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妹がヤンデレ過ぎて怖い件について  作者: 所天駄
第三章 レベッカ・ザルツブルグ侯爵令嬢との婚約騒動!?
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80.レベッカ嬢との婚約騒動の結末 ― ソフィー会長就任 ―



「先ずは、その『学園公認の婚約者』という点についてですけれども・・・・。」


ソフィーが仕掛ける。


「何故、副学園長の名前なのでしょう?

通常であれば、そのような重大事は学園長の名の下で行われるべきではございませんこと?」


言われてみれば、確かに。

僕が見かけた掲示板にあった告知文には、オーバーアムト・マートス副学長の名前は書かれていたけれども、学園長のクラテス・デュ・バスチーユ公爵の名は記されていなかった。


「それでしたら、理由は簡単ですわ。


来年の春には、学園長が変わっていても不思議ではございませんでしょう?

現在の学園長は、ご高齢で70歳近くですもの。

副学長は、60歳近くとはいえ、未だにご壮健ですもの。


そろそろ、学園も新たな時代を迎えることでしょうから、次期学長との声も高いマートス副学長に結婚式の時には立会人をお願いしたいと考えておりましたのよ。

そうしたら、喜んで引き受けてくださいましたの。」


成程、ザルツブルグ家の威光の下で、学園長を引きずり降ろして、自分たちの影響下にある副学長を据えようと言う計画が水面下で進んでいるようだな。


「分かりましたわ。」


ソフィーがアッサリと引き下がる。


え?


まさか、これで終わりじゃないよね?

僕がそう思っていたら。


「では、お兄様へ告げられた『両家同意の下での婚約』とは?」


それは、僕も一番気になっていた。


思わず身を乗り出して聞き耳を立てている僕の姿を見た二人が、同時にクスっと笑ったのには、ちょっと傷付いたけど。


「それにつきましては、言葉通りですわ。

我がザルツブルグ家とアーデルさんのツバイシュタイン家。

両家の同意の下での婚約であると言えますわ。」


レベッカは、後ろめたいことなど何も無いかの様に、キッパリと断言して見せた。

その態度に、逆に僕の方が不安になってしまった。


以前、父上より『お前の婚約者については、既に決めてある。

成人までは伏せるが、惑わされないように。』との密書を受けたことだ。


すると、やはりレベッカこそが、僕の婚約者だというのが本当で、彼女はそれを知っていたのだろうか。


「ウフフフフフッ。」


ソフィーが心から愉快と言わんばかりに、笑っている。


ハテ?


レベッカが何か可笑しなことでも言ったのだろうか?


「そうですの。

まあ、良いですわ。

私ばかりが質問しては、不公平ですわね。

そちらからも、聞きたいことがあるのではございませんこと?」


え?


僕だけが置き去りにされたまま、会話が進んでいるような気が?


「そうですわね。

先ずは、どうやって原材料を揃えましたの?

王都や周辺都市からは不可能でしたでしょう?」


おーい?

僕の疑問は・・・・・。


レベッカの疑問に、ソフィーもまた軽く応える。


「あら?

それも簡単に解消しましたわ。


最初は伯爵領から必要な原材料を追加で運ばせて、後は、王都と周辺にある農家から直接仕入れましたの。


商会やら個人商を通すと、手数料やら仕入れ値とか色々とコストが掛かりますでしょう?

農家から直接なら、ザルツブルグ家の威光も届かなかったみたいでしてよ?」


ぐぬぬぬぬと、オルティアと初老の執事が悔しそうに奥歯を噛みしめているのが、傍目で見ても良く分かる。


「そうでしたの。

流石はソフィーさんね。

それなら、確かに商人の出る幕はございませんものね。」


意外にもレベッカは、涼しい顔だ。


「ええ。」


ソフィーもまた、穏やかに返す。

既に、二人の中では決着が付いているのではないだろうか。


「では、あれ程に大量の新作やらスイーツはどこで製作されていましたの?」


「あれも、種明かしは簡単ですわ。

原材料を提供してくれた農家でも、手の空いた人手があれば、こちらで提示したレシピ通りにお菓子を作成してくれれば、買い上げると契約しましたの。

その代り、勝手にレシピや品を横流しすれば、契約違反でペナルティを被ってもらう条件ですけれどもね。


この時期は、厳寒期へ向けて農家さんは収入が減りますでしょう?

どちらでも、喜んで引き受けてくださいましたわ。」


そういうカラクリだったのか!?


王国内にある広大な土地によって、気候は若干異なるけれども、王都や周辺都市では、11月といえば農閑期と言われる策も血が育ちにくい気候となる。


その時期を利用して、仕事や収入が減る農家さんに、ソフィーは副収入が手に入る仕事を持ち掛けたのだ。


「成程。

その発想はありませんでしたわね・・・・。」


レベッカが少しだけ悔しそうな顔をした。


「だから、あれ程の大量のプチ・ガトーを短期間で・・・・・。

全ての味が異なるホールケーキも・・・・・・・負けですね。」


先程まで歯噛みしていたオルティアもポツリと呟いた。

ここまでほぼ空気なのは、僕と執事たちだけだな。


「さあ、ここまで言えば、後はもうお分かりでしょう?」


ソフィーがむしろ優しい口調でレベッカを見つめる。


「まだ・・・・ 学長選の結果だって出ておりませんわ・・・・。」


大勢は決したと思われるけど、来年の春に行われるという学長選へ希望を繋げようとする。


「それでしたら、副学長は今期一杯で辞任されることが先日行われた理事会で決定済みでしてよ?


貴女から渡された学長選へ向けた準備金を派手にバラ撒いて、票集めしていたみたいですけど、贈収賄の疑いで今朝逮捕されましたの。


知りませんでしたの?」


「そんな・・・・!?

まさかっ!?」


レベッカが驚愕に見開かれた目をソフィーへ向けるが、ショックでガックリとソファーへへたり込んでしまう。


「資金は渡していたけど、それがまさか不正流用されるとは想定しておられなかったのかしら?」


「・・・・ええ。


だって、副学長は、私に向かって『今の学園は腐敗している。学長が一番の汚染源で、選挙の度に裏金をバラ撒いている。証拠を掴むためには、内偵が必要だ。その為に雇う人々の給料にするつもりだ。』って・・・・。


だから、私は『ドライローゼス商店』での稼ぎから、副学長に資金を・・・・。

これでは、私の方が裏金の資金源に利用されていたということじゃないっ!?」


ソフィーの問いかけに、レベッカは憔悴し切った表情で応えた。

隣に座っていた二人もまた同様に頷くばかりだ。


「そう・・・・。

それでしたら、私がレベッカさんを助けてあげられるかもしれませんわね?」


「え?」


地獄で仏。


溺れる者は藁をも掴むと言うが、ソフィーという藁は、本当に救いを齎してくれるのだろうか。


横で聞いている僕でも疑問を感じるけど、今のレベッカでは選択肢何て無いだろうな。


「その代り、条件があります。」


やっぱり。


そんな感じで、ザルツブルグ家の面々が恨みがましくソフィーを見つめる。


「・・・・申し出はありがたいのですが・・・・、あまりご無体な条件ですと、我々も黙って聞いてばかりもおられませんぞ。」


今まで空気だった初老の執事が精一杯の威厳を保つように横から口を出して来た。


「爺っ!」

「しかし、お嬢様っ!!」


レベッカがたしなめるも、聞こうとはしない。


「あら。そう難しいことではございませんわ。

ポール。」


横に座っていた我が家の執事長ポールが、恭しく紙を出して来た。


「これは・・・・?」


「誓約書ですわ。」


驚いたことに、この会談が始まる前から用意してあったのか。

そこには、本人が署名するだけで完成するように、こう書かれていた。


『今回の騒動の全ては、副学長であるオーバーアムト・マートス伯爵の策略であり、裏金疑惑、婚約も含めて私、レベッカ・ザルツブルグは知らなかった事を告白します。つきましては、騒動の一端に関わってしまったとはいえ、多くの方々へご迷惑をお掛けしたことをお詫びして、アーデルハイド・ツバイシュタイン様との婚約の破棄、及び、同親衛隊会長の座を降り、ソフィー・ザルツブルグ嬢へ譲ることをお約束します。  ―  (署名) ― 』


「内容は簡単ですわ。

このような内容ですもの。

難しくはありませんでしょう?」


いつの間にやら、全てはソフィーの手の平の上で踊らされていたようだ。


「分かりましたわ。

どうやら、残念だけどソフィーさんには敵わなかったようね。」


レベッカもまた諦めたように素直に署名に応じた。

あれ、でもそれって・・・・・。


ソフィーが僕の『親衛隊』の会長になってしまったってことか!?


僕の想像の斜め上どころか、正面から堂々とぶち抜いて、想像なんて代物を軽々と打ち壊してくれるとは、我が妹ながらソフィーの発想は僕の及ばない処まで行っちゃってるみたいで、やっぱりある意味怖いな。


「さあ、これで私からの用事は済みましたわ。

レベッカさん。今回は以前の約束通り『期待を裏切らない』でくださって嬉しかったですわ。」


この一言を聞いたレベッカは、一瞬目を見開いたけど、逡巡の後、ニッコリと頬笑みで返した。


「ええ。覚えていてくださって、私も嬉しいですわ。

楽しんで頂けましたかしら?」


「ええ。とっても。

ですから、これからも良いお友達でいましょうね。」


「お友達・・・・ですか。」


「ええ。私に向かって正々堂々と宣戦布告までして、ここまでお互いに知略の限りを尽くせたのですもの、これからも仲良くしたいですわ。」


棘も無く、真っすぐな瞳でそう告げるソフィーへ、レベッカもまた、肩の力が抜けたのか、ふわりと柔らかな微笑みで応じた。


「ええ。これからもお願いしますわ。」


そう言うと、ザルツブルグ家の面々は退室して行った。


なんとなくだけど、女性同士でないと分からない様なやりとりがあったように感じられたけど、僕には疑問しか残らなかった。





ちなみに、「蛇足ですけど~」と言って明かしてくれた補足説明によると、レベッカが正式な婚約者では無いことを理由は明かしてくれなかったけど、ソフィーは最初から見抜いていたらしい。


その代りその事実を解き明かす方法は明かしてくれた。


『プロネシス商会』で販売する製品の原材料を大量に追加発注した時には、既に国境沿いで紛争は起きていた。


でも、そんな事を気にするソフィーでは無かったのだ。


ちゃっかりと、父上へ宛てて『レベッカ嬢との婚約を両家で認めたのか?』と質問したというから、僕よりも大胆だ。


父上からの返答は『本人が結婚したいと言っているなら構わないが、正妻には先約が居ると伝えるように。』とだけ記されていたそうだ。


その意味では、レベッカが言った言葉は本当で、当人同士が了解していれば、『両家が同意している』と言えたのだろう。


こうして、レベッカ嬢と僕の婚約騒動は、副学長の辞任とソフィーが『アーデルハイド新鋭隊』会長就任という意外な結末で幕を閉じられてしまった。




少し長かったザルツブルグ侯爵令嬢レベッカとの婚約騒動も結末を迎えることが出来ました。


初めて『陰謀らしい陰謀』を書いてみたと作者は思っておりますが、読者の皆様にはご満足いただけましたでしょうか?


穴だらけだったりすると思いますけど、「頑張った!」「マシになった!」「良かった!」と思っていただけたら、ブクマ&評価をポチっとしていただけると、燃料になります。


これまでのブクマ&評価も本当にありがとうございます。

とても励ましになってます。

(`・ω・´)ゞ


ちなみに、次から第四章の予定です。

第四章でアドルフを襲撃した実家の家庭事情と絡めながら書く予定です。



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