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妹がヤンデレ過ぎて怖い件について  作者: 所天駄
第二章 学園祭編 ―悪役令嬢暗躍―
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56.『Noble's determination(貴族の決意)』開催宣言 ― アルファ vs ブラボー ―



そうこうしているうちに、とうとう学園祭初日がやってきた。

王立学園の学舎の中にある大広間で、この学園祭の開会式が行われる。


大勢の貴賓や父兄らが、質素に見えるようにしてはあるが、贅を凝らして着飾り、さり気なく自分の財力を誇示し合いながら着席する中で、中央に設けられた分厚く赤い絨毯の通路を通って、学園長が前へ進み出る。



そうして、相変わらず見るからに学者肌という感じの学園長が、如何にもな感じの挨拶をしてから、開会宣言がされた。


「お集りの紳士淑女の皆様。

本日この日を迎えることが叶いましたのも、日頃からの国王陛下の御威光と、皆様がたからの厚いご支援のお陰です。


日頃ご子息やご息女が研鑽され、励んで来られ、目覚ましいご成長を遂げられましたお姿を、このような形でお目にかけられることを、私も学園長として誇りに思います。


それでは、只今から『Noble's determination(貴族の決意)』の開催を宣言致します!!


初日の演目は、中・高等部男子生徒等による、『模擬騎馬戦』ですっ!!

それでは、代表選手による宣誓をお聞きくださいっ!!」


学園長が高らかに宣言すると、一斉に王立軍楽隊による勇ましいパーカッションによるドラミングと管弦楽が弾き、吹き鳴らされ、『ラデツキー行進曲』が流れる中を、四チームの代表選手たちが壇の前へ並び立つ。

アドルフと僕は、その中から更に優勝旗を持って、壇へ向かって進み出る。


何故って?

昨年度のリーグ優勝チームの隊長と参謀だからね。


アドルフは一段高い壇の上に登り、僕は優勝旗を両手で抱えたまま、直立不動の姿勢を保つ。


すると、軍楽隊は一旦演奏を止め、アドルフが壇の上に立つのを全員で見守る。


ピーンと伸ばした背筋と、逆三角形の体躯が壇上で見事に映える。

ちくしょう、やっぱりこんな時は負けてしまうな。


「宣誓っ! 我々中等部・高等部男子生徒一同はっ!

騎士道精神に則りっ! 正々堂々、不撓不屈の精神でっ!

互いに研鑽し合いっ! 日頃の鋭意努力の限りを尽くしっ!

互いを敬いながら、戦うことを誓いますっ!!」


アドルフの宣誓が終わると、場内からは更なる割れんばかりの拍手が鳴り響く。

もう一度、壇の上に登った学園長が、上機嫌で拡声器を握り、大きな声で告げる。


「実に凛々しく、堂々とした宣言でしたな。

宣言通りに、正々堂々と戦ってもらいたいものですな!

皆様がた、どうぞごゆるりとご観覧あれっ!!」


四チームの選手たちは、軍楽隊が再開した行進曲に合わせて両開きの扉の外へ出る。


ここから、選手たちは仲間の待つ戦場へ向かうのだ。

開会宣言から約30分後、貴賓客や教職員、女生徒らは城の上や各所に設けられたテラスなどから、自分たちの応援するチームの戦闘を見守るのだ。





ちなみに、学園祭当日は、普段よりも広く戦場バトルフィールドが用いることが出来る。

4チームが敷地内をいつもよりも広く使えるので、城と池を挟んで反対側で、林や丘などの要害を用いながら、同時に二チームごとに対戦することが可能となるのだ。


試合時間は二時間。

二時間以内に決着がつかなければ、より多くの相手を倒した方。

もしくは、ポイントが15ポイン以上の差が無い場合で、隊長が残っている場合は、隊長同士による一騎打ちにより決着を付けることになる。



『模擬騎馬戦第一回戦』


1.アルファ対ブラボー戦。



今回、アルファチーム側からは、以前練習試合の時にアーデルハイドが使ったのとまったく同じ戦法を用いていた。


即ち、自軍を二つに分けてしまい、前衛攻撃隊を騎馬全軍を投入による奇襲攻撃。

後衛守備隊を歩兵部隊へと分けていた。


ただし、地形はデルタチームとの対戦時とは異なるため、全てを同じという訳にはいかなかったようだ。


「よし、全騎! 敵ブラボー陣地へ向けて突撃だっ!!

副隊長っ! 左翼軍は任せたぞっ!

歩兵隊も、後は任せたっ!!」

「ハイ。エイブラム隊長もご武運をっ!!」

「ハイっ! 先輩方もご武運をっ!!」


互いに敬礼を交わし合い、勇ましく戦場を駆け抜ける。

後には、中等部を中心とした歩兵集団が残された。





「アーデルハイドのヤツが、この戦法で俺たちを散々に打ち負かせたんだ。

今度は俺たちが、同じ戦法を使って、勝利を勝ち取るんだっ!!」

「「「「「ウォーーーーーーーーーーーーッ!!」」」」」


学生とはいえ、150騎から居る騎兵たちが次々と相手チームの陣地へ向かって突撃する姿は、勇壮であり、城の上から観戦する者たちの心を鷲掴みにする。


各所から黄色い声援が上がった。


「キャァーーーーっ!!」

「勇ましいですわぁーーーーっ!!」

「宅のボクチンに変な声上げないでくださいましっ!!

ママリンはこちらでちゅヨォーーーーーっ!!」

「ボクちゃまっ!! ママちゃまは応援しておりますわよっ!!」

「キャァァーーーーっ!!

疾風エイブラム様ですわぁーーーっ!!」

「イヤァァーーーッ!!

鉄壁アンドレア様もっ!!」


どうやら、アルファチームにもカリスマ的な人気者が何人か居るらしく、自分たちの息子しか視野に無い親馬鹿マダムの横やりも気にせず、女生徒らがオペラグラス片手に自分たちが応援したい騎兵や歩兵へ声援を送っているらしい。


そんな声援に気を良くしたのか、騎兵の一人が列を離れ、気障な笑みと投げキッスを送りながら、颯爽と城のある側を疾走して行った。


「「「「「キャァァァァァァァーーーーっ!!

クロムウエル様ぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」」


益々興奮のボルテージが上がる。


英雄的な行為や、自分の手柄を見せびらかすことは、後々有利に働くと計算ずくな男なのか、はたまた、単なる目立ちたがり屋か。


とにかく、素早く列へ戻ると、そのままブラボー守備隊が潜んでいると思われる地点へ真っすぐに進んだ。


ところが、ここでアルファチーム側の計算が狂いだす。


ブラボーチーム側は、アルファチームの作戦を先読みしたのか、歩兵全軍と騎兵半数による迎撃戦を展開していたのだ。


しかも、中等部から騎乗できる者たちを編成して作らせた『強襲偵察隊』からは、残りの騎馬隊の位置すら掴めずに、3騎が欠けてしまった。


「クソっ! ブラボーは戦の定石を知らないのかっ!?」

「怒ったって仕方ないでしょう?

ここは一つ、強襲偵察で敵陣を探るしかないのでは?」


先程単騎で城近くを走り抜けて見せたクロムウエルと呼ばれた参謀が提案する。


「よしっ! 偵察隊っ!!

4騎前へ出ろっ!!

敵陣の様子を探るんだっ!!

無理はするな!」

「「「「ハイっ!」」」」


こうして、高等部の騎兵よりも若干軽装備な中等部男子生徒らによる『強襲偵察部隊』から、4騎が偵察へ派遣された。


ところが、この4騎が、前方へ進み出て、林を超えて姿が見えなくなったと思った直後に、「ピーッ!!  4名、脱落ーーーっ!! 」と、審判から失格宣言をされてしまったのだ。


無論、審判役の王国騎士たちは、脱落理由は教えてくれない。


「なっ!?」

「敵はすぐ側に居るのかっ!?」


既に二手に別れて、右翼側と左翼側から挟撃を仕掛けようとしていたエイブラムは、自身の判断が間違っていたかもしれないと不安を顔によぎらせてしまった。


彼らが騎乗している馬たちも、一様に耳を左右にせわしなく動かし続け、視線と馬首をあちらこちらへ動かしながらも、次第に一つの方角へ鼻面を向けた。

どうやら、馬たちは林の向こう側を警戒しているようだ。


馬と言う生き物は、元来が草食動物であり、警戒心が非常に強いのだ。

その馬たちが、同じ一つの方向を向いていると言うことは、警戒すべき相手がその方向に居るという証拠でもある。


指揮官が見せてはならない不安や迷いを見せる訳にはいかない。

逡巡を振り払うように、頭を左右に勢いよく振ると、エイブラムは力強く宣言して見せた。


「ええいっ! このままでは敵の様子も分からんままだっ!

いっそ、このまま敵陣へ切り込んで行った方が、状況も判明するってものだろう?

行くぞっ!!」

「ヤレヤレ、仕方が無いですね。」


クロムウエル以下、同級生たちも同意見なのか、次々と馬首を敵陣があると思われる林の向こう側へと歩みを進めた。


「・・・・こ、これはっ!?」


「おう、遅かったなっ!!」


そこには、エイブラムには予想外の光景が広がっていた。

敵であるブラボ-チームは、いつも通りに二手に部隊を分けて、戦うものだろうと思い込んでいた。


ところが、実際には歩兵全軍と騎兵半数による迎撃戦が展開されていたのだ。


「スチュアートっ! お前っ! いつもの作戦じゃないのかよっ!!」

「ああ、俺たちだって、先日のアーデル戦観てたからな。」


ブラボーチーム隊長は、事も無げに答えた。


「クッソーっ!! あの戦いからツキに見放されてるとしか思えんっ!!」

「どうする? 投降するなら、このまま帰してやるぞ?

その代り、フラッグは貰うがな。」


ニヤニヤと笑いながら、余裕を見せるスチュアートに怒りを燃やしたのか


「そのニヤケ面を吠え面に変えてやるから覚悟しろっ!!」

「ほお、やる気になったか。」


100mは離れていようかという距離で対峙していた両軍騎馬隊が向かい合う形で陣形を組み直した。


とはいえ、アルファ騎兵隊は75名しかおらず、敵騎兵は80を若干とはいえ超えている。


「こうなりゃヤケクソだっ!!

全軍突撃っーーー!!

アルファチームの意地を見せてやれぇぇぇっ!!」

「フン。意地なんぞに付き合わされる部下や後輩たちが可哀そうだな。

俺たちも行くぞっ!!

全騎、付いてこいっ!!」


スチュアートが号令を掛けると、80騎を超える騎兵たちが前進し、アルファチームの騎兵らと交差する形で槍を振るった。


双方の騎兵隊が激突したことにより、次々と落馬したり、致命傷部位へ槍が当たって、数名の落伍者が出た。


そうして騎兵同士による乱戦模様が繰り広げられている所へ


「弓隊っ! 狙えぇーーーっ!!」

「クっ! しまったっ!!」


クロムウエルが素早く状況を察知したようだが、時既に遅しだった。


「放てぇーーーっ!!」


乱戦を繰り広げる騎兵隊へ向けて、ブラボーチームの歩兵隊による精密射撃が次々と襲い掛かる。


先のデルタチーム戦でもそうだったが、足止めされて、機動力の落ちた状態の騎兵であれば、弓兵にとっては、狙いやすい的になるのだ。


目の前の敵騎兵に気を取られ、横や後方、斜め側面などから襲いかかる弓矢に、次々と落伍判定が下されていく。


「フム。こちらの被害は14騎ばかりか。

まあ、人の戦法を真似した割には、少ない方だったかもな。」


戦闘開始から既に30分余り、アルファチームの騎馬隊の半数は、隊長であるエイブラムを含めて全滅させられてしまった。


スチュアートは周囲を見回して、悔しそうに落伍判定を下されて、城へトボトボと手綱を引きながら歩き去るエイブラムらアルファチームの騎兵隊の面々を見下ろしていた。


そこへ、アルファチームの残りの騎馬隊が到着したが、落伍判定を受けて、歩き去ろうとしている自分たちの隊長らの姿を目撃してしまい、戦意がガタ落ちしてしまう。


「お? 新しい獲物が来たみたいだぞ?

遠慮は要らん、狩ってしまえっ!!」

「「「「「えっ!?」」」」」


哀れにも、残りの70騎強は居たであろうアルファチームの騎兵隊は、こうして、指揮系統も機能する前に、騎兵による突撃と乱戦足止め、弓兵による精密射撃の餌食となり、一方的に散々に狩り取られてしまったという。


「あーあ、スチュアート先輩って鬼畜ですね。」

「お前、俺は我が軍に勝利を齎すためにだなぁ・・・。」

「分かってますよ。先輩。」


ブラボーチームには、中等部偵察騎兵として、ベゼル・シュラーケン騎士家嫡男が参加しているようだ。


「さあ、戦は半分が終わったばかりだ。

残りの歩兵たちも、馬鹿な先輩たちに付き合わされたばかりに、不安に思っていることだろう。

早く行って、解放してやろうじゃないかっ!!」

「本当。物は言いようですね。先輩。」


ベゼルが隣に並走しながら告げると、スチュアートはニヤリと笑い返した。


「では、残りの騎兵隊も合流せよっ!!

歩兵隊は、守備隊に40だけ残して全員付いてこいっ!!」


驚いたことに、攻撃へ行ったと思わせておいて、騎馬戦が不利になった時のために、残り半数を温存していたらしい。


林の中から、続々と70騎を超える騎兵たちが姿を表すと、スチュアートらの騎馬隊へ合流して行く。


そして、歩兵たちから260名ほどが前へ進み出ると、アルファチームの陣地へ向けた進軍が開始された。


無論。結果は灯を見るよりも明らかで、アルファチーム守備隊は、散々に打ち負かされ、フラッグはブラボーチームの手に渡ってしまったという。



※変更済み




『負け組みの遠吠え』


「クッソーっ!! これも全部アーデルハイドが悪いんだっ!!」

「エイブラハム。止めようぜ。恰好悪いって。」

「五月蠅いっ!! お前だって、この作戦なら絶対に勝てるって言ってたじゃないかっ!!」

「いや、敵が正攻法ならって、ちゃんと条件付きで言ったぞ!?」

「そんなの知るかっ!! 参謀なら参謀らしく、女の尻ばかり追いかけてねぇーで、ちゃんと戦法を考えろよっ!!」

「なっ・・・ 失敬な。私はだなっ!!」

「っかーっ!! 男のクセに『ワタシ』だなんて言うなっ!!

男らしくだなぁ『オレ』って言ってみやがれっ!!」

「あー。脳みそ迄筋肉で造られている君には分からないかもしれないが・・・。」

「もういいっ! 次で勝つぞっ!! 次でっ!!」


単細胞生物はお気楽で良いなぁ・・・・

なんて、失礼なことを胸の内でそっと思いながら、次は3位決定戦だなと、一度沈んでしまった士気をどうやって立て直そうかと今から悩むクロムウエルであった。




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