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妹がヤンデレ過ぎて怖い件について  作者: 所天駄
第四章 本当の婚約者
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81.まどろみのなかで①



レベッカとの婚約騒動も終わり、学期末考査の結果は、1位クララ、2位エリカ、3位僕、4位レベッカ、5位アドルフという結果で終わった。


アドルフの奴は、すごく悔しそうにしていたけど、試験前に襲撃されて負傷してしまい、それでも傷が癒える前に試験へ臨んだのだから、根性の結果の5位なのだろう。


試験と試験休みが終わると、後は冬季休業期間まで少しの間、消化試合の様に授業が幾つか残っているだけという、比較的平穏な日常が戻って来た。


ちなみに、伯爵領と帝国の紛争については、なんとも締まらない結末を迎えて手打ちとなったそうだ。


攻めて来たはずのグルドゥ伯爵は、味方のはずのロムネス辺境伯からの支援も受けられず、初戦以降動かず、結局しばらくの間陣を張っただけで、補給が受けられない為に引き上げてしまったという。


父上からは「一体何がしたかったのだろうか」と、愚痴とも思われる手紙での報告を頂いた。


まあ、帝国側の思惑なんて王国の王都に居る僕にまで分かる様なものでは無いとは思うけど、なんとなく、グルドゥ伯爵は思い付きで行動した様に見えた。


そして、僕たちは日常生活の中へ戻っていた。




今日は、土曜日だから学園は休みだ。

朝からゆっくりとしていられるな。

よし、誰かが起こしに来るまでもう少し寝ていよう・・・・。

ZZZZzzzzzzz・・・・グゥ。


最近は、仔猫から大分成長して来たクレオに叩き起こされる心配も減ったし、朝起きるとソフィーが布団に一緒に入っていることも少なくなったかな?


僕は、心地良いまどろみのなかでうつらうつらとそんなことをボンヤリとした頭の中で考えていた。


そこへ。


「お兄様ーっ!!」


ソフィーだ。


「おいおい、今日は土曜日だぞ・・・・せめて、もう少しゆっくりとだな・・・・。

ムニャムニャ・・・・。


zzzZZZ。」


完全に眠気が覚める気配も無く、僕は再び意識を手放して再び眠りに就こうとしていた。


「お・に・い・さ・ま?

今日は何の日でしたかしら・・・・?

お忘れですの・・・・?」


あれ?


今日?


今日は、土曜日だよね?

他に何かあったかな?


うーーーーん。


思い出せない。


「土曜日だろ・・・・?」


寝返りを打ちながらソフィーへ寝ぼけ眼でそう告げる。


「・・・・そぉーーーーでぇすのぉ・・・・。」


アレ?


なんか、盛大に踏み抜いちゃダメな部分を踏み抜いてしまった様な・・・・?


「・・・・。」


ソフィーの瞳から完全に光が消え、代わりに爛々と赤い不気味な光が右目に宿っているような気がする。


「セイっ!!」


短い掛け声とともに、一瞬前まで頭を置いていた僕の枕が刺し貫かれる。


「わっ!?

危なっ!!

何てモノを振り回してるんだぁぁぁぁぁっ!!」


ソフィーの向ける殺気のお陰で、0.001秒ほどで僕の眠気は完全に消し飛んだ。

そればかりか、命が危険に晒された時のアドレナリン効果か感覚が研ぎ澄まされ、ソフィーが攻撃に移るのとほぼ同時で身を躱すことが出来た。


「あら。お兄様。オハヨウゴザイマス。

ちなみにこれでしたら、大太刀おおたちと言って、東洋の刀ですわ。

レベッカさんから友情の印に貰いましたの。」


そう告げるソフィーの右手には、見事な大太刀と呼ばれる東洋の刀が握られていた。

西洋刀と違って、柳葉の様に薄く研ぎ澄まされた大太刀は、光を浴びて怪しく輝いていた。


「名をムラサメと言う妖刀ですって。

ウフフ。」


いや、怪しい光りまで帯びていて怖いからっ!!


ソフィーの美しく儚げな容姿と妖刀の不気味な光が合わさって、何とも幻想的な艶美さを生み出してはいるけど、コレって滅びの美しさとか、ソッチ系の美しさだよね。


「朝から人を殺そうとするなよっ!!」


思わず叫び声を上げて抗議してしまった。


「あら、お兄様ったら、朝から大声を上げて、お元気ですこと。

何か良いことでもありまして?」


涼しい顔で問いかけるソフィー。


「お前のせいだろうがっ!!」


尚も声を荒げて噛付く僕を、柳に風とばかりにやり過ごすソフィー。


「まあまあ、私との思い出の日を忘れてしまう薄情なお兄様なんて、知りませんわ。

ですから、この手に掛けて、私もご一緒しようかしらと思いましたのに・・・・。」


「え? 思い出の日・・・・?」


なにたら不穏な言葉がちりばめられている気がするけど、ソレを躱すためには第一の謎ワードを解き明かさないと先へ進めない。


「・・・・お兄様。

本当に覚えておられませんこと?」


だから、首をカックンと90度に糸が切れたマリオ人形・ネットみたいにするのは止めて欲しい。


それでもって、少しだけ愁いを帯びたように涙が零れているのは、気のせいだろうか?


ついでに、顔にシャドーを張り付けて、先程一旦下へ向けていた大太刀を僕の心臓目掛けて向け直さないでくれ。


これはアレだ。


答えを間違えると一瞬で命が奪われてしまうパターンだ。


どうしよう・・・・。


「ソフィー・・・・。」


「・・・・。」



ダメだ。


攻撃衝動へ意識が全て向けられていて、僕との会話すら拒んでしまっている。


「もしかして・・・・。」


ジリっと僕へ足を摺り寄せるソフィー。


コレって間合いに入れるつもりだよね。


次の瞬間、ソフィーの流麗な顔が一瞬床へ沈むほどに、カクンっと重心が下がったかと思ったら、僕の心臓目掛けて大太刀を構えたまま突撃して来た。


「・・・・思い出したからっ!!

アレは僕が6歳の頃だろ?

ソフィーが4歳でっ!!」


ピタっとソフィーの動きが止まる。

大太刀はといえば、僕の心臓まであと1mmの所で止まっていた。


お陰でナイトガウンとナイトウエアは裂けてしまって、素肌まであと1mmのところに大太刀が向けられた姿勢だったけどね。


「そうですわっ!!

もう、お兄様ったらイジワルなんですから。

プンプン」


ちょっと待て。

被害者は僕の方で、ソフィーは加害者だよね?


僕の頭の中の巨大なハテナマークを無視するように、ソフィーが僕へ向かってしな垂れかかって来た。


あれ、大太刀は何処へ消えてしまったんだろうか。

そして、ポロポロと零れ堕ちて罪悪感を誘った涙は?

毎回思うんだけど、女の涙は自由自在に引っ込むものなのだろうかと。


「あれは、私が4歳の頃。アーデルお兄様が可愛らしい6歳の頃でしたわね・・・・。」



うっとりと思い出に浸ってしまうソフィー。

僕だけ置いてけぼりかいっ!





それは、僕が6歳、ソフィーが4歳の頃だった。


実は、僕たち兄妹は、それほど仲が良いわけでは無かった。

むしろ、お互い敵対と言っても良いほどに仲が悪かった。


実は、当時僕の下に5歳年の離れたバイエルという弟が産まれて、母上が忙しくなってしまい、僕は淋しい思いをすることが多かった。


父上は当時も変わらず忙しい方であり、僕たち子どもたちの面倒は、それぞれの母親や執事、メイドたちと屋敷の者たちが見ることが多く、奉公人と家族ではやはり遠慮もあって、生まれた時から次期当主と言われている僕なども疎外感を感じることが多かった。


ソフィーはと言えば、そんな僕を眼中にも入れようとせず、無視したり、避けられることが多くて、正直嫌いだった。


食事もそれぞれに別々に食べたり、遊ぶ時だって、僕が外へ出ればソフィーは屋敷の中か自室へ籠てしまい、僕が自室や屋敷内で過ごそうとすれば、狙ったかの様に屋敷の外で遊ぼうとする。


どうしてそこまで避けられるのか、僕にはサッパリ分からなくって、そんな妹のソフィーを僕も苦手意識を持ってしまい、いつしか嫌うようになっていた。


まあ、子どもの気持ちなんて単純で、一緒に遊べば仲良くなり、避けられれば嫌われていると感じる。


そんな感じで、6歳の頃の僕は、ソフィーが嫌いだった。





「セバス。アイツは居ないかい?」


「ハイ。坊ちゃま。

しかし、アイツなどと妹君をお呼びになるのは、感心しませんぞ。

ソフィー様は、アーデル坊ちゃまの妹君なのですから、お名前で呼びますように。」


50代半ばと思われる逆三角形体系の執事長が、恭しく僕を窘める。


「・・・・だってぇ・・・・。

判った。

ちゃんと名前で呼ぶようにするよ。」


鋭い眼光に刺し貫かれる様に見つめられると、6歳児では太刀打ち出来ない。

場をやり過ごすためにも、ここは同意しておこう。


「ソフィー様でしたら、先程カーミラと一緒に外へ出ましたわ。」


メイド長のエカテリーヌが告げる。


「そうか、判った。

それならば、僕は自室で過ごすよ。」


二人が目を合わせて、不服そうにするのがチラリと視界に入ったけど、気付かなかったフリをする。


「お茶の時間が来たら、僕の部屋まで運ばせてね。」


そう告げると、僕はスタスタと2階にある自室へ向かって歩き出した。


「アーデル坊ちゃまとソフィーお嬢様。

なんとかなりませんかねぇ・・・・。」


「このままでは、お二人はまるで水と油の様な関係になってしまいますな・・・・。」


後ろから、執事長のセバスとメイド頭のエカテリーヌの声が聞こえたけど、アイツが勝手に僕を避けているだけなんだから、仕方が無いじゃないか。


最初の頃は、僕から色々と声も掛けたし、遊ぼうともしたんだけど、その全てを断られて、そればかりかまるで僕を怖がるかのように避けるソフィーの姿に、僕も堪忍袋の緒が切れてしまった。


父上や母上が一緒の時には、ソフィーはまるで猫を被るかのように、僕の隣に居ても平気そうな顔をするくせに、二人になろうとすると逃げてしまうのだから、訳が分からなかった。





子どもが使う言葉じゃないかもしれないけど、まるで冷戦状態の様な僕とソフィーの関係は、しばらく進展すら無かった。


それが、ある日を境に急転してしまったから事実は小説よりも奇なりという言葉は本当なのだろう。


お互いの印象が最悪な僕とソフィーだったけど、その日、たまたま僕が談話室サロンでうたた寝してしまった時だった。


「ふわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ。

昼ごはん食べすぎちゃったかな・・・・・。

このままソファーでボケっと・・・・・ グゥ。」





6歳児に冷静な判断とか、計画性なんて求められても困るもので、ソファーで少し休んだら、それから遊ぼうと思っていた僕は、いつの間にか眠りについてしまったらしく、気が付いたら大事に巻き込まれていたらしい。


「キャァァァァァァァァァァッ!!」


気持ち良くソファーの上で昼寝中の僕の耳に、突然絹を裂くようなメイドの張り上げた悲鳴が耳朶を打った。


「ソフィーお嬢様っ!!

一体なんの真似ですかっ!?」


メイドの叫び声を聞いて駆けつけたらしい執事の声が響く。


お待たせしてしまい、すみませんでした。

毎日アクセスしてくださる方々がおられるだけでも、励ましになります。

ブックマークも加えていただき、ありがとうございます。


第四章スタートです。


書き溜めていないので、少しずつの更新になるかと思われます。


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