怪奇!カニ男の謎
港街トリメアは、アクテリア王国の玄関口として発展してきた。
街の南側は三日月状に港湾が展開しており、大きな木造船が停泊している。
色彩様々な帆船が毎朝漁から帰ってくる景色は、まるで全ての絵具で描いた絵画の様に壮観で、この街の名物にもなっている。
そしてこの街で見られる、もう一つの名物。朝から温いビールを浴びるように呑んでいる船乗り達や、今日の漁の出来を大声で怒鳴り合う漁師達。
そんな荒くれ者共を適当にあしらうウェイトレスのお姉様に、今日のオススメを注文したアキラは辺りを見回しながら話し出す。
「今日はもう宿もとれたし、明日は渡航船の組合に行って、隣国ヘリオスへ出る船の確認をしよう。あとは街の観光でもして、船が出るまではのんびりとしようか」
「私も賛成よ。船は天候もあるだろうけど、長くても十日程だと思うわ。食糧は自前だから調達もしなきゃね」
「ボクは美味しいモノが食べられればなんでもいいです!」
「くぅ! くくぅ〜」
「お、アンさんは泳ぎたいって? 陸の亀って海でも泳げたかな〜? まぁアンさんなら大丈夫か。なんなら、ヤドカリかドラゴンフィッシュにフォルムチェンジすればいいし」
「アンさんはドラゴンになれるですか!? スゴイです!」
「あぁ、なれるぞ! 厳つい顔に長い身体で、水龍のように泳ぐんだ! ……ハゼの仲間だけど」
「ハゼっていう水龍が居るですか!? 強そうです! クールですぅ!!」
「くぅーくくぅ!」
本物のハゼ見たら、あまりの間抜け面にブチキレるんじゃないかな、と心の中で想像するアキラ。
ハゼ美味しいんだけどね、うん。
アンさんも得意顔してるけど、ドラゴンフィッシュは汽水魚だから沖まででたら大変な事になるのも黙っておこう。
「はい! おまちどう。今朝上がったマツジロウとオーガヘッドの南蛮漬けだよ! 熱いうちに食べておくれ!」
「マツジロウ……?」
「鳥の唐揚げも美味しかったけど、この魚も美味しいわね!……ちょっと姿がグロいけど」
「あつあつサクサクですぅ〜! 特に頭がじゅうしぃです!」
たしかこのムツゴロウさんもそのハゼの仲間なんだけどなぁ、とバクバク食べるリタを見ながらアキラも美味しくいただくのであった。
◆◆◇◇
次の日、港にある渡航船組合グラントリアにて
「ヘリオスへの船が出ないですってぇ!?」
「ちょ、ロロルさん、組合長さんがビビってるから抑えて!」
「お、おう。すまねぇ。つい娘に怒鳴られた時を思い出しちまったぜ。それで船なんだが……昨日隣国から帰ってきた船の奴がオカシなことを言っててな。なんでも、海で大量の魚の死骸が浮かんでるのを見かけたっつぅんだよ。海に異変があったらマズいんで、念の為に漁師の連中に沖の様子を見に行って貰ってるんだが……」
「組長! 大変です!! 一大事でさぁ!!」
「てめぇバカヤロウ! 組長じゃなくて組合長だっつってんだろォが!! 娘にヤクザもんだと勘違いされて三日間、口聞いてくれなかったんだぞ!!」
「すいやせん組長! そんなことより事件でさぁ! 海が! 海が来てるんです!!!!」
「そんなこと……まぁいい。海が来てる? 津波か!? 船はどうした!」
「船は一旦、湾の外へ避難させやした! でも津波じゃねぇんですよ! アレぁモンスターの群れですぜ!」
――モンスターの群れが襲ってくる。
その報せが街に走ると、人々は大パニックとなった。
街の外へ逃げようとする者や、神に祈りだす者。
そして何故か両手にカニを持って踊る者や、陸に上げられた魚のようにピチピチする者までいる。
「いや、ソコは避難しようよ!? この街の人達、実は余裕あるんじゃないの!?」
「ち、ちがいやす!! アレは街の勇者、クーラブ様を召喚しようとしているんでさぁ! くうぅっ! 魚好きだったクーラブ様への生贄として、自ら魚となって身を捧げようとするなんて! 俺には出来ないっス!」
「あぁ、そうなの……俺にも出来ない、かな、うん。ていうか勇者だったって……もしかして俺、そのカニ男と同列なの? 魚は俺も好きだけどさ……」
来たばかりの街を襲いにやってくるモンスター!
この危機に人々を救う魚介好き勇者は現れるのか!?
次話! 乞うご期待!!
「いや、期待されても俺には無理だから!!」




