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妹がヤンデレ過ぎて怖い件について  作者: 所天駄
第三章 レベッカ・ザルツブルグ侯爵令嬢との婚約騒動!?
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77.まさかのマッチョ逆襲! ― 掛け声は「キレてる!」「ナイスバルグ!」 ―

突然見て「アレ?」と思った方へ。

作品間違えておりません。


このお話しは「妹がヤンデレ過ぎて怖い件について」の続きです。

ご安心して(?)お読みください。




ここ最近、王都や周辺都市では、双白百合印クロスリリーが目印となった『プロネシス商会』は売り上げ減が続いていて、原材料の入手が難しかったりして休業状態だった店舗も目立っていた。


代わりに目立ち始めていたのが、新興勢力である『ドライローゼス商店』だった。


『プロネシス商会』に対抗するかのように、三つの薔薇を印として、瞬く間に王都と周辺都市へ支店を展開し、『自然食品』や『健康食品』などを中心として、売り上げを伸ばし、立地も狙いすましたかのように商会の店舗近くへ建てたりしていたので、大打撃を与えることに成功していたのだった。


このままでは、夜逃げ同然に店舗を閉めて、経営規模を縮小するか、どこか大手の同業他社へ身売りするかと思われていた『プロネシス商会』の命運は、風前の灯かと思われていた。


ところが、そんな状態がしばらく続いたと思っていたら、突然、王都を中心に『プロネシス商会』の全ての店舗が、反転攻勢に出て来たのだ。


「いらしゃいませーーーーっ!!

新商品の『プロテイン』でーす!!

古代グリーク文明の頃からタンパク質を意味する言葉で有名な『proteína=第一の』から命名された『プロテイン』でーす!!」


「今日から全国一斉新発売でーす!!

食べやすくホエイタイプとカゼインタイプの二種類がありまーす!」


可愛らしい売り子の呼び声と共に、周囲にはやたらと上半身裸でムキムキした男子学生の姿が目立っている。


「ポージング!」


全身の筋肉がこれでもかと言わんばかりに際立つ。


「マッスルっ!!」


迸る汗がキラキラと輝きを放ちながら飛び散る。


「アメージングっ!」


なんだか、自己陶酔に浸っている様な気もするが、彼らの眼中には筋肉以外は目に入らない様だ。


「グレイッ!」


よくは分からないけれども、すごく暑苦しい。

というか、マッチョ。


それでも、怖いもの見たさか、店頭に並ぶ品を見に紳士が一人近づいて来た。


「ほほう、新商品ですか・・・・。」


「ハイっ! 如何ですか、試食用にマドレーヌに入れて焼いた物がこちらにございます。

約一か月継続して食べて頂ければ、運動の効果もあって、ご覧の様に!」


そばかすがチャームポイントの赤毛の少女が、プロテインに興味を示した紳士の近くでポージングを励んでいる男子学生の一人を掌で差した。


「すると・・・・このプロテインなる品を摂取し続けると、筋肉が付きやすくなるのかね!?」


一口大に切り取られたマドレーヌを食べ終えた紳士が質問すると、嬉しそうに女店員が応えた。


「ハイ!」


ニコニコとしながら、頷く姿は可愛らしいけれども、ここでもやはりマッスル集団がすごく暑苦しい。


しかし、彼らはなおも「セイッ!」「ハッ!」などの暑苦しい掛け声と共に、キレッキレでムキムキとしたポージングが続いている。


女性店員が居る割には、女性客があまり見当たらず、代わりに普段は女性客が多いために近づけずにいた痩身な男性客の姿が多く見られたという。


そして、運命の時は来た。


「・・・・コレ、ください!」

「ボ、ボクにもっ!!」

「私にはマドレーヌ20個分でっ!!」


常であれば、スイーツやダイエットを中心とした若い女性客がひしめいていた『プロネシス商会』の新形態、『ボディービルダー』や筋力増強願望者を対象としたニッチな分野にも進出するというのだろうか。


「皆様~来月末には、当『プロネシス商会』主催による『マッスル・コンテスト』の開催のチラシもご一緒にどうぞ~!!

優勝者には、豪華景品と温泉宿泊券をプレゼントいたしまーす!!」


「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」


店内にはどよめきが起こった。


我先にと商品を手にして、同封されたチラシを穴が開くほど見つめる男性たちの顔には、今目の前でポージングをしているメンズたちの姿と、自分の姿を重ねているような、そんな陶然とした表情を浮かべる者たちも多かったという。


「なお、明日は新作スイーツの発表もありますので、既婚のお客様は、奥さまやお嬢様へ。

未婚のお客様に於かれましては、気になる方や大切な方へ宣伝をお願いしまーす!


このチラシ持参で、来店時に女性の同伴者がおられるお客様へは、ホエイプロテイン製ジュースを一本プレゼントしちゃいまーす!!」


「「「「「なんとっ!?」」」」」


大勢の男性客でごった返す店内への、翌日の来客の同伴までもプレゼントの対象とするという、なんとも太っ腹な宣伝に、居並ぶ者たちは顔を見合わせたが、やはり狙いはホエイジュースだ。


目を輝かせ、決意を胸に秘めて再来店を決意する者たちが多かったようだ。

同様の光景は、王都本店のみならず周辺の支店でも繰り広げられていたという。





「お嬢様・・・・。」


「なにかしら? ミラ。」


常ならば、定時報告をして指示を受けるだけの白髪頭で赤眼なメイドが、戸惑いと疑問を綯交ないまぜにしたような表情を浮かべていた。


「あのような者たちをお使いになられるとは・・・・。

その、少し・・・・・。

いえ、大分、戸惑っております・・・・。」


「ん?

ああ、あの筋肉愛好者たちね?」


「・・・・ハイ。」


「基本的に、良い人たちだもの。

今回だって喜んで協力してくれているのだから、感謝しなくっちゃ。」


少し苦手そうな顔をするミラに対して、ソフィーはいつもと変わらず、何を考えているのか分かり難そうなにこやかな表情をしたままだった。


「・・・・アーデルハイド様が、あのようなお姿に憧れられたならば・・・・?」


魔が差したのだろうか、常ならば決してしないような質問を直接主人へ向けて発してしまうミラであった。


「・・・・お兄様が内心アドルフさんの様な肉体に憧れとコンプレックスを持っているのは知っているわ。

でもね、コンプレックスというものは、簡単には克服できないからこそ、コンプレックスなのよ。」


それが答えだと言わんばかりに、この話題は打ち切られてしまった。


今回のマッスル集団が突然現れた理由は、アーデルハイド親衛隊の中でも、ソフィーの影響下に付いた勢力の一部には、マッスルを心底愛する者たちも含まれていた。


そこで、ソフィーは以前から、プロテインの投与と王都伯爵邸付き護衛隊から数名を派遣して、トレーニング指導を密かに行っていたのだ。


そして、数か月に及ぶ訓練とプロテインの成果が筋肉という実りとなった報告が齎されたのが、つい先日のことだった。


この宣伝を兼ねたマッスル効果の披露により、レベッカの『ドライローゼス商店』への反撃の第一撃に、インパクトのあり、尚且つ客層が完全に被らない人だかりを一日で完成させたのだった。





とまあ、半分おふざけのソフーによる反撃の第一撃は、敵対表明をしたレベッカの意表を良い意味でも突いてくれたようだ。


「・・・・ナニコレ・・・・意味不明だわ・・・・。」


「お、お嬢様・・・・。」


『プロネシス商会』王都本店や周辺都市での休業店舗の突然の復活と、来客が戻っているとの急報を受けたレベッカが、アーデルハイドとの時間を惜しんでも駆けつけた結果が、マッスル集団だったのだ。


人は、自分の理解の許容範囲を超えてしまうと、自分でも訳が分からない行動に走ってしまうという。


今のレベッカが現在進行形でそれを味わっていた。


「アハ、アハハ、アハハハハハハハハーっ!」


「大変だわっ!

お嬢様が壊れてしまわれたっ!?」


日頃は、怜悧で大人しい性格だが、読書量に比例して様々な知識に明るく、自分たち使用人にも優しく接してくれる、自分たちにとって大事な尊敬するお嬢様が・・・・。


オルティアや周囲に居た者たちは、あわてふためいてしまった。


ところが、そんな周囲を意に介さず、レベッカが止める間すら与えず大胆な行動に出てしまった。


「そこの貴方! キレてるわねっ!!」


得意げにポージングをキメて、キレッキレな動きをしていたエイブラハムへ向けて、変な掛け声をし出したのだ。


「応っ!」


これに気を良くしたエイブラハムが、一歩ズイっと近づくと、更に大胸筋やら三角筋などをプリップリと動かして見せる。


「ソッチは、背中に羽が生えてるみたいね!

広すぎてパン捏ねれそうよ!」


脳筋先輩のシュナイダーが進み出て、自慢の広い背中の筋肉を総動員して、グニグニと見せつける。


「お・・・・お嬢様・・・・・・。」


あまりにも非現実的な光景に、今度は先程まで心配していたはずのオルティアまでもが、クラっと眩暈を起こして倒れかけた。


「いかん。オルティア!

しっかりしなさいっ!!」


屋敷で爺と呼ばれていた執事が駆けつけて、オルティアを支える。


「ハっ!?

私としたことが・・・・・。

お嬢様が我を失ってしまっている姿に、つい・・・・。」


「無理もない。

日頃はあれ程までに大人しいお嬢様が、無理して愛用されていた眼鏡を外してまで、アーデルハイド様へ近づかれたのだ。


しかも、大好きな読書の時間を削ってまで、共におられようとなされていたのだ。


只でさえ、目立つことを嫌われるお方なのに、目立ち過ぎるお方の傍らに居続けたのだ。

きっと、ストレスも溜まっておられたのだろう。


まさか、こんなきっかけでストレス解消へ走られるとは、予想もしなかったが・・・・。」


幼い頃からレベッカを見守って来た初老の執事ならではな見解に、オルティアは瞬きを一つすると、軽く咳払いをした。


「コホン。

成程、お嬢様が変な方向へ覚醒したのでなければ良い事なのですね。

判りました。」


そう告げるが早いか。


「そこの君ぃ~ そう、君君ーっ!!

土台が違うよぉーーーーーっ!!

両肩メロン乗っけてるーーーっ♡」


「キャァァァァーっ!!

ソッチのキミもナイスバルグっ!!」


今までひた隠しにしてきた感情を爆発させるかのように、レベッカと並んでマッスル鑑賞に走ってしまったのだった。


後には、残されて事態について行けなくなってしまった従者たちやら、ヤレヤレと溜息を吐くと、達観したかのように喜んで声援を上げる二人の姿を見つめる所領の執事が居たという。



マッチョって奥が深そうですね。


私の周囲でも、細身の人がやたらと筋肉に憧れていた姿が印象的だったのでつい└( 'ω')┘マッチョッチョ



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