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妹がヤンデレ過ぎて怖い件について  作者: 所天駄
第三章 レベッカ・ザルツブルグ侯爵令嬢との婚約騒動!?
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79.大事なものは保管♡



一方のザルツブルグ家では、当然ながら続々と齎されるソフィーからの反撃の報せに、レベッカやオルティアが目を白黒させていた。


「『プロネシス商会』王都本店では、以前よりも来客数が増加し続けておりますっ!」

「先日行われた限定品、サプライズ・イベントや定期的に行われているケーキ・バイキングが集客効果を高めている模様ですっ!!」

「王都周辺店舗でも、同様に各店舗限定品が続々と投入されている模様ですっ!」

「マッチョ軍団は、テスト休業を利用して、周辺都市を巡回してはサプライズ・イベントに参加し続けている模様ですっ!! マッチョ止まりませんっ!!」


マッチョはともかくとして、アドルフが刺された日は丁度試験の最終日で、翌日からは約二週間の試験休み期間だったのは、不幸中の幸いだったのだろう。


レベッカやオルティアにしてみれば、ある程度はソフィーが反撃してくることを想定して、対策も立てていたし『ドライアド商店』でも、新商品を投入してはいたのだ。


だが、それは『幾つかの店舗で、原材料の限られた中からの細やかな新商品発表やイベントなど』を想定しており、矢継ぎ早に全店舗で展開されるなどとは、予想すら出来ていなかったのだ。


しかも、イベントも次々と繰り広げられ、把握し切れてさえいないのが現状だ。


「一体・・・・ 一体原材料を何処から仕入れているというのかしら?」

「それが、不明なのです。お嬢様。まさか、閉店期間中に伯爵領から仕入れたにしても、現在進行形で販売され続けている商品の種類や販売数から推測しても、計算が合いません。」


ザルツブルグ侯爵が商部廠大臣として、王都を中心に隠然たる影響力を持ち、その威光に恐れをなした多くの者たちが、現時点で『プロネシス商会』との取引を停止したままである事に変化は無い。


にも関わらず、『プロネシス商会』ではこれまでの休止期間中が嘘の様に、大量の商品が店頭には並び、新商品が次々と発売され、イベントを行う体力まである。


どれ一つを取っても、レベッカには理解不能な事ばかりだった。


「そういえば・・・・ アーデル様は・・・・?」

「まさかっ!?」


不意に心配になったレベッカの呟きに、オルティアが不安気に応じる。

ソフィーの反撃続きに、嫌な予感しかしなかったのだろう。





その頃の、王都伯爵邸では・・・・。


「あのー・・・・・ ソフィーさんや?」


「何かしら?

アーデルお兄様♡」


「うん・・・・・。

その・・・・・・・・。

この檻から出してくれないかなー?」


「駄目ですわ♡」


「ですよねー・・・・・。」


僕はしっかりと、監獄の中へ収監されていた。


「でも・・・・、なんでこのタイミングなんだい?」


「あら?

簡単ですわ。


これまでは、レベッカ様の目を一度お兄様から離す必要がございましたの。

今は、私の反撃で手が一杯でしょうから、一時的とはいえお兄様から引き離すことに成功しましたわ♡


そして、お兄様が私の所に居ると知られれば、きっと取り戻そうとされるでしょう?


大事なものは、ちゃんと大切に保管しておかないと、奪われてしまいますわ。

ですから、今がその時なのでしてよ?」


うん。


理路整然と相変わらず訳の分からない理屈をこねるなぁ。

前半部分はなんとなく分かりそうだけど、後半からはやっぱり理解不能だ。


まあでも、今回は拘束されていないだけマシかな。


前回は全身拘束具でガチガチに固められて、手足すら自由に動かせなかったっけ・・・・。


「お兄様。

今回は、一つだけお聞かせ頂ければ、ここから出して差し上げても構いませんわ。」


おや?


これまでのソフィーとは違う様子だ。

やはり、経験は人を成長させるのだろう。

きっとソフィーだって、いつまでも僕に拘るのではなく・・・・?

期待と不安を綯交ぜにして聞いてみた。


「なんだい、言ってごらん?」


「以前お兄様が、私に全身全霊を委ねると言ったとき、あれは、本心からでしたか?

私には、あの時のお兄様が、嘘をついているようには見えませんでしたもの・・・・。」


僕が、訳も分からずに全身拘束され、3日間閉じ込められていたあの時のことか。


「ああ。あれは心からの本心だよ。

でも、だからって、直ぐにソフィーとどうこうという関係になりたい訳じゃ無いんだ。

僕にとって、ソフィーは大切な、・・・・大切な・・・・・。」


溢れてしまいそうになる感情。


「私は、『大切な』・・・・?」


首を傾げて問うてくるソフィー。

でも、今は駄目だ。


「うん。

今は、妹。

なんだ。」


万感の想いを込めてもそれだけ言うのが精一杯だった。

でも、これが偽らざる本心なのだから。


「だから・・・・。

今は、事の顛末を見届けさせてはくれないかい?

きっと、ソフィーのことだから、僕が居なくてもベレッカとの決着を付けるとは思うけど、僕も当事者としてキチンと見届けたいんだ。」


珍しく、ソフィーが会話の途中から大人しくなり、耳まで真っ赤にさせてモジモジしていた。


「もう。アーデルお兄様ったら!」


「?」


何かおかしなことを言ったかな?

今回は、狂戦姫化バーサクモードしなくても平和裏に解決できそうかな?


そう思っているところへ、レベッカたちがやって来たと報せが来た。


「お嬢様。ザルツブルグ家の方々がお見えです。」


「ありがとう。ミラ。

応接室で待たせて頂戴。

お茶菓子も忘れずに出してあげてね?」


「畏まりました。」


恭しく一礼すると、白髪頭のメイドは地下牢のある部屋から出て行った。





僕が本心を打ち明けたせいか、ソフィーは約束通り牢獄から出してくれた。

そして、今、僕たちは王都伯爵邸にある応接室でレベッカとオルティア、初老の執事の三人とテーブルとティーセットを挟んで対峙していた。


伯爵家からは、僕とソフィー、執事長のポールが同席している。


「それで、本日はどのようなご用件でして?

レベッカ様。」


ソフィーが口元に笑みを浮かべて、余裕の表情で尋ねる。

対するレベッカも決してゆとりの無い訳では無いけれども、ソフィーよりはやや劣って見えてしまうのは、身贔屓だけだろうか?


「そうですわね。これから先のアーデルさんと私の関係について、かしら?」


ソフィーの右眉がピクリと少しだけ反応した。


「僕との関係について・・・・?」


「ええ、現在は学園公認の婚約者という立場ですけれども、具体的にいつ頃結婚するかということについてですわ。」


「け・・・・結婚っ!?」


眼鏡を掛けている時のレベッカは『図書館眼鏡女』とか『厚底眼鏡不細工』などと散々な陰口を叩かれていたけれども、最近の彼女はトレードマークの厚底眼鏡を外し、三つ編みを解いて背中まであるオレンジ色の美しい髪を棚引かせて、美しさが迸る様な風格を持っている。


そんな美女からストレートに「結婚」の二文字で返されてしまい、僕が面食らってしまった。


「そうですわ。

アーデルさん♡」


破壊力のある言葉に、僕はクラっと来てしまった。


「コホン。そのことですけれども、私から幾つか確認したいことがございますの。」


ソフィーが横から口を挟んできた。

どうやら、会話の主導権を握り直すつもりみたいだけど、大丈夫かな?


「まあ。なにかしら。

なんでもどうぞ?」


レベッカも余裕の表情で、「ふふふっ」と口元に笑みを浮かべて応じる。

ここに、女の戦いの火蓋が切って落とされたようだ。





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