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わんだーけみかる!~煩悩まみれな薬剤師男が美女の尻に敷かれる異世界旅~  作者: ぽんぽこ@銀郎殿下5/16コミカライズ開始!!
第一世界編

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真夜中の侵略者

 

「クロウさん、ご不快でしょうが念の為にお聞きします。誰かが香辛鳥(こうしんちょう)を盗んで行ったという可能性はありますか?」


「ククク。その疑念はごもっとも。一応村長が見張りや村人に対しても警戒はしているみたいなんですけどね。でも……」



 人間の(たけ)ほどもある香辛鳥を見上げるクロウ。



「不躾なことを聞いてすみませんでした。確かにこれだけ大きな鳥を、村の誰にも気付かれず連れ出すのは人間には無理ですね。……でも尚更どうやって(さら)って行くのかが分からないんだよなぁ」



 村の者もアキラ達も、一通り思いつく限り調査してみたのだ。にも関わらず原因が分からないとなると、それこそ魔法でも使ったとしか思えない。



「そうだ! そうだよ! この世界には魔法があるんだった! 例えば転移魔法とかそういう魔法で……」


「思い付いて気持ち良さそうな顔をしている所悪いけど、そんな高度な魔法使える奴なら家畜奪うなんてセコい真似しなくたって高給取りになれるわよ」


「高級な鳥ならぬ、高給取りですぅ!」



 恥ずかしさで顔を真っ赤に染めるアキラ。

 しかしそれでは、一体どうやって……と考えている内に、その答えが突如やってきた。



 ――ぬるっ……ぬるぬるぬる……



 ソイツは、換気用の木窓の(わず)かな隙間から()うように侵入してきたのだ。



「……ッ!! こ、コイツは? クソッ! 可愛くない方のスライムかよ! そりゃあ序盤の敵には定番だけどよッ!」


「こいつはグルメスライムよ! 貴重だったり、美味で有名なモノの所に突如出現しては捕食、消化してしまう特性を持っているわ!」


「なんだその街の定食屋にフラリと出現するグルメ漫画の主人公みたいな奴は!」


「キャー! ボクも食べられちゃうですぅ! 色本みたいに! 色本みたいに!」


「ククゥ、確か人間は食べないはずです。ククルゥ」



 あまりの気持ち悪さにパニックに陥るアキラ。

 そうしている間にも、グルメスライムは眠っている香辛鳥を取り込もうとしているではないか。



「ちょっとアンタ! しっかりしなさい! スライムへの打撃や斬撃は、武器が取り込まれるか溶かされて無効化されてしまうわ。槍は刺さるけど、身体の奥にあるスライムコアを破壊するのは素人には難しいでしょ? だから魔法が有効なんだけど……」


「下手したら香辛鳥にも当たってしまうです!」


「それに、取り込まれたら一瞬で溶かされるほどの溶解液を飛ばして来るわ! 近付くのは下策よ!」


「強酸……いや、アルカリか? 聖剣クラージュなら溶かされないかもしれないが……どうする、どうする!」


「クソッ! 僕らの! 大事な香辛鳥を! スライム(ごと)きが! やめてくれぇ! ヤメロォッ!」



 大事な村の財産を奪われまいと、クロウがその辺にあった道具や石を投げるが、当たった側から吸収され、溶かされていく。



「なにか、何かないか……下手なモノは溶かされてしまうし……溶かされない……そうか、アレならイケるか?!」



 何かを閃いたアキラは魔力を練り上げ……手に石を生成した。

 そしてその石をポーンとスライムへ投げ込んだ。



「ちょっと! 石なんて作ってどうすんのよ! 溶かされてダメージなんてないじゃない!」


「まぁ、見てな……きたきたきた! 周囲を守れ!(シルフィオスクール!)! |風花護城《ヴァン・ガルディエーヌ!!》!!」





 ――パァァァアン!!






 先程まで無限に吸収するかと思われたスライムが、まるで空気を入れ過ぎた風船のように――破裂した。





「え? え?」

「あばばばばば、ですぅ!」



「ハーッハッハッハァー! 見たか! これが化学の力よ!」


「クルルルル。な、何が起きたんです?」


「ふふふふ、さっき投げた石はただの石ではない! アルミニウムだ!」




 ――アルミニウム。

 原子番号13、原子量26.98、第13族元素。

 常態では固体の金属で、日本では一円玉を始めとした多種多様の合金にも使用されている。

 軽く、加工しやすく、伝導性も良い。

 しかし単体では酸やアルカリに弱く、容易に"水素"を発生させ溶解する。


 では、爆発は水素が起こしたのか?

 ポイントはそこではなく、至ってシンプルだ。

 それは――体積である。

 生成された水素ガスは、一円玉と同じたった1gで10L以上の空気となる。

 ヒトが2回呼吸する量が約1L、一般的なゴミ袋の容量が45Lだと言えばその恐ろしさが分かるだろう。


 つまり、スライムの中に投げ込まれたアルミニウムの塊は、スライムの酸かアルカリによって化学反応を起こし体内に水素ガスを生成。そしてそのガスの圧力によって、内側から爆発した。



「俺がいた世界でも、密閉したアルミ缶に強塩基の洗剤とか入れて爆発した事故が起きていたよ。いやぁ、咄嗟(とっさ)の思い付きだが上手くいって良かったよ! はははは!」



 単なる思い付きが功を奏しただけの結果に、仁王立ちをしながら得意げに高笑いをするアキラ。

 だが、そうやって油断をしていると……



「ちょっとアンタ!」

「アキラ様危ないです!」



 なんと爆発で無事だったスライムコアが、周辺に残っていた体液を取り込んで身体を再生していた。

 さらに自身を傷付ける元凶となったアキラに襲い掛かる!




 油断していた勇者の危機に身を(てい)して飛び込んだのは――


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