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妹がヤンデレ過ぎて怖い件について  作者: 所天駄
第三章 レベッカ・ザルツブルグ侯爵令嬢との婚約騒動!?
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75.賊の心当たり


図書館でレベッカと二人で試験勉強をしていた僕の下へ、凶報がもたらされた。


アドルフが刺された!!」

「「っ!?」」


突然すぎる凶報に、僕の頭は一瞬で真っ白になってしまった。


「・・・・アドルフが!?」


そう一言だけ言うのが精一杯だった。


「今、学園内にある救護室へ運ばれて手当てを受けている。

賊はまだ捕まっていない様だから、お前たちも気を付けろよ!!」


そう告げてくれたのは、模擬騎馬戦で同じチームで副隊長を務めていたデービッドだった。

気遣うように、僕の顔を覗き込んでくる。


「大丈夫か?

なんなら、俺たちで護衛隊を組んで、お前たちを馬車のところまで送るぞ?」


「ああ、心配ない。

それよりもアドルフは?」


「まだ何とも言えないが、複数の賊に囲まれているところを通りかかった寮生が見つけたらしい。

相手は剣を抜いていたらしく、あいつも抵抗はしたらしいが、多勢に無勢だ。」


「そうか・・・・。」


あいつが、そう簡単に死んだりなんかしないとは思っているけど、それでも剣を相手に素手で対抗しても無駄なのだ。


「馬車へ乗る前に、あいつの様子が少しでも知りたいんだ。」


「そう言うと思って、帯剣した先輩たちと一緒にここまで来たんだ。

城までの往復は俺たちが護る。」


「ありがとう。」


良く見れば、デービッドも腰にグラディウスと呼ばれる剣を下げていた。

成程、非常事態故に、学園内での帯剣許可が下りているのだろう。


念のため警戒しながら、僕とレベッカ、数名の男子学生たちで城の内部に設けられている救護室へ向かった。





学園内は、混乱していた。


アドルフを襲った賊は捕まっておらず、まだ敷地内をウロウロしているかもしれない。

教授陣や学生たちへは、従者を含む帯剣の許可と、王国騎士団の出動を要請して、帰りの道のりや学生寮までの護衛を付けることになった。


アドルフが運ばれたという救護室は、要塞時代の名残で、かつてはここで治療行為が行われていた部屋の一つで、名医と呼ばれる医師が常駐していたお陰もあり、即座に斬られた傷口の縫合手術が行われているという。


「アーデルさん!」

「アーデル・・・・。」


救護室の前では、クララとエリカが椅子に座って待っていた。

クララは心配そうな表情を受けベているけど、エリカは憔悴し切った様に見受けられた。

やはり、二人ともアドルフのことが心配なのだろう。


「レベッカ。ここは僕たちで残るから、先に帰っても良いよ。」

「何を言っていますの? 

アーデルさんの親友が傷ついているのならば、私も一緒にご無事を祈るのが婚約者ではありませんこと?」


そうか。


親切心で言ったつもりだったけど、レベッカにしてみれば、婚約者である僕の親友であるアドルフもまた、大切にしたい人物の一人として思っていてくれたのか。


殺伐としそうな心に、少しだけ温かな感情が宿った気がした。


「それで、デービッド。

賊に付いて、何か手掛かりは見つかっているのかい?」


ここまで護衛に付いてきてくれたデービッドへ聞いてみる。


「それが、何一つ手掛かりらしい手掛かりが残されていないんだ。

まるで、最初から賊なんて存在が学園内に居なかったかの様に。


だが、確かに足跡だけはアドルフのものと合わせて複数残されてはいたんだ。

手掛かりらしい手掛かりと言えば、それだけなんだ。」


手掛かりらしい手掛かりが、複数残された足跡だけと言う言葉にも、何か引っかかりを覚えたけど、現状では他に無いということしか確認出来なかった。


「すると、後は襲われた本人に聞くだけか・・・・。」

「そうだな・・・・。」


僕たちが、しんみりとしながら真面目な会話をしていた時だった。


「あぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?


痛ってぇぇぇぇぇぇええええええっ!!


チクショウっ!!


グワっ!!


イタイイタイイタイイタイーーーーーーっ!!


ぐへぇっ!」


どうやら、縫合手術中のアドルフのものらしき野太い男性の悲痛な叫び声が響いて来た。


「・・・・。」

「・・・・・どうやら、大丈夫そうだな?」

「だな。」


賊から斬り付けられたと聞かされたから、意識不明な重体かと心配したが、その点では心配しなくて良くなりそうだ。





それから、少し時間が経ってから、意識もあるということで僕たちはアドルフに短時間だけ面会することを許された。

いきなり大人数で面会してもなので、3人までということで、最初は僕とエリカ、クララの三人で面会することにした。


「縫合手術を受けたばかりですから、あまり長居はしないようにしてくださいね。

それから、救護室内では大声は厳禁です。」


案内してくれた女性の看護師さんが、そう告げると、僕たちをアドルフの休んでいるベッドの前まで案内してくれた。


「アドルフ・・・・・。」

「アドルフさん・・・・。」

「アドルフーーーっ!!」

「ふわっ!?」


最初に声を掛けたのが、僕。

次にクララ。

最後に叫んだかと思ったら、そのまま胸へ飛び込んでしまたのがエリカだった。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁあああっ!!

痛いっ!!

痛いからっ!!

ぐえええええええええ!!」


縫合したばかりの傷口が開くのではないだろうか。

そう僕たちが顔を見合わせて心配する中で、エリカは少しだけバツが悪そうにパっと離れると、頬を赤らめながら小さく謝罪した。


「あ。ゴメン・・・・。」


「い、いいさ・・・・・。

き、気にスルな・・・・・。

グギギ・・。」


最後には悲鳴を飲みこんで見せたな。

忍耐力に磨きがかかった様だな、友よ。


「ところで、賊について聞いても良いか?」

「あ、ああ・・・・。」


いつもなら、サッパリとしていて、質問には正面から答えてくれるアドルフの様子がおかしい。術後の影響だろうか?


「襲われた心当たりはあるのか?」

「・・・・ある。と言えば、あるし。

無い。と言えば、無いな。」


なんだろう、この違和感のある言い方は。

過去に聞いた覚えがあるような・・・・。


「それはつまり、『言えない』という意味で良いのかな?」

「まあ、そんなところだな・・・・。」


この遣り取りで、僕はある程度だけど、賊の目星が付いてしまった。


だが、そのことの事実確認は難しいだろうし、現在混乱状態にある学園へどのように伝えれば良いのかは、戸惑いがあった。


なにせ、正確には相手の家名も知らないのに、警戒するというのは難しいのだから。





アドルフには王国騎士団から護衛も付けられ、寮生の男子からも、同じデルタチームだった男子学生を中心に、他の模擬騎馬戦参加者も協力を申し出てくれたお陰で、交代で24時間見張りが付けられることになった。


そんな訳で、僕もある程度は安心して王都伯爵邸へ帰ることが出来た。


「ただいま。ソフィー。」

「お帰りなさいませ。アーデルお兄様。」


執事や屋敷の者たちと共に、ソフィーが出迎えてくれる。


「お兄様。アドルフさんのご容態は?」

「知っていたのか?」

「学長先生から、早馬で報せが入りましたの。

私心配で心配で・・・・・。」

「そうだったのか。」


僕が思っていた以上に、ソフィーは学長から随分気に入られているみたいだな。

とりあえず、心配を少しでも減らしてやりたい。


「アドルフなら大丈夫だ。

傷口は複数個所あったみたいだけど、全部縫合手術も無事に終わって、僕が帰る頃には、『見舞い品を寄越せ』とか、『フルーツが食べたい、イヤ、肉だっ!!』なんて言っていたから、明日にでも差し入れを届けようと思うよ。」


あ、ソフィーの心配そうな瞳が、半眼ジト目になっている。

だって、本当のことだし、どう伝えれば良かったんだろうか?


「まあ、殺しても死ななそうな立派な体躯をしてましたものね。」


おや、僕が事実を伝えたせいで、アドルフの評価が下方修正されてしまったのだろうか?

ここは友の為にも、もう少し表現を変えた方が良かったかな?


「それで、賊については?」


「うん。それなんだけど・・・・。

『言えない』という趣旨の言葉だけで、手掛かりは皆無なんだよ。」

「そうですの・・・・。

分かりましたわ。」


以外にも、スンナリと僕が告げた言葉だけで、それ以上追求しようとはして来ないソフィーだった。


なんか逆に不気味だな。

何か知っているのだろうか?


「ソフィー。

何か知っているのかい?」


「・・・・・。

いずれ。いずれお話ししする時が来たら、その時にはアドルフ様のご実家の事情について、私が知っている事を必ずお話しすると約束しますわ。


でも、今はその時ではありませんの。

知ってしまえば、お兄様のお命まで危険に晒してしまうかもしれませんもの・・・・。」


ソフィーの方が、僕よりも先にアドルフの家庭事情を知っているだと!?


驚いた。


でも、同時に、時が来るまでは明かせない事と、今は命の危険が伴うことを教えてくれた。


「そんなに大事なのかい?

ソフィー。君は知っていても大丈夫なのかい?」


二つの疑問点をそのまま聞いてみる。


「ええ。アーデルお兄様。

それ程の家庭事情ですわ。


そして、私は護られていますから。

知っているだけならば大丈夫ですわ。


その代り、誰かに漏らしてしまえば、私でも危ないかもしれませんの。」


アドルフが僕にさえ打ち明けずにいた家庭事情とは、そこまで闇が深いのだろうか。

何処の大貴族が関わっているのか、それとも・・・・。


今は情報が少なすぎて、性急な答えを求めるよりも、明日からのアドルフへの見舞い品を見繕うことにしよう。


「ソフィー。

一緒に見舞い品を用意してはくれないかい?」


「ええ。お兄様。

喜んで。」


そう言って、僕の手を嬉しそうに握りしめて、食料品倉庫へと走り出すソフィーの姿は、つい先ほどまで貴族社会の闇について語る姿とは打って変わり、いつもと変わらぬ美しい少女に戻ったようだった。




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