52.ソフィーからの挑戦状(贈り物) 『カトル-カール』と『トライフル』
※変更済み
ソフィーがメイドにお使いを頼んだ同日午後。
双白百合印の荷馬車が、ガタゴトと石畳の上を、木製の車輪で進む姿があった。
御者台には、若い男性が座り、巧みに轍内へ車輪を乗せながら、道を行く。
インテグラ辺境伯 ― 王都別邸 ―
辺境伯城門前には、門を挟んで、兵士が二名ずつ、内側と外側の両脇に立っている。
そこへ、先程の荷車が到着して、衛兵たちに挨拶する。
「お勤めご苦労様でーす。
お届け物でーす。」
決められた手順通り、兵士たちが荷を改める。
「どこからの荷だ?」
「へい。ソフィー・ツバイシュタイン伯爵令嬢から、ガエラ・インテグラ辺境伯ご令嬢へ、焼き菓子の贈り物でございます。」
御者台から降りた青年が、恭しく荷台から、綺麗に包装された長方形の品を差し出して、兵士の一人へ手渡した。
「中身は?」
「私は、御者にしか過ぎませんから、『焼き菓子』としか聞いておりません。」
「そうか、怪しい品でもなさそうだから、こちらでお嬢様へお届けしておこう。
ご苦労だった。」
「へい。」
一礼して、荷車へ御者が戻り、元来た道を引き返して行く。
すると、兵士の一人は、両掌に乗るくらいの、包装済みの小さな長方形の焼き菓子を屋敷へと届けた。
「ガエラお嬢様へ、お届け物をお持ちしました!」
屋敷の者に告げると、執事の一人が、品を受け取り、中身を確認する。
「フム。カトル-カールですかな。
後程、お嬢様のお茶請けにお出ししましょう。」
それからしばらくして、学園から帰っていたらしい、男装の麗人といった風情でガエラ嬢が通りかかった。
「お嬢様。お届け物でございます。」
執事が恭しく告げる。
「何かボクに届いたのかい?」
興味を魅かれたのか、執事が手にした品へ視線を注ぐ。
「ハイ。ツバイシュタイン家ご令嬢ソフィー様より、お嬢様へ焼き菓子が届けられました。」
「焼き菓子だって?」
日頃から、イケメン女子などと呼ばれているガエラ嬢でも、やはり、スイーツ類には興味があるのだろう。
「フーン。『カトル-カール』かい?
ソフィー嬢が、わざわざねぇ・・・・。
一体、このケーキにどんな意味が込められているのだろうね?
まあ、美味しそうだから良いか。
屋敷の者たちで頂くとしようじゃないか!」
こうして、ソフィーから届けられた焼き菓子は、ガエラ以下、インテグラ家で美味しく食された。
◇
インテグラ家へ焼き菓子が届けられるのと、ほぼ同じくらいの時刻に、初老の男性御者が、ラウエンブルク家の王都別邸を訪れていた。
「お届け物でさぁ。」
「ご苦労。どちらからの届け物か?」
「ヘイ。ソフィー・ツバイシュタイン伯爵令嬢から、シンシア・ラウエンブルク辺境伯ご令嬢へ、生菓子の贈り物でございます。」
こちらもまた、綺麗に包装されて荷台に乗せられていた品を、御者の男が、兵士へ手渡す。
「中身は?」
「あっしは、聞いてはおりませんが、『生菓子』とだけでさぁ。」
「フム。こちらで預かろう。
ご苦労、帰って宜しい。」
「ヘイ。では、あっしはこれで。」
門の前に立つ兵士たちへ、ペコリと頭を下げると、初老の御者は去って行った。
ここでもまた、インテグラ家と似たようなやり取りが、兵士と執事の間で交わされ、贈り物が学園帰りのシンシアの手元へ届けられた。
「それで?
こんな物がどうして、私のところに、しかも、ソフィーから贈り付けられて来たというのかしら!?」
シンシアは不機嫌だった。
談話室のテーブルの上には、生菓子の『トライフル』と呼ばれる伝統的なスイーツが乗せられていた。
「さあ? 私どもには、推察しかねますが・・・・。」
困り顔で、初老の執事が恭しく頭を垂れる。
「これが私への宣戦布告って言う訳ね。
いい度胸だわ。捨てて頂戴!」
癇癪を起してしまったシンシア嬢を宥めるのは、とても面倒だ。
初老の執事は、もう一度深く頭を下げると、生菓子を片手に大人しく引き下がると、そのまま奉公人たちの共有スペースへ運んでしまった。
こうして、ソフィー差し入れの『トライフル』は屋敷の者たちで、美味しく処分しましたとさ。
『カトル-カール』
一般的には『パウンドケーキ』と呼ばれていますよね。
小麦・砂糖・バター、卵、これらの全てを、同量=1パウンドずつ配合して、オーブンに入れて焼くだけで完成!
英国でも好んでお茶請けに用いられるケーキの一つだとか。
『トライフル』
こちらも、英国では一般的に食される生菓子の一つかと。
レシピは様々ですけど、代表的(?)と思われる材料としては~
1.ボールを用意して、スポンジケーキを底に敷き詰める。フルーツソース(ジャムでも可)を塗る。上にスポンジかぶせる。
2、1の上に、カットしたフルーツを沢山載せる(ベリー類やリンゴ、洋梨等好みの果物)
3.2の上から、フルーツソース(ジャム可)を乗せる。
4.3.の上へ、カスタードクリームを先に乗せて、次に生クリームを下地が見えないくらいに乗せる。
好みで、ミントやブルーベリー、ラズベリーなどをトッピングして終わり!
どちらも、非常に簡単なレシピでンまい!
ウマ━(●゜∀゜●)━ス!!!!
※カトル・カール(仏語)本作中では、英国も仏国も独逸までもが混ざった感じの世界観です(藁)。
所謂『なーロッパ』ですみません。
蛇足追伸 - 後にソフィーから、どんな意味を込めて贈ったかについては説明が入る予定。




