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妹がヤンデレ過ぎて怖い件について  作者: 所天駄
第三章 レベッカ・ザルツブルグ侯爵令嬢との婚約騒動!?
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64.『ソフィーの休日』② ― 闇堕シタケダモノドモ ―


馬車に揺られながら、石畳の道をガタゴトと街中へ買い物へ向かう僕とソフィー。


「最初は~ 靴屋さんかしら?」

「何か買いたい物があるのかい?」


コクリと頷く姿が愛らしいな。

今日は僕が、何か買ってやろうかな。


日頃買い物に来ている靴屋の看板の前で、御者が馬車を止める。

足台を置いてもらい、僕が先に降りて、ソフィーの手を取る。


僕たちが店内へ入ると、頑固一徹な職人気質を絵にかいたような、気難しそうな顔をした親方が迎えてくれた。


「毎度。若旦那、お嬢さん。」

「お邪魔します。親方。」

「親方さん。お邪魔しますわ。」


親方は、伯爵家が代々取引している腕の良い靴職人で、僕やソフィーの靴も幼少の頃から作ってもらっている。


「んーで、今日はどういったご用件で?」

「サンダルが欲しくって。」


ソフィーがそう告げると、親方が店のショーウィンドウの近くに展示されている物を指差した。

この店の基本はオーダーメイドだけど、ある程度まで仕上げておいて、買う段階で仕上げる品も、ある程度は置いてあったりする。


「そいつで良かったら、今すぐ調整しやすぜ?」


ウェッジ・ヒールが付いた、革製のサンダルをソフィーが履いて見ると、若干の調整は必要みたいだったけど、親方がトントンと金槌や千枚通しみたいな金属器具でグリグリすると、ソフィーの足の形にピッタリなサイズに仕上がった。


僕がハンスに言って支払いを済ませると、ソフィーが嬉しそうに腕を組んできた。


「ありがとうございます。お兄様。」

「喜んでもらえたなら、嬉しいよ。」


店から再び馬車へ戻り、僕たちは王都にある中央公園を目指した。





アーデルとソフィーが、靴屋から出て来た姿を、じっと少し離れて見つめる集団があったことを二人はこの時点では気付いていない。


「アーデル様と二人きりでお出かけ・・・・イイなぁ・・・・」

「うん。デート・・・・したかったねぇ・・・・」


その集団の中には、目の光りが消えてしまったティファニーとイヴォンヌの姿があった。

この二人だけでは無い。


「私も・・・・アーデル様とデートしたいよぉぉぉぉぉっ!!」

「ユーリ。全くもって、同感よ。」


シャーロットにユーリ、他にも男子生徒の姿までもが、チラホラと見えた。


「このままでは、見失ってしまうぞ。」


呆れたことに、インテグラまで。


「なに、大丈夫さ。

この方角なら、中央公園だろう。」


スチュアート先輩まで。


「よし! ソフィーを手に入れるためだっ!」

「オォーーーっ!」


エイブラハムが力強く告げると、周囲の男子生徒らが応じた。


どうやら、『アーデルハイド親衛隊』の者たちが、学園が休みに入っているので、王都内で買い物などを楽しんでいるところへ、二人が見つかってしまったらしい。





中央公園には、パラソルが幾つか点在しており、ジェラートなどのスイーツが売られている。

そこで僕がジェラートを二つ買い、二人で噴水の前で舐める。


僕がチョコミントで、ソフィーがストロベリー。

ちょうど、水色とピンクのジェラートが二つ。


「お兄様、味見ぃ~」


そう言うが早いか、僕が舐めたばかりのチョコミントを一口パクリ。


「ンーーーーーっ♡」


甘さの中に僅かにミントの香りがする程度なんだけど、ソフィーは満足げに微笑む。


「お返しにどうぞ♪」


ストロベリー味が差し出される。


「いや・・・・でも・・・・」


コレって間接 ・ ・ てやつじゃないか。

人前だし、ちょっと照れる。


「早くぅ~♡」


なんだか、ソフィーが甘えた声で僕におねだりする度に、周囲の視線が鋭く僕を睨みつけるか、射殺すように突き刺さる様な気がするんだけど、気のせいだけじゃないよね?


これはもしかして、男の嫉妬ってヤツだろうか。


根負けした僕が、ソフィーのジェラートを一口パクリっと食べた瞬間、周囲の眼圧が一層強まった気がした。


『アーデル様・・・・ウラヤマシイ・・・・。』

『ソフィー・・・・可愛イヨ・・・・ソフィー・・・・ペロペロ・・・・』


なんだか、風の方角によってか、時々雑音みたいに、途切れ途切れに変な声が聞こえるような気がするのだけど・・・・?


まあ、ソフィーは可愛いからな。


「よっ! 我が友よ!」

「アドルフ!?」


どこから表れたんだ、コイツ!?

いつの間にか、アドルフが公園内に居たらしい。


「奇遇だな、今日は一人かい?」

「あ、ああ。一人っちゃ一人だ。

さっきまでは、ちょっと一緒に居たんだけどな。

ハハハ・・・・。」


なんだか少し疲れた表情だな。

模擬騎馬戦での激しい戦闘の疲れがまだ取れないのだろうか?


「大丈夫か?

乾いた笑いなんて浮かべて。」

「ああ、大丈夫だ。問題無い。」

「なら良いけど。」


こいつがそう言うなら、きっと大丈夫なのだろう。


「そう言えば、さっきまでは一緒に居たというのは?」

「ソレは聞くな。お前たちの身の為だ。」

「え?」


おかしなことを言うやつだな。

誰かと一緒に居たなら、それがどうして僕たちの?

首を傾げる僕へ、アドルフは変なことを言い出した。


「悪いことは言わない。

アーデル、ソフィーちゃん。

ここから一刻も早く、逃げろっ!!」

「はい?」


頭が混乱する僕を他所に、アドルフは一目散に走って行ってしまった。





アドルフが走り去るのと、入れ替わるようにして、何やら大声で僕たちの名を呼ぶ声が響いて来たような気が・・・・・・?


「「「「「ソフィー様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」」

「「「「「アーデルハイド様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」」


あれ?


なにやら、親衛隊の人たちが・・・・?

こんなところで何やっているんだろう?


「ソノアイス・・・・私にもぉぉぉぉぉぉーーーーーっ!!」

「ナニ言ッテルノヨッ!! 私ノヨォォォォッ!!」

「キィーーーーーーーッ!!

ソレハ、ワタシガ食ベルモノォォォォッ!!」

「寄セェェェェェェェェェェェッ!!」

「エモノォォッォォォオオオオッ!!」


ナニコレ、ゾンビ映画みたいで怖いんですけど!?


僕がソフィーと二人で仲良く、ジェラートを味わっていたら、それを覗き見していたらしい『アーデルハイド親衛隊』別名『アーデルを愛でる会』の皆さんが、理性を飛ばして暴走モードへ一直線してしまった結果らしい。


「ソフィー。」

「お兄様・・・・。

私、怖いですわぁ・・・・。」


少しだけ、目元に涙を薄っすらと浮かべて僕の手を握りしめるソフィー。

ここは、男として僕がソフィーを護ってやらなくちゃ。


「逃げるぞっ!!」

「ハイっ!」


二人で手に手を取って、走り出す。


なんだか、大勢の学園生徒らしき男女が、集団でその後を追いかけてきている姿は、もはやホラーというよりシュール過ぎて笑えないコメディだけどね。


「しょうがないな。ソフィー、ジェラートはまた後で買い直すから!」

「仕方がありませんわね・・・・。」


ソフィーが手にしたジェラートを僕へ手渡した。


僕は、後ろも見ずに、それをブーケトスみたいにポーンっと放り投げる。


「アレハ・・・・ソフィーーーーサマノォォォォオオオオオッ!!」

「拙者ノデゴザルゥゥゥゥゥゥゥゥウウッ!!」

「イヤイヤソレガシノデゴザルウウウウウウウウッ!!」

「ガウガウ!」

「ウホホホホホホッ!!」


見るに絶えず、耳にするのもおぞましい、醜い争奪戦が始まり、男子生徒らの半数以上が脱落したようだ。


その光景を目にしてしまった公園内の親子が


「ママーアノ人たち、一体何をやってるの?」


と澄んだ瞳で母親らしき人物に聞いていた。


「シッ! 見るんじゃありませんっ!!

アレは、邪な心に染まってしまった哀れな亡者たちの姿よ!

あんな浅ましい姿、見られたものじゃありませんわっ!!」


と、可愛らしい女の子の目を覆うようにして、醜い争奪戦を繰り広げている男子生徒たちの姿を見せないようにしていた。


そうだよね。

僕だって、あんな醜い姿晒したくないと思うけどな。


男子生徒が減った半面、女生徒が追い付きそうになっている。


「ほーら、僕のも上げるよっ!!」


今度は、僕の食べかけのチョコミント味を放り投げると、黄色い歓声が爆発した。


「キヤーーーーーーーーーーーーッ!!」

「アーデル様ノ食ベカケ!!」

「憧レノ間接キッス・・・・!!」

「キターーーーーーーーーーーーーーーッ!!」


ちょっと、かなり?

大分。


悍ましさが増してるんですけどぉっ!?


でも、そのお陰で女生徒の半数以上がここでも脱落してくれた。

それでも、しつこく追いかけて来る連中は、一体何を狙っているのだろうか?


「間接ナンテ・・・・ヌルイワァァァァァアアアアッ!!」

「コノ際、直接・・・・!!」

「キス寄越セェェェェエエエエエエッ!!」


生身狙いか。

本物のゾンビみたいになってるな。


「えーっ!?」

「断固お断りしますわっ!!」


驚く僕と、クルっと後ろを向いて、アッカンベーをして見せるソフィー。


僕たちは、手を繋いだままで公園中を走り回る。

ベンチを障害物にして、右へ左へ避けながら。

芝生の上を、風の様に駆け抜けながら。

林の中を、縫うようにしてジグザグにして。


二人で、手を繋いだまま、どこまでも、どこまでも走り続ける。


後ろから追いかけて来てるのが、ゾンビモドキな学園生徒たちじゃなければ、もっと良かったんだけどね。


「おーーーい!!

乗れぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


いつの間にか、先に逃げたはずのアドルフが、僕たちの乗って来た馬車に先に乗り込んでいて、手を振りながら声をかけてきた。


いつも僕の移動に使う馬車の御者台には、ヤンが手を振っていた。


「よし、このまま馬車で逃げてしまおう!」

「ええ、その方が良さそうですわね。」


先に、ソフィーのことを乗せて、僕もその直後に転がるようにして馬車へと乗り込んだ。

鞭を振るって、馬たちへ発信の合図を出すヤンのお陰もあり、僕たちは無事に公園から脱出できた。


「ありがとうな。アドルフ。」

「いいや。たまたま公園内を散歩していたら、お前たちの姿が見えてな。


その周囲に、大勢のお前たちの『親衛隊員』の姿が、木々の間とか、スタンドの後ろなんかに隠れて見張ってるから、様子を見ていたんだ。


すると、お前たちがアイスを美味そうに食い始めたら、だんだん表情が怪しくなっていてな。

なんだか、闇に堕ちて行っているような、そんな感じがしたんでな。


それで、こりゃマズそうだと思って、お前に声を掛けたんだよ。

あとは、公園の端に止めてあるこの馬車を見つけたからな。」


「そうだったのか、とにかく助かったよ。

ありがとう。」


僕たちが馬車を発進させた後には、茫然自失といった表情で、魂が抜けたように立ち尽くす姿の男女が残されていた。


あとで、正気を取り戻したら、死ぬほど恥ずかしんじゃないだろうか。

ある意味、黒歴史だよね(汗




今回はソフィーじゃなくって、オマエラが闇堕ちしたんかーいっ!!

ってゆー落ちでした。


途中までは、名作休日モノだったハズなんだけどなぁ・・・・

どうして、筆者が書くとこうなってしまうのでしょうねぇ

(;´・ω・)




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