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妹がヤンデレ過ぎて怖い件について  作者: 所天駄
第四章 本当の婚約者
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84.エリカ・リンデンブルグ侯爵令嬢の計画



それは、王都にあるリンデンブルグ侯爵家の屋敷での父と娘の会話から始まった。

娘であるエリカが、その整った眉を上げながら、父である私に吠えて来たのだ。


「お父様。今回は一切の手出しも口出しも無用ですわ。

全て、私一人で差配します。王家にも話しはつけてありますから。」


常であれば、妻のマチルダが側に居て、窘めてくれるのだが、今日に限って茶会に呼ばれたとかで留守にしている。


タイミングも悪かったのだろう。

しかも、あろうことか『王家』の名前まで出して来た。

今回は、いつものような癇癪では済まないかもしれない。


「エリカ・・・・・。

分かった。お前がそこまで言うのであれば、好きにしてみなさい。

その代り、全ての責任は、このリンデンブルグ侯爵家現当主である私が持とう。

但し、二つだけ条件がある。」


娘の暴走を止めるのも父親の責任だろう。

私からも、大事なことを言わせてもらう、


「何でしょうか?」


娘は、何でも来いと言わんばかりに、見事に整った胸を張りながら問う。


「万が一だが、お前が失敗した場合だ。

その場合には、私が認める者と婚約・結婚することを覚悟した上で動くことだ。」


これは譲れない条件だ。


ツバイシュタイン伯爵家とは、婚姻による繋がりは得る計画であり、それは既に進行中でもある。


だが、そこにイレギュラーで長女のエリカが割り込んで来ようとしているのだ。

どうして、そこまでアーデルハイドに拘るのかは判らないが、可能であれば諦めさせたい。


「万が一。いえ、億分の一すら、私の計画に綻びはございませんわ。」


よほど万全の自信があるのだろう。


我が娘ながら、妻や私に似て、貴族の娘として賢く育っていると自慢したいくらいの娘でもある。


それが、根拠のない自信ではないことを祈るばかりではあるが。


「うむ。お前のすぐ下の娘にはすまないが、お前の計画が成功した暁には、私からも詫びを入れ、その上で事後策を考えることとしよう。」


なにせ、既に計画は随分前から進行中で、今更他の者がツバイシュタイン伯爵家に嫁ぐことになったからといって、簡単には許してはくれないだろうがな。


「ええ、せいぜい妹にはアーデルハイドに負けない良い夫を探してやってくださいませ。」


ふふん。とドヤ顔で言うあたり、エリカなりに腹に据えかねていたのかもしれない。

だが、今回は私なりに大幅に譲歩もしている。


「そして、もう一つは、今お前が言った『王家』だが、本当に王家がお前とアーデルハイドの婚約を認めたというのであれば、その証拠を見せることだ。

この二つが、私からの条件だ。」


『王家』が関わるとなれば大事だ。

この時代は、王家がそれなりの権力を集中させようとはしているが、未だに大貴族を中心とした地方貴族たちも大きな力を持っている時代だ。


外敵に対してこそ、協力して防衛にあたろうとはするが、内部では王家を含めて、権力争いやら貴族同士の婚姻やらで結びつきを強めようと言う動きは盛んだ。


エリカがどうやって『王家』との協力関係を作ったのかは不明だが、王都防衛の責任ある侯爵家の娘だ、どこかで王子や王女とそのような密約を結んだのかもしれない。


「では、お父様。

私はこれからルドルフ様とマリーネ様のお茶会にお呼ばれしておりますの。

そこで、お父様へ一筆書いてもらってきますわ。」


「第一王子と第一王女だと・・・・!?」


「ええ。ついでに言えば、第二王子も賛成しておりましてよ。

王子たちは、大分ソフィーにご執心の様子でしたもの。

フフフフ。」


王家どころか、王子と王女の名前が飛び出して来るとは。

余りにも大物過ぎて、実感が湧かなかったが、ソフィーの名を聞いて納得した。


成程、ツバイシュタイン家からソフィーを追い出し、王宮へどちらかの王子へ側室として差し出すことを条件に、自分が正妻としてアーデルハイドに嫁ぐ算段か。


もし、第一王女がアーデルハイドに執心であれば、自らは一歩引いて、側室に収まれば全て丸く納まる。


そこまで計算ずくかは不明だが、エリカのことだ、きっと既に計算の内に入れて行動しているのだろう。


私は、一つ大きなため息を吐くと、今度こそソフィーを庇ってやれないことを心の中で謝罪した。





王都中央の小さな丘の上に一段と高く建てられた城。

これが、この王国のシンボルであり、人々から『隼城ヴァンダーファルケブルグ』と呼ばれている。


その造りから、城を基調とした隼が大きく翼を広げた姿を連想させる見事に左右に広く増改築が重ねられ、地上12階、地下3階建ての巨大な建造物だった。


その城の中にある談話室サロンの一つで、エリカが恭しく頭を下げていた。


「ルドルフ様。マリーネ様。ご機嫌麗しゅう。

今夜はヨーゼフ様は?」


アルザス=ライシテ王国の第一王子と第一王女の二人が、寛いだ姿でエリカを迎えた。


「エリカ。よく来てくれた。」

「待っていたわ。エリカ!

先ずは席へ座って!」


二人とも年齢的には、エリカよりも1,2歳年は下だが、王立学園には一時的にしか通っていなかった。


未だに貴族の権力が強いとはいえ、王家もそれなりに利用価値は高い。


そうなれば、必然的に求婚者やら、権力目当ての者やらで、近づいて来る者に暇が無い。

そんな学園を嫌って、結局二人とも家庭教師を雇って勉強中の身なのだ。

エリカはそんな二人にとって数少ない幼馴染であり、親友の一人であった。


「ヨーゼフは、今夜は遅くなりそうだからって先に寝るって。

貴女にもよろしくって言っていたわ。」


14歳と年若いヨーゼフ王子は、席を外していたが、別段問題は無い。


「そうでしたか。」


そう応じると、エリカは来訪の目的を語りだした。


「それでは、これからのことについて確認ですけれども。」


二人もまた力強く頷き返す。


「うん。」

「ええ。」


エリカも頷き返すと話しを続けた。


「先ず、第一目標は、アーデルハイドと私の婚約発表からです。

前回のレベッカ・ザルツブルグ侯爵令嬢は、事を急ぎ過ぎて失敗しています。

今回は、先にツバイシュタイン伯爵家にも、私からリンデンブルグ侯爵家の名義で書状を送ります。


その後、正式にアーデルハイドへ私との婚約について、正式に告げます。


以前、彼の手元には父親であるコルネリウス様より『正式な婚約者は他に居る』と告げられた密書の内容が、我がリンデンブルグ侯爵家とツバイシュタイン伯爵家双方が交わした正式な密約に基づく婚姻であることも彼に告げます。


その時には、私と腹違いの妹の存在は不要となりますから、後は、お二人の王子のうち、しっかりと協議なされてから側室へお迎えされるなり、愛人として迎えるなり、お好きにしてくださいませ。」


ここまでの説明は、これまでに繰り返し行われたものであり、二人とも異論は無いようだった。


「それから、アーデルハイドと私の婚約についてですが、やはり、マリーネ様がどうしても諦められないようでしたら、私も王家をお護りする立場の人間ですから、そこは一歩引いて側室へ納まることで良しとしましょう。」


この言葉には、マリーネが少しだけすまなそうな顔をしているが、否定はしない。


「あとは、妹のソフィーから反撃がどれくらいあるかは不明ですが、王家と我がリンデンブルグ侯爵家が手を結んで事にあたる以上、像とアリが戦う様なものでしょう。


先のザルツブルグ侯爵家との婚約騒動でさえ、一時的にとはいえ、王都と周辺都市での取引が停止になったり、経済的に大分ダメージを受けてましたから、今回はその比ではないでしょう。


それ以前に、王家の威光に逆らえば、ツバイシュタイン侯爵家とはいえ、独立でもしなければ、終わりでしょうね。


そして、もしも本当に独立なんてしても、帝国と王国という二つの大国に挟まれた小国が誕生するだけですから、やはり、力関係ではこちらが有利なままとなるでしょう。」


ここまでの説明を一気に述べると、二人の顔を見た。


「何度聞いても素晴らしい計画です!」

「そうね! 私もそう思うわっ!!」


どちらも金髪の綺麗に切り揃えられた髪を上下に振りながら、うんうんと何度も頷いていた。


ツバイシュタイン伯爵家とアーデルハイド本人にとっても、逃げ道の無い、完璧な計画を組んだと満足気に。


無論、エリカ本人にとっても、この計画に全てを懸けるつもりで臨んでいる。


― アドルフは、実家の事情で刺された。それならば、やはりここは迷いを捨てて、初心に立ち返るべきなのよ。東部軍管区を統括しているツバイシュタイン伯爵家と王都守護を任されているリンデンブルグ侯爵家。両家が結び付くなら、王国にとっても、双方の家にとっても良縁となる。今までは、お父様が頑なに妹を嫁がせようとしていたけど、今回は王子と王女の協力も得られたのだから、もはや妨げとなることはないだろう。 ―


そんな思いを胸に、アドルフへの想いを捨て、貴族としての選択とソフィーを負かせてアーデルハイドを組み伏せたいとの嗜虐心を優先させた結果がこの計画だった。


「それで・・・・、やはり、私も・・・・その・・。」


言い難そうに、モジモジしながらマリーネがエリカへ向けて視線を送る。


「マリーネ様もまた、アーデルハイドを想ってらっしゃるのですね。」


こくりと素直に頷く2歳年下の王女へ、安心させるように優しく微笑みながら応じた。


「大丈夫ですわ。

マリーネ様がアーデルハイドを夫に望まれるのであれば、私は第二婦人でも構いませんわ。

他にも、数名ばかり、私たちの計画に協力し、尚且つ有用であれば、側室に加えることも

計画の内です。」


「そうね!」


パァーっと顔を輝かせて、嬉しそうに何度も頷くマリーネの姿に、王女とはいえ長年に渡り交流していたため、妹の様に感じていたエリカも嬉しそうに頷き返した。


「そして、ソフィー嬢は、僕の第二婦人か側室の一人として迎え入れれば、王家とツバイシュタイン伯爵家との繋がりも強められるのだから、結果として、双方に利益となるのだから、この計画に死角は無いね。」


ルドルフもまた、計画が必ずや成功すると確信しきった表情で二人へ頷いて見せた。


「それじゃ私たちの計画の成功を祈って、お茶だけど乾杯しましょう!」


「それは良いね。」


「そうですわね。」


マリーネの提案にルドルフとエリカもまた笑顔で応じた。


「「「乾杯プロージット!」」」


古くからの作法に則って、中のお茶が零れないように軽くティーカップを触れさせる程度にカツンとぶつけ合うと、三人は中身を飲み干した。


「いよいよ明日から本格的に動きますわ。」


エリカの宣言に、二人は力強く頷き返した。


こうして、またしてもアーデルハイド本人とソフィーの知らないところでエリカが仕掛けた計画は進行していた。



ここからはエリカのターン!


初登場ですけど王家まで巻き込んでの陰謀となるので、簡単には崩せないかなと。

ソフィーの苦戦とアーデルの戸惑い。

そんな中からの二人の姿が描ければと思いますけど・・・・(汗)


※活動報告の『今後の予定(執筆中) 』を更新しました。

 今回からの執筆中までの敵役(?)を一覧にしてみました。

 一応こちらにも書いておきます。



これからのタイムテーブル(執筆予定込み)


1.アーデルハイド親衛隊・悪役令嬢との抗争

  (1) シャーロット辺境伯令嬢

  (2) 二人の伯爵令嬢(ティファニー&イヴォンヌ・共闘)

  (3) ガエラ・フォン・インテグラ辺境伯令嬢

     (シンシア・フォン・ラウエンブルグ辺境伯令嬢・共闘)

  (4) レベッカ・フォン・ザルツブルグ侯爵令嬢

  (5) エリカ・フォン・リンデンブルグ侯爵令嬢 ←執筆中


2.学園行事(最後まで書けるかは未定ですけど:汗)

  9月 舞踏発表会(終了)

 10月 学園祭 ← 進行中

 11月 実力テスト期間(アドルフ襲撃事件)

 12月 冬季休暇(約一か月/クリスマス休暇的な)

  1月 

  2月 バレンタイン的な。

  3月 卒業式(プロム・成績上位者にはカレッジリング)



※予定は往々にして~

 急に変更(気が変わること)もアリかと





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