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わんだーけみかる!~煩悩まみれな薬剤師男が美女の尻に敷かれる異世界旅~  作者: ぽんぽこ@銀郎殿下5/16コミカライズ開始!!
第一世界編

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第35話 悪魔の証明


 初めて会ったアキラ達を快く家に泊めてくれた心優しいミールばあちゃん。

 夕飯をご馳走になりながら、前の街で知り合った獣人の少年ジャンの家族が殺された理由を教えてもらっていた。


 

「村長の息子がおかしくなる前に会ったのが、ジャン君の家族だったと……!?」


「そんな……そんないい加減なことでジャンの家族は犯人に仕立て上げられたって言うの!?」


「お、落ち着いてくださいですロロルさん! どぉーっ、どおー!」



 急に立ち上がったロロルを、リタが必死に押さえ付けて座らせる。

 理不尽が大嫌いなロロルはやっぱりキレたな……



「普通はそういう反応をするもんじゃ。わしも聞いた時はあまりの馬鹿馬鹿しさに自分の頭がついにボケたかと思ったわ。……じゃが、タオフェンの村人は違っとった」



 タオフェン村の人々は積極的にジャンの家族を非難したり、危害を加えるようなことはしなかった。

 だが、擁護もしなかったのだ。


 極端なことを言ってしまえば()()()証拠はないが、やってない証拠も無かったのである。

 村長の息子とジャン君の家族が会っていたのは事実で、その後おかしくなっているということしか分からなかったからだ。

 まさに"悪魔の証明プロバティオ・ディアボリカ"だ。



 村中が混乱している中、どこからともなく解放者達(リベレイターズ)がやって来たんだそうだ。

 彼らは獣人が居ると知ると否や、大した証拠も集めずに断罪した。

 同調圧力とは怖いもので、閉塞した空間で誰かを悪者に仕立て上げれば自分の命が助かると分かってしまうと、例え良好な関係を持った隣人相手でも容易にその手を血に染めるのだ。



「それでその後、タオフェン村はどうなったんですか?」


「……分からん」


「えっ?」


「ちょっと、分からないってどういうことよ?」


「解放者のせいじゃよ。あの村は解放者達に占拠されておる。それに王都周辺の村や街もじゃ。軍がモンスター退治に出ているのを良いことに、奴らは王国中の仲間を大勢集めて何やら企んでいるようなのじゃ。もしかすると、王都を攻め落とすつもりなのやもしれん……」



 想定外の事態に、一同は生唾を飲み込んだ。

 パチパチと炭が焼ける音だけが静寂の中で響いている。



「あの村で悪魔が出た原因である獣人を殺したことで平和が訪れたっちゅうんを声高に騒いでな。自分達が正しいのだと誇張して国中から信者を集めよったんよ。この村に勧誘に来おった信者が言うには、この国を悪魔から解放するのは王家ではなく自分達なんだとゆうとったわ。そんな簡単に国を救うなんざ、神にでもなったつもりなのかねぇ」



 神というワードを聞いて、女神に仕える神官のリタが反応する。



「そ、そんな事で国民は納得できるんですか!? それに占拠された村や町の人たちはどうしてるんです?」



「冒険者が居ない村や小さな町はな、元々獣人たちが狩りをして周囲をモンスターから守っとったんじゃ。獣人は元々身体能力が高いけぇの。畑の害獣やら鳥やらを捕まえるのは得意やったっちゅうんやな」



 ミールばあちゃんはチラ、とリタを一瞥し、梅酒を舐めてから話を続ける。



「村の奴らは獣人をモンスターや獣を獲る能しかない、野蛮で下卑た人間だと思っちょったのかもしれんなぁ。そして自分達は小麦や野菜を作る。だから俺たち農民は農業の国の民として誇るべき存在だと。……そこでモンスター騒ぎが起きたんじゃ。そこで初めて、だぁれも守ってくれる人が居らんちゅうことにようやっと気付きおった」


「それで、解放者達を受け入れたと?」


「そうなんじゃろなぁ。口の立つ(解放者)らは金で冒険者を雇い、村を襲うモンスターから守ってくれたからのう。戦うことが出来ん農民連中からしたら救世主にも見えたんじゃろ」



 モンスターが大量に襲ってきた理由は分からないが、この国にとっては運が悪かった。

 いいように騒動を利用され、国民の信頼も奪っていったのだから。



「今頃連中は自分の国を盗ろうとする解放者達の良いようにこき使われとるんだろうさ……じゃが、結局は自業自得じゃ。解放者達の言葉を借りるなら、それこそ自分の弱い心を悪魔に喰われてしもうたんじゃよ……」



 ミールばあちゃんは悲痛そうな顔をしてコップに残っていたプリュネ(うめ)酒を一気に(あお)った。

 リタがすかさずお代わりをトクトクと注いでいく。



「だからそのジャンっちゅうネズミの子が逃げた先でまともな人間に拾われたっちゅうのは、空から見てた女神様が助けてくれたのかもねぇ。奴らの言う通り本当に悪魔がいるって言うなら、神さんもいなきゃやってられんよ」



 女神という言葉に今度はロロルがピクッと反応したが、リタがすかさずお酒を飲ませて誤魔化していた。

 まぁ実際にジャン君を助けたのは女神じゃなくて、あの宿屋の夫婦だしな。



 ――あ、漬物って梅酒と合うなぁ。ポリポリ。

 アンさんも珍しくボリボリ食べている。



「ひゃっひゃっ。犬っ子はカブの漬物が好きかぁ。おらぁ村にゃあなんも贅沢なモンはねぇが、野菜と糠みそだけは自慢だがや。ほら、好きなだけ食べんなせぇ。ひゃっひゃっひゃ」




 そのあとミールばあちゃんは酔っ払って寝てしまったので、念のためアンさんに見張りをお願いしてから俺達も寝ることにした。

 リタは時々寝返りを打っては不安そうにキョロキョロと警戒をしていたが、数時間もすると眠気が勝ったようで静かに寝息を立てていた。



 ◆◆◇◇




 翌日、ミールおばあちゃんには泊めてもらったお礼にプリュネ酒と梅干し、醤油なんかを渡してあげたら腰を抜かすほど驚いて喜んでくれた。


「なんだい、アンタ! プリュネの酒だけじゃなくてこんな隠し種を持ってたのかい! まったく、あるなら昨日の晩のうちに出しとくれよ!!」



 ミールばあちゃんはリタと争うようにして麦粥と一緒に梅干しを食べている。

 お粥と梅干しって最高に美味しいよね。

 気分的に病んでて食欲がない時なんかは特にさ。



「普通酸っぱいモノって腐ってるイメージなんだけど、私はこの酸っぱさがクセになるのよね〜! 最近私はコレが無いと物足りないぐらいだわ」


「「えっ?」」


「ひゃっひゃっひゃ! なんじゃ、白髪っ子は兄ちゃんのコレだったのかい?」



 ミールばあちゃんはニヤニヤとしながら指を折り曲げ、なにか意味深なハンドサインをしている。



「ん? もしかして、俺の居た世界で言う小指を立てるアレか? いや、ばあち「ち、ちちちちがうわよ!! なんで! アンタなんかとふ、夫婦なんて!!」



 あぁ、やっぱりこっちの世界でもそういう風に使うのね。



「なんじゃ〜。仲が良さそうじゃし、酸っぱいものが好きだなんて言うから妊娠でもしとると勘違いしてもうたわ! ひゃっひゃっひゃ」


「どちらかと言うとお二人は姉弟みたいに見えるですー。ちなみにボクも旦那としてアキラ様はお断りですー」



 本気で嫌そうな顔をするリタ。

 両手のひらを超高速でイヤイヤして拒否の意を示している。

 なにもそこまで嫌わなくてもいいと思うのだが……



「えぇっ!? 君酷くない? リタなんか同じベッドで寝た仲じゃないか!」


「変な言い方しないで欲しいです! アレはアキラ様が部屋に連れ込んだだけで、ボクと変な事は一切なかったです!!」


「そうだけど!! いや、何もなかったのは正しいけど、連れ込んではないだろ!? 君が勝手に酔っ払って()()ベッドに入ってきたんでしょうが!!」


「アンタ達は食事中になにを変なことを言ってるの!!」


「「だってコイツが!! ッ!?……ご、ごめんなさい!!」」



 リタと聖都ジークの宿屋で同じベッドで寝たことを言い合っていると、最初にからかわれていた筈のロロルに怒られた。



「ひゃっひゃっひゃ! あーおかしいったらありゃしない。こんな楽しかったのは久々だったよ。ウチに来てくれてありがとうね。今度はジャンってネズミっ子も連れてきておくれよ。歓迎するさね」


「うん、分かったよミールばあちゃん。だからそれまで元気で過ごしててな」


「またプリュネ酒持ってくるから」


「今度は美味しいお土産たくさん持ってくるです!」



 いろいろと警戒してはいたものの、結局この村の人達は獣人を受け入れていたし、ミールばあちゃん含めいい人ばっかりだった。

 リタも途中からはリラックスしていたし、安心はできた。……だけど、この先の村や街では分からない。




 結局このあと、あまりに居心地の良かったのでゆっくりと昼前まで過ごしてしまった。

 そしてここで得た温かみと、これから待ち受ける嵐の予感に複雑な思いを胸に抱えながら、一同はインダール村を後にするのであった。










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