女性が持つ視線感知能力はチートだと思う
「いらっしゃいませ〜」
「「「いらっしゃいませ!」」」
……なんかこう、思ってたの違う。
冒険者の溜まり場って、ウェスタンなスイングドアがあって、中にある酒場では男共が野卑な声をあげているイメージがホラ、ね?
それに職員さんの教育のされ具合が、そこはかとなくブラックな雰囲気を醸し出してるんだけど……
「「「誠実・迅速・正確に、がモットーです!!」」」
「心の中を読まないでくれないかな?!」
「会員の皆様が求めるサービスを提供するための必須技能ですので! もちろん、あなたがココにいらしてまず最初に私の胸から見ていたのも分かっておりますよ?」
「ごほんごほんごほん!! 素晴らしいム……じゃなくて社員教育ですな! そ、それで、登録に来たんだけど、受付はここで大丈夫ですか?」
「はい! こちらになります! ちなみに胸の次は足を舐めつけるように見「わーーー! 見てない! 見てないから!!」……冗談でございますよ?」
「アンタ何しに来たのよ……」
「サイテーですぅ」
◆◆◇◇
「ではまず登録をするにあたって、当機関についてご説明致しますね!」
――冒険者機関。
長いので"機関"とだけ略されて呼ばれており、世界を超えて各地に存在している。
なお、登録自体はどこの支部でも可能であり、情報も共有されているが、如何様にして情報が流れているかも、更には本部が何処にあるかさえ、ほとんどの者には知られていない。
会員ランクは貢献度によって上からプラチナ、ゴールド、シルバー、カッパー、コーブルとなる。
「今回初めての登録ということで、アキラ様はコープルからのスタートとなります。あぁ、心配されなくとも勇者だからといって、特別扱いされませんので大丈夫ですよ。バシバシ討伐して、ドンドンお金を稼いでくださいね」
モンスターを始め、この世の動物は死ぬと結晶を残すので、基本的に討伐証明は必要ない。
ジールを買取所へ持っていけば、その場で現金化できるからだ。
「護衛や採取、雑用などは依頼主によって詳細は異なりますので、その都度受付にお申し付けくださいね!」
もちろん討伐以外にも依頼はある。
結晶が直接関わらない仕事は依頼人と交渉だ。
「各依頼によって達成ポイントが設定されますので、ポイントを貯めてランクを上げてくださいね。ランクが上がれば報酬の高い依頼も受けられますので」
ベテランともなれば国からの依頼も舞い込み、難易度に見合った報酬が得られる。
最高峰であるプラチナランクは現在では三人おり、今も世界のどこかで活躍しているという。
尤も、三人はその実力も相まって国家権力並みの権限を持つので、国も機関もかなり持て余しているようだが。
「簡単な説明は以上になります! はい、アキラ様、ロロル様、リタ様の冒険者カードはこちらになります! あ、アキラ様はそれ以上私に欲情する様なら、へし折りますのでご注意くださいね? 」
一先ず登録を終えたアキラ達は、今夜の宿を取るために街に戻ることにする。
「俺……途中から一切言葉を発しなかったんだけど」
「アンタの頭の中は、普段から煩悩が溢れているということがよく分かったわ」
「ボクも読心スキルほしいですぅー」
◆◆◇◇
機関を後にした一同は、リタの紹介で質素ながらも清潔な宿を取ることができた。
値段はそこそこしたが、女将の作る手料理は絶品だ。
綺麗好きのアキラは、風呂が無いのが残念だったが、野営とは比べ物にならない快適さだ。
ちなみに、アキラは女性とは別室に隔離された。
昼間の態度を見れば当然である。
「いいもんね、俺にはアンさんがいるし。ほーら、ジャーキーだぞ〜」
――トントントン。
「ん? はーい。誰ですか?」
「私ですわ」
「レイナさん?! こんな時間にどうしたんです?」
すでに時間は真夜中近くだ。
妙齢の女性が一人で出歩くには危ない時間帯だ。
疑問だらけのアキラは、念の為にドアを少しだけ開けた。
そこには、相変わらず露出の高い衣装を身につけ、見事な肢体を曝け出したレイナが佇んでいる。
酒が入っているのか、頬が少し赤い。
「ふふふ。昼間見たアキラ君の聖剣、性能が気になっちゃって……眠れないの。お姉さんに見せてくれないかしら?」
抱き合うような近さでアキラに囁きながら、レイナの嫋やかな手がアキラの腕をくすぐった。
咽せるような香水の甘い匂いが漂い、こっちまでクラクラと酔いそうになる。
柔らかい。何がとは言えないが女性の柔らかさに頭が溶けそうだ。
「私、これでも殿方並みに武器の扱いが得意なの。イロイロと教えてあげるわよ?」
――どうやら今夜はまだ眠れそうにないようだ……
◆◆◇◇
――チュンチュン、チチチチ……
「ん……朝か。この世界にもスズメっているん、だ……ってアンさんの鳴き声かよ。今日はインコな気分なの?」
「チッ!」
飼ってたペットなら一通りフォルムチェンジができるようになったアンさんに挨拶を交わすと、身支度を済ませるアキラ。
昨晩の出来事に若干の疲れを感じながら、宿の食堂へ向かう。
「ふあぁぁ〜おはよう、みんな」
「おはよう。あら、今日は三割増しで情けない顔ね」
「パンのヒーローの失敗作みたいな顔です」
アキラの顔はパンパンに腫れ、切り傷も至る所についている。
「君らは相変わらずのようでなによりだよ。今日の予定だけど、機関の依頼にあった、半日ほど歩いた所にある村のモンスター駆除に行くということで問題ないかな?」
「この聖都に卵を供給している村でありますね。きっとこの朝食にも使われているです」
フォークでプレートにある目玉焼きを掲げるリタ。
鶏の卵より二回り以上も大きいが、調味料も無く食べられるほど味がしっかりしていてとても美味しい。
「おぉ、そうなのか。依頼票によると、村で飼ってる香辛鳥と呼ばれる家畜が、ここ最近モンスターに襲われる被害に遭ってるらしい。その原因を排除するのが今回の依頼だな。よし、反対意見がなければ準備して出発だ!」
勇者らしいキチンとした初仕事だ。
レイナさんの徹夜の手ほどきも受けたし、受付嬢の信頼回復のためにも頑張ろう!!




