62.舞踏会乱入! ― アーデルとソフィー feat.親衛隊 ―
そうして、舞踏会が行われて、学生、教授陣、父兄等など、前回の舞踏会よりも更に大規模で行われた。
やはり、今回も僕たちの出番はこれからだ。
舞踏会のためのBGMが鳴り止み、学長が高らかに告げる。
「お集りの紳士淑女の皆様!
本日学園祭最後の舞台を飾るのは、本校特別課外特待生であるソフィー・ツバイシュタイン伯爵令嬢とその兄、アーデルハイド。そして、本校生徒らによる特別演目ですっ!!
どうぞ、ご照覧あれ!」
高らかに、ビューグル4重奏が鳴り響く中、ステージ中央が2m程、スモークが炊かれる中から、グーンと高くせり上がる。中央には、太く一本の階段が設けられており、二段になったステージを繋いでいる。
オーケストラによる勇壮なBGMが会場に満ちる。
曲名は『サンダーバード』。
そこへ、客席側天井付近から4本のスポットライトの光が伸びてきて、左右の両端から上の段8名、下の段からも8名、計16名のV系と呼ばれる若干露出度の高めで、黒と赤を基調とした衣装を身に纏った女性たちが大きく左右に棚引かせるようにフラッグを振りながら入場して来る。
真っ赤なフラッグには、真っ白な“双白百合”が記されていて、ピンクの細い射線がバッテン状に白百合から伸びている。
16名が、ビシっとステージ中央へ向けて、フラッグを掲げると、上のステージ中央へとライトの光線が集められ、エレベーターに乗ったソフィーがスゥーっと登場する。
その姿もまた、赤とピンクを基調とした女性将校風な衣装だった。
いわゆるゴスロリ風パンク系な、赤帽子に黒のレース・グローブを着用した姿に、客席に座っていた大勢の観客が度肝を抜かされたという。
ステージへ進み出た軍服姿のソフィーが、手にした深紅の錫杖を高らかに掲げた。
上下のステージに立っていた女生徒たちが、再びフラッグを大きく振り動かす。
すると、今度は、曲調が変わりドラミングが高らかと鳴り響いた。
BGM『ロッキー』。
ドドドッ! ドドドッ! ドドドドドドドドドドドド! ドッ! ドン!
ダダダン、ダダダン、ダダ、ダンダダダンッ!!
ダダダン、ダダダン、ダダ、ダンダダダンッ!!
ダダダダダン、ダンダダン、ダー、ダンダダダダンダンッ!!
ダダーンダーン
ダダーンダーンッ!!
そこへ、ステージ側天上付近から4本のスポットライトが向けられる。
今度は、大広間中央通路の端にある扉が、左右に大きく開かれ、青を基調とした男性将校姿のアーデルハイドを先頭にした、男子16名が、ツバイシュタイン家の紋章にちなんだ、クロスした石斧が記されている紺色のフラッグを手にして入場して来た。
このフラッグに記されている交差した石斧もまた、バッテン状にクロスした射線が描かれており、ソフィー等女性陣と対になったデザインだ。
スポットライトの光が男子学生らの動きを見事に追いかける。
アーデルハイドが、紺色の錫杖を上下にリズムを刻むと、そのリズムに合わせて、16名が膝を上下させて前進する。
彼もまた、青を基調とした将軍の正装風な衣装で身を包み、紺色帽子に黒のレース・グローブを着用している。イメージとしてはパンク風レザーといったところだろうか。
男子生徒らは、全員アーデル同様にレザーパンク風な軍服の様な姿だ。
黒と青を基調とした色使いに、ムキムキな筋肉を見せつけながらフラッグを大きく振る。
最初は、先頭だったアーデルだが、花道の手前で、足踏みをするだけとなり、フラッグを手にした男子生徒らと入れ替わるように、先に行かせた。
そうして、通路中央の花道まで全員が登ると、アーデルが最後に花道へ登って、錫杖をピタリと止める。
ステージ上の女生徒たちも、花道上の男子生徒らも、そのタイミングで、ピタリっと動きを止めて見せると、BGMもピタリと鳴りやんだ。
その様子を緊張しながら見守っていた観客たちは、割れんばかりの拍手喝采を送り、初めて見るアトラクションに興奮した様子だ。
“カラーガード”
それは、“マーチング・バンド”などで、フラッグを使う、一部の演目として始まったと言われるが、ソフィーは、この時代にソレを一つの演目として披露することにしたのだ。
観客たちの熱狂に応えるかのように、ステージ上に立つソフィーが、赤い錫杖をアーデルへ向け、スっと差し出した。まるで、無言の宣戦布告をしているかの様な、そんな仕草だった。
対するアーデルもまた、青い錫杖をスゥっとソフィーへ向けて斜めにかざす。
ドラムロールが再び、緊張感を盛り上げるかのように、鳴り渡る。
両者が一斉に、掲げた錫杖を互いへ向けて、振り下ろすと、二つの陣営のフラッグが、一方はステージへ向けて走り出し、もう一方は、花道へ向かって走り出した。
その様は、ちょうど二つの赤と紺色のフラッグが、交差して入れ替わってゆくようだった。
ステージ上と、花道上、どちらも男女が交互に並ぶ形になると、楽団が全ての楽器をあらん限りの荒々しい、勇壮なBGM『剣の舞』を奏でだした。
二色の旗が、更に激しく振り回され、時に水平に、相手をなぎ倒すかのように。
時に、上下に激しく振り回されるように。
時々、フラッグとフラッグが、槍でぶつかり合うかの様に、『カシャーン!カキーンっ!』と甲高い音を立てて、本当にぶつかり合う場面もあった。
そうやって、激しいバトルシーンを再現するかのようにフラッグとフラッグを交差させ合う。
すると、一際甲高くラッパの音が鳴り響き、ステージ上ではソフィーが、通路中央側ではアーデルが、互いが手にした錫杖を、まるで弓矢のように引き絞る仕草をし出した。
スポットライトの光りが、二人を中心に照らす。
観客たちは、二人のパントマイムの意味を正しく理解して見守る。
二人は、今、互いを射殺そうと弓矢を引き絞っているのだ。
ラッパの音が鳴り終わると、二人は互いへ向けて矢を放つ。
ライトが、弓の軌跡を追うように、二人から動いて行く。
すると、激しくフラッグを振り合っていた男女へライトが浴びせられ、次々とその場で一人ずつパタリと倒れてゆくではないか。
そして、最後の旗手が倒れると、ライトは再びソフィーとアーデルの二人を照らす。二人もまた、胸に矢を受けたようなしぐさをして、倒れ込んでしまった。
盛り上がっていたBGMがここでピタリと鳴りやむ。
ライトも消され、突然暗闇と静寂に包まれる。
「えっ!?」
「うそっ!?」
二人の世界に引き込まれていた観客たちが、思わず声を上げてしまう。
再び、スポットライトが、ステージ上のソフィーと、通路上のアーデルを照らす。
小さな笛の音が優しく鳴り渡ると、倒れていた二人がゆっくりと起き上がりだす。
「がんばってっ!」
「立ってっ!!」
思わず、声援を送りだす観客たち。
二人は互いへ向けて、手を伸ばし合う。
まるで、魅かれ合うかのように。
立ち上がった二人は、ニッコリと微笑み合うと、大きく頷いて見せた。
それを合図に、管弦楽団が、平和と喜びに満ちたイメージなのか、『組曲・惑星』から『木星』を後半のあたりから演奏しだした。
倒れていた男女は、次々と起き上がり、今度は、喜びを表現しだす。
フラッグをポーンと上へ放り投げると、クルクルっと空中で回転させ、パシっと後ろ手に受け取って見せる者たち。
激しい恋の鞘当から、打って変わって、優しく寄り添うように、交互に並んだフラッグが揺れる様は、まるで恋人同士のようだ。
そうして、ソフィーはステージ上段から花道へ向かう。
アーデルは、ステージへ進む。
両側では、スモークがステージ上に棚引いている中で、フラッグを掲げた者たちが、次々とフラッグ先端部分が交差する様に斜めに掲げる。
フラッグのトンネルを両側からくぐり抜けて、中央で向かい合う二人は、優雅に一礼し、互いの手を握りしめて、高く掲げて見せ、ステージの上の段へと歩き出す。
そうして、二人が一番上のステージの上に並んで立つと、優雅に観客へ向かって一礼して見せた。
フラッグを掲げていた男女もまた、二人の後ろに続き、ステージ上下の段へ、横一列にズラリと並び変えて、手を取り合い、優雅に一礼して見せた。
演目の終わり。
一瞬の沈黙の後、瞬きをするのも忘れて、ステージ上で繰り広げられる物語に、心を奪われていた観客たちが、我を取り戻したかと思うと、全員が立ち上がり、盛大な拍手を惜しみなく送り続けた。
どうやら、今回のソフィーの計画も、大盛況で終えることができたようだ。
ちなみに、カラーガード自体は、とても好評で、来賓や教授陣、生徒からも褒められたけど、露出が若干高めなことについては、学園長から、控えめな表現ではあるけど、「次の機会があるなら
もう少し大人しい衣装にして欲しい」との要望があった。
まあ、正直に言うと、着ていた僕たちも恥ずかしかったんだけどね。
一番ノリノリだったソフィーが一人解せないという表情をしていたのが、印象的な良い思い出になった一幕。
ともかく、こうして今年の学園祭も無事に幕を閉じることが出来たのだ。
アーデルハイド&ソフィーによるカラーガード隊
メインダンサー:ソフー&アーデルハイド(2名)
ステージダンサー:カラーガード隊 男女32名(男16:女16)
男女140人がかりの大所帯による演目。
舞台下からのせり上がりに男子70名利用。
せり上がり合図や舞台タイムキーパー・演出等10名。
スモーク係:両端に2人ずつ女性計8名。
カンテラ・スポットライト係8名
衣装他:12名
ダンスやカラーガードなどの、動作を表すのって、滅茶苦茶ムズイですね(滝汗
敢て挑戦するのは下手の横好きだからです!←
(;´・ω・)
蛇足:ローマ時代には、既にエレベーターはコロシアムにて活用されていました。
野外に設けられたコロシアム(コロッセウム)に、猛獣や出演者などを、奈落からせり出させて、戦わせたり、合戦の様子を再現するために、水で満たして海戦まで見世物にしたそうです。
なので、今回のソフィーのカラーガード隊も、人力 (笑)によるエレベーターを用いてみました。




