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妹がヤンデレ過ぎて怖い件について  作者: 所天駄
第四章 本当の婚約者
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88.人は本当のことを言われると怒りやすくなるという


「コレがエリカお嬢様への贈り物ですか。」


タイラーから大きな籠を受け取った老齢と言っても良い年齢の執事は、籠を従者たちに命じてワゴンに乗せ、エリカの部屋の前まで運んだ。


「何の用かしら?」


3回ノックすると、扉が開かれエリカが出て来た。

執事を従者たちは恭しく頭を垂れると、エリカに訪問の目的を告げた。


「ソフィーお嬢様より、エリカお嬢様へ贈り物が届いております。」


ワゴンに乗せられた大きな包み紙を示した。


「ソフィーから?

一体何かしら?」


少し不機嫌そうに首を傾けるエリカ。


「大きな籠の中に、オウムと呼ばれる珍しい鳥が収められております。」


老齢な執事が応える。


籠の両側に立っていた従者たちが、包み紙を解く。


「意地の悪いオネーサンがココに居ますヨぉーーーーっ!!

キャァァァァァァァァっ!! コロサレルーーーーーっ!!

命だけは勘弁してネ。オネーサマっ!!」


途端に大声で叫び出すオウム。


「ちょっ!?

何この口の悪い鳥はっ!?」


エリカが問いかけるも、周囲に居る者たちも顔を歪めながら、耳を塞いでしまう。


「包み紙を被せろっ!!」


執事が大声で命じて、従者が慌てて包み紙で大きな籠を覆うと、ようやく静かになる。


「門番からも、口が悪いオウムであるとの報告が上がっております。」


従者の一人がそう報告する。


「要らないわよっ!

そんな報告っ!!

見れば分かるじゃないっ!!

てゆーか、このオウム自体が要らないわっ!!」


エリカが叫びながら包み紙で覆われた籠を指差す。

すると、籠の中からブツブツとなにやら呟き声が漏れ聞こえてくる。


「意地の悪いオネーサンがココに居ますヨぉーーーーっ!!」

「キャァァァァァァァァっ!! コロサレルーーーーーっ!!」

「命だけは勘弁してネ。オネーサマ。」

「ホォーーーーホッホッホッホッホッホ。私を女王サマとお呼びなさぁーーーい!!」)


これらが延々とエンドレスで繰り返される。


「ソフィーのヤツめぇっ!!

こんな変な言葉を覚えてしまった鳥を我が家から他所へ出してしまえば、悪い噂しかたたないじゃ無いのよっ!!」


ぐぬぬっと唇の端を噛みながら、エリカが策を巡らせようとする。

すると、見えていないはずなのに、オウムが邪魔するかのように畳みかける。


「悪いオネーサマハ、皆を不幸にシマス。」

「悪いオネーサマ、一家離散!」

「悪霊退散! 悪いオネーサマ退散!」

「タイサンタイサンタイサーン! オネーサマコロサレルっ!!

イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーッ!! プッ


変態。」


散々罵った挙句、最後にボソっと呟くように飛び出す爆弾発言。

このオウム、悪意を正確に伝えるための訓練でも受けたのかと疑うほどに、聞く者の心に不快感を与え、苛立たせることに掛けては一流だった。


「誰が変態ですってぇぇぇぇぇぇっ!?」


エリカが籠の中でブツブツ呟いたり、時々大声で悲鳴を上げたりするオウムヘ向かて殴りかかろうとするのを執事と従者が必死で止める。


「お嬢様っ!!

お気を確かにっ!!」

「お嬢様ご乱心っ!!」

「お嬢様お慕い申しておりますっ!!」


なにやら一人だけ変なのが居たようだが、スルーしてエリカがゼーゼーと肩で息をしながら命じた。


「こんな不愉快な鳥は視界に入れておきたく無いわっ!

どこか私の目の届かない場所へ移してちょうだいっ!!」


確かに、このように誰が教え込んだのか分からないが、この屋敷内でお姉様と呼ばれる人物となれば、エリカを連想させても不思議ではないだろう。


そうでなくとも、変な醜聞として噂されたくもない。


オウムの存在が、火の無い所に煙を起こす様な火種となることは、避けなければならないだろう。


「ハっ! 早速、籠ごと移動させます!」


老執事が従者へ片づける様に命じようとした、その時だった。


「エリカお嬢様。

ご学友の方々がお見えです。」


メイドが来客を告げたのだ。


「あら。誰かしら?

今日は特に約束していなかったはずだけど・・・。」


首を傾げるエリカに、メイドが来客のメンバー構成を告げる。


「アドルフ様、クララ様、シャーロット様、スチュアート様でございます。」


いずれも、アーデルハイドの友人や親衛隊メンバーだ。


「分かったわ。通してちょうだい。

その前に、その邪魔な籠をどけてからね!」


従者たちがワゴンを持ち運ぼうとした姿へ、メイドが声を掛ける。


「いえ、お待ちください。

ご学友の方々は、ソフィー様よりエリカお嬢様へ、たいへん珍しく、賢い鳥であるオウムをプレゼントされたと聞いて、見せてもらいに来たと申しております。」


「なんですってぇーーーーっ!?」

「「「なんだってぇーーーーーっ!?」」」


思わず声がハモリそうになりながら、困った事態の訪れに、エリカは頭が真っ白になりプスプスと煙が出ているようだ。


老執事と従者たちも思案に暮れるばかりで、なんら良い考えは出てこない様だ。


「では、お通ししてよろしいでしょうか?」


事情を知らないのか、メイドはそのまま玄関へ向かおうとする。


「ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


エリカが食い止めようとする。


が、名案がある訳でも無い。


「・・・・では、お帰りいただきますか?」


「・・・・ソレも・・・・嫌だわ。」


エリカの頬が心なしか上気しているようにも見受けられるが、珍しく優柔不断な姿を使用人たちの前で晒していることへの気恥ずかしさであろうか。


両手で指とチョンチョンと突くばかりで、一向に答えを出そうとしないエリカの姿に、メイドはそのままスタスタと歩いて去ってしまった。


すると、立ち去ったメイドと入れ替わるようにして、五人がゾロゾロと歩いて来た。


「オウ! 遊びに来たぜっ!」


「エリカさん。オウムという珍しい鳥はどちらですの?」


「お邪魔しまーす。その籠かしら?」


「突然お邪魔してすまない。鳥の研究をしていたら、こちらにオウムが居ると聞かされて、その籠なのかな?」


まさか、廊下で立ち話とも行かないので、急遽談話室サロンへと案内し直して、覆いをかけたままで籠も運び入れた。


「そ、そうなのよ。

急に送られてきて驚いてしまったわ。

ウフフフフフ。」


取り繕った感じが否めないけど、エリカなりに精一杯何事も無かったかの様に振舞って見せている。


「それで?

早速俺たちにも見せてくれよ。」


「そうですわね。」


「わー! 私オウム見るの初めてだわっ!!」


「オウム目オウム科の方だろうか?

それとも、オウム目インコ科か?」


五人ともそれぞれに興味がありそうだから困る。


「ところで、皆、ちょっと、その・・・・

このオウムは困った癖があってね。」


とても言い難そうにエリカが籠を前にしながら、なかなか覆いを外そうとしない。


「どうしたんだ?」


「どこかオウムのお加減でも悪いのかしら?」


「え、病気なの!?」


「・・・・腕の良い獣医でも紹介しようか?」


アドルフ、クララ、シャーロット、スチュアートらがそれぞれ心配そうに聞いて来るから、エリカはもっと困り顔をして、精いっぱい作り笑いを浮かべながら答えた。


「その・・・・ 少々口が悪いのよ・・・・。ハァ。」


溜息と共に、ボソリと呟くように小声で吐き出した。


「「「「え?」」」」


「まあ、見れば分かるわ。」


諦めたかのように、一気に覆いを外して、ソフィーから贈られてきたオウムを衆目に晒した。


「昔々お爺さんと意地悪お婆さんが山で芝刈り、お婆さんオネーサンは遭難して死んでしまいましたとさ。目出度し目出度し。プッ」

「桃から生まれた桃太郎。悪いお婆さんオネーサンを退治しに鬼ヶ島へー!

レッツラゴー!! プッ」

「森の中兄と妹は、意地の悪いお婆サンお姉サンを退治してお金持ちに! プッ」

「意地の悪いオネーサンがココに居ますヨぉーーーーっ!!」

「イヤャァァァァァァァァっ!! コロサレルーーーーーっ!!

オネーサマガ。プッ」


これだけのセリフを一気にマシンガントークの如くに吐き出して見せると、オウムは周囲で見つめている一人一人の顔を見つめながら、時々毒を吐き出していた。


「陰険オネーサマ。プッ」


「何ですってっ!?」


エリカが肩を震わせながら籠をガシっと鷲掴みにする。


「まあまあ、所詮は鳥が意味も解らずにしゃべってるだけじゃないか・・・・」


アドルフがエリカを宥めようとすると。


「ヘタレー! 見掛け倒シー!! 

中身カラッポの根性無シーっ!!」


「こんのクソ鳥めぇっ!!

焼き鳥にして喰っちまうぞっ!!」


今度はアドルフが激高して、オウムの籠をなんとか開けて中からオウムを引きずり出そうと躍起になる。


「あらあら、二人とも冷静にならないと・・・・」


クララが見かねて二人を宥めようとするが。


「根暗女ーっ! ペッチャパイ残念胸ーっ!」


ピキっと何かに罅が入る様な音が聞こえたような気がしたが、きっと気のせいだろう。

しかし、確かにクララのこめかみのあたりには、青筋がクッキリと浮かび上がっているのが見えていた。


「本当に口が悪いオウムなのねー。」


我関せずと傍観していたシャーロットだったが。


「勘違い女ー! ラブレターはチラシーっ!!

プククククっ。

存在感薄いゾ・・・・ プッ」


「っな!?

失礼なっ!!」


整った顔を真っ赤にさせながら、両手の拳をギュっと固く握りしめて怒りを鎮めようとしている様な仕草を繰り返していた。


「それにしても、本当によくこれだけ沢山の言葉を覚えさせたものだな。

感心するよ。」


スチュアートが学術的な好奇心からか、籠の周囲をぐるりと回りながら観察していた。


「・・・・居たの? プッ」


まるで冷笑するかのように、籠の中のオウムがスチュアートに向かって一言だけ発したのだが、直球だったらしく。


「・・・・人が気にしていることをーーーーーっ!!

そりゃ、僕だって好きで副隊長とかやってるんじゃないんだ・・・・。

どうしたって、貴族家では家柄とか爵位とか色々事情があってだな・・・・。」


膝を抱えてブツブツと自分の世界へ入り込んでしまった。

意外と打たれ弱い面があるのかもしれない。


「ともかく、こんな感じで、届いてから1時間も経っておりませんけど、口が悪すぎて困ってるのよっ!!」


もう嫌だとばかりに、包み紙で再度覆いをしてしまうエリカであったが、今度は誰一人として、再度覆いを取り除いて見せてくれと言う者は表れなかった。


覆いが被せられると、薄暗くなって少しだけオウムが大人しくなる様だが、それでもブツブツと罵詈雑言は漏れ出してくる。


「なんとかならんのか?」


「貴方が根性を叩き直してくれるのかしら?」


問いかけるアドルフへエリカが睨みつける様に答える。


「・・・・いや。俺には無理だ。」


お手上げとばかりに、掌を上へ向けて首を振る。

その瞬間を狙いすましたように。


「キャァァァァァァァァっ!! コロサレルーーーーーっ!!」

「命だけは勘弁してネ。オネーサマ。」

「ホォーーーーホッホッホッホッホッホ。私を女王サマとお呼びなさぁーーーい!!」)


ずーっとこんな感じで、とんでもない事ばかりオシャベリして、廊下で控えている屋敷の者たちまで響く大声で鳴く。


あまりにも酷い罵詈雑言の数々に、醜聞になるレベルと判断されて、何処か別の場所へ移そうとすると。


「オネーサマ・・・・。私をお嫌いですノ?

殺すおつもりなのデスネ・・・・。

嫌ァァァァァァァァァァァァァァっ!!」


「なんかこう・・・・イラっと来るわね。

コイツ、判ってて言ってるんじゃないかしら?」


エリカも大分イラついてる。

かなり始末したい衝動に駆られるくらいにはイラつく。


結局、この日はそれぞれの心にオウムが投げつけた言葉がトゲの様にチクチクと刺さりながらも、オウムを退室させ、お茶だけ飲んで解散となった。


来訪者がそれぞれ帰り、応接室でオウムと共に一人残されたエリカは、薄い紙の覆いでは効果も薄いと考えて、遮光カーテンなどに用いる厚手の布を持って来させて、オウムの入っている籠に掛けさせた。


「ソフィーのやつ、直接攻撃できないからって、なにもこんな卑怯な方法で私に心理攻撃を仕掛けて来なくたって良いでしょうにっ!!」


イライラとした様子で、忌々し気に布で覆われたオウムの籠を睨みつける。


ちなみに、来訪者たちに確認したところ、オウムが届けられたことを教えたのもソフィーの息が掛かった者たちからだと確認済みだ。


「・・・・そっちがその気なら、コッチだって・・・・。

爺っ!!」


老齢な執事を呼びつけると、なにやら命じる。

一体どんな反撃をしようというのだろうか。



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