「はぁ、使う頭があるのか、ただの馬鹿なのか……本当に大丈夫なのかしら?」



改めて勇者の資質に疑問を抱かずにはいられないロロルであった。





少しでも面白いと感じた方は感想か、↓の星評価お願いします!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ