ザワークラウト
「お話は分かりました。アキラ様達の活動を鑑みまして、コーブルからカッパーランクへ昇格とさせていただきます。正直、シルバーランクでも良い規模のご活躍でしたが、一足飛びは出来ない規則ですのでご了承下さい」
「えぇ、私達はそれで十分よ」
「報酬もたっくさん貰えたです! これで美味しいものが買えるですぅ!」
「リタは貯き「報酬は、アキラ様達の機関預金に均等に配分させていただいておりますので、ご心配なく」
「あぁ、そう言えばオレっちが渡航船組合として依「ご依頼されていた件については、まだです。依頼を受ける方がいらっしゃらないので、このまま取り止めになる可能性もございます」
……かぶせてくるなぁ。
俺ら男達だけ会話をさせてくれないんだけど。
これでも、勇者と元王族だよ?
「ゴリラのオジサンの依頼って何でありますか? バナナの採取です?」
「ちょ、そんな訳が「いえ、そうだったら楽だったのですが」……俺泣いていいかな?」
ソルティーナさんの話によると、トゥーリオの依頼とは新たな食材、もしくは調理法の発見だという。
「でもなんで渡航船組合が食材の調達なんて依頼するんだ? 農業とか食品組合辺りがするもんなんじゃないの?」
「んー、まぁ普通はそう思うよなぁ。……実は船乗りに深く関わるある食品があってよぉ」
――船乗りに欠かせない食品。長期間船の上で過ごす彼らには避けられぬ奇病がある。……そう、この世界でもビタミンC不足による壊血病があったのだ。
治療魔法があるじゃないかと思われるが、それによって一時的に症状を抑えることができても、外的要因である栄養不足に対しての根本的な治療にはならない。
「昔は、長距離渡航する船乗りが良く壊血病に掛かってよぉ。そんな時代に「そこへ女神が、救世主をこの地へ送ってくださったのです」」
「「……」」
「なんと救世主様は、すぐさま原因を突き止めになり、素晴らしい秘策を授けてくださったのですよ!」
頬を赤く染め、神に祈るように膝立ちになるソルティーナ。
「あ、ボクその人見たかもです! この建物に彫像があったですよ!」
「えぇ、その通りでございます。彼の名は"シューマッパ"。あぁ、なんて神々しくも尊い美名でしょう」
……俺は突っ込まないぞ。
あの人はたしかにドイツ人だが、元の世界ではまだご存命のハズだし、全裸でもない。
「彼が見つけた食材は、彼の名前を貰って魔葉と名付けられました。それがコチラです」
ドンッ!と目の前のテーブル置かれたのは、地球で言うキャベツそのまんまだった。
いや、見た目はキャベツだが、四本の手足が生えてる。
……なんかバレーボールのイメージキャラクターみたいだな。
「コレは野生では成熟すると、自分で畑から飛び出して逃げます。それも、並の冒険者じゃ追いつけないほどに凄く足が速いんですよ!! なんとそこで颯爽と現れたシューマッパ様が、たった数年の間に品種改良してくださったのです」
そこでまた連想させるの!? 品種改良ってF1ってこと?
だったら魔葉じゃなくて"シュー"の方にあやかろうよ!
不名誉過ぎるよ!!
「そして長年の研究の末に、船旅でも長期保存出来る、栄養豊富なザワークラウトを開発してくださったのです」
あぁ、たしかにドイツといえばザワークラウトだもんね。
キャベツを塩で揉み込んで乳酸発酵させたドイツ版のお漬物だ。ドイツ料理なんかで付け合わせによく出てくる、アレのこと。
「でもなぁ……俺ら船乗りはずっと船の上だろ? アレをずーっと食うってのも……飽きちまったっていうか。なんか酸っぱいし」
「何を言ってるんですかこの男は! ザワークラウトはですね! シューマッ「ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ、このクソゴリラ!! ザワークラウトはなぁ! 海に出る男たちが無事に帰ってくるように、清くうら若い乙女達が丹精込めて作ってんだぞ! ソルティーナさんも今着ているような民族衣装でさぁ!」
「ちょ、ちょっと!? あたかも私が、船乗りの為に日夜せっせとザワークラウトを作っているかのように言わないで欲「俺はなぁ! 日本各地でやるドイツのビール祭に毎年通うくらい、ドイツビールにソーセージ、ザワークラウトと! なによりも民族衣装のお姉さんを愛してるんだよ! 分かったか! 分かったら謝罪しろ!!」
「私も会話の途中で挟むのはやっておいてなんですが、相当腹立ちますね」
「お、おう。アキラの熱意は分かったけどよ。いや、後半は全然言っている意味が分からなかったが……取り敢えず、そこの姉ちゃん達がお前にヤバいくらい引いてるからその辺にしようぜ、な?」
テーブルに身体を乗り上げて、フーフー言ってるアキラを白けた目で見る女性陣。
しかし女性には分かるまい、あの民族衣装から溢れる胸の素晴らしさと、長いスカートの清楚さのギャップが!!
「最低ね」
「サイテーですぅ」
「今ほど読心したくないと思ったことは無いですね」
◆◆◇◇
「まぁそういうワケでよぉ。船乗り達の士気向上の為にも、何か良い案はねぇもんかなぁ?」
「えー、何で俺がぁ? ……まぁドイツ人にクラウトって言うと"キャベツ野郎"っていう悪口になるくらい食べられてるけどさぁ。いいじゃん、ザワークラウトに塩でもかけて食べなよ」
「なんで塩漬け魔葉に更に塩かけて食わなきゃならねぇんだよ! 頼むよ、アキラウト〜!」
「某国民的猫型ロボット風に悪口言うんじゃねぇよ!」
「そういえば組合長の娘さんも一緒に依頼されてましたよね? 素敵な殿方に、自分の美味しい魔葉を食べて欲しい、と」
「――やりましょう!!!」
「お、おい。娘はまだ3歳で……」
「しかもこの海ゴリラの娘よね」
「ゴリラ娘ですぅ」
結局トゥーリオの依頼を受けることになり、またもや寄り道をすることが決定したアキラ達であった。




