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わんだーけみかる!~煩悩まみれな薬剤師男が美女の尻に敷かれる異世界旅~  作者: ぽんぽこ@銀郎殿下5/16コミカライズ開始!!
第一世界編

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海へ

 

 本日も快晴、風は穏やかな追い風。

 絶好の船出日和だ。



「……ロロルさんが作る"てるてる坊主"のおまじない、効果あり過ぎて怖くなってくるんだけど」



 ロロルは毎晩、「あ〜した天気にな〜れ〜」と呟きながら、人間と等身大の人形を何体も、何体もせっせと作っている。

 そして人形の首に紐をくくりつけ、ウッキウキで天井に吊るしていた。


 彼女の人形の数は日を跨ぐほどに倍々に増えている。今日の朝に見た時には、ついに二十体を越える人形が部屋で首を吊っていた。

 ……アレを夜中に見たら、恐怖で失神すると思う。



「あれ、言ってなかったっけ? それが私のスキル、呪願(プリエール)の一つよ」


「おいおいおい、初めて聞いたぞ。ていうか俺以外でスキル持ちって初めて見たんですけど!?」


「ん? そうだったかしら……ううん。そういえば私、アンタに私の能力を聞かれた時に言ったわよ? 『私の武器は口よ』って」


「そんなんで分かるかぁあ! ていうか口が武器ってなんだよ!! ただの毒舌かと思ったわ!」


「アンタには効果抜群だったみたいだけどね。……私が想いを乗せた言葉は、スキルによって魔力を持ち、周囲に効果をもたらすの。効果が強力な呪願(プリエール)ほど、リスクやコストといった制限はかなりキツいんだけどね?」



 ……ムチャクチャだ。

 そんなもの裏を返せば、コストさえ用意できれば天変地異だって起こせるってことだろ?

 なんでも願いを叶えるって、これ以上ないチートじゃないか!!

 ……勇者の俺、必要なのかなぁ??



「だからかなり制限があるっての。死ねって言えば簡単に死ぬわけじゃないわ。口にする呪文や行う儀式は、世界に浸透するほどありふれたモノじゃないといけないし、回数制限や必要な魔力も尋常じゃ無いの」



 だからてるてる坊主が大量に集団自殺してたのか。

 吊るされた人(ハングドマン)が日毎に数が増えていたのは、コストが倍になるからか?



「まぁそういうワケで、必要最低限しか使えないからあまり期待はしないで? あくまで、運動会の日に晴れにするくらいの能力なのよ」



 運動オンチの俺としては、運動会は雨にして欲しいなぁ。

 ……ん? そういえば雨には出来ないのか?

 アレ? 逆に吊るせば雨だっけ??



 アレコレ悩んでいるうちに、船の荷物が積み終わり、出航の準備が整った。

 まぁ多少ぶっ壊れ性能のスキル持ちだったとしても――ロロルはロロルだ。

 ……毒舌が多少レベルアップしただけだと考えよう。



「クククク! アキラ様がドンドン無能キャラになっていくですねー!!」



 あぁ、毒舌はもう一人居たんだった……

 押し寄せる絶望(ロロル)恐怖(リタ)から逃げるように、船に乗り込むアキラであった。





 ◆◆◇◇


「うぉーっ! 帆船って初めて乗ったけどスゲェ速い!! 気持ちイイ〜!!」


「ガハハハ! そうだろう、そうだろう!! ウチの船乗りは風魔法が堪能だからな! それに海は自由で開放的だ! 最高だよな〜」


「いやいや……さっきから気付いてはいたけど、なんでトゥーリオのオッサンがこの船に居るんだよ!?」



 甲板にはゴリラのような体躯に、ピッチリとしたビキニパンツ姿の組合長、トゥーリオが居た。

 顔が強面なので、船乗りというより海賊にしか見えない。



「なんでって、俺ァこの船のトップだからよ。トリメアの街をモンスターが襲った一件で、ヘリオス国の方へも報告の為に(つら)ァ出さなきゃなんねーのよ」


「組長は仕事ほっぽり投げて、自由に船に乗りたいだけでさぁ。まぁ、ガキのワガママみてぇなもんですから、ほっといてやってくだせぇ!」


「そういうテメェも、同じ穴のムジナだろぉがよ!」



 ガハハハと笑い合うバカ達を、アキラ達は視界に入れないようにしていると。



(われ)が海に戻った時に確認したが、ピギールの群れはもう大人しくなっておったよ。結局街を襲った理由は分からんかったが、アキラが使った策があればまた襲撃があっても大丈夫じゃろう」



 すっかりお気に入りとなった、アキラ特製プリュネ()酒の入ったグラスを片手に飲みながら、レジーナが優雅に語りかけてくる。



「気に入ってくれたのは嬉しいけど、これじゃあヘリオスに着くまでに飲み尽くされそうだなぁ。まぁあれから梅も買い足したし、梅干しと一緒に作っておくけど」


「んふー。このような美しい酒は我にピッタリじゃろ? もっと沢山作って、どんどん我に献上するがよい! ンフフフ!」



 グラスを眼前に掲げ、日光で(きら)めいたプリュネ酒の琥珀色の色彩を楽しんでいる。

 彼女はちょっと尊大な態度だけど、喜ぶ仕草が可愛いので俺は満足だ。



「そういえばヘリオス国側の港街の名前、"テトリア"って言うんだっけ? トリメアと似たような響きの名前だけど」


「そうじゃ。今出国したアクテリア王国が、ヘリオス王国との友好の為に、数代前の王子と王女同士が結婚したんじゃったかの? 其奴(そやつ)らの子の名前を、街の名前にしおったのじゃ」


「リタも知ってるですよ!! その話は今でも、演劇の題材になってるですっ! アクテリア第三王子と、ヘリオス第四王女の国と海を越えた大恋愛は、世の中の女性のあこがれなんです! ボクもお二人みたいに海に出て、貿易王になりたいです〜」



 手を組み、目をお金の単位に変えてウットリするリタ。

 ……そのリタの理想って、大恋愛うんぬんじゃないよね? ただお金欲しいだけですよね??

 ていうか貿易王ってなんだよ、海賊王の亜種か?



「おっ? なんだ、曾祖父(ひいじい)さんの話か! そうそう! やっぱ男は海に出なきゃだよな!」


「「「「はい?」」」」


「ん? 貿易王の話だろ? 俺っちがその孫。トリメアとテトリア、トゥーリオ。似てるだろ?」


「えぇぇえぇえぇぇぇぇ〜!?」



 ビキニパンツ一丁で仁王立ちになりながら、「ガハハハ!」と笑うトゥーリオ。

 こ、コイツ……まさかの元王族だった。

  ん? 待てよ……じゃあ俺が世話になったあの国王と、遠いながらも血が繋がってるってこと??



 あのイケメンの国王と、このゴリラ海賊王が親戚関係なんだと考えると――遺伝子の悪戯はこうも残酷なんだな、と感じてしまう一同であった。


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