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妹がヤンデレ過ぎて怖い件について  作者: 所天駄
第二章 学園祭編 ―悪役令嬢暗躍―
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49.疑惑のタラフライと料理人の誇り


「んーと、バイエル?」

「はい、兄上。」

「どうして、突然インテグラ先輩との結婚話しが持ち上がるのかな?」

「兄上は、インテグラ先輩がお嫌いですかっ!?」

「いや、待て待て、お前の中では、きちんと理由づけもあって、理路整然としたナニかが、あるんだろうけど、僕の中では、唐突過ぎてついて行けていないんだよ?」


バエイルの顔に、驚愕と言う言葉がピッタリな表情が張り付けられた。


「聡明な兄上が、僕如きの考えが読めないなどと・・・・」


イヤ、だから、お前には理由があるんだろうけど、僕には、インテグラ先輩と結婚する意味が分かんないんだよーーーっ!!


とりあえず、ここは一旦落ち着こう。

ボクは、深呼吸すると、もう一度弟に告げた。


「だから、お前の理由を聞かせてくれっ!!」


バイエルは、少し逡巡したようだけど、覚悟を決めたのか、ようやく語りだしてくれた。


「それは、我がツバイシュタイン家とインテグラ家双方にとって。

いては王国全体の為です。」


随分と大きく出たな。

僕個人の結婚とはいえ、確かに伯爵家の為にならぬ結婚は出来ない。

既に嫡男と決まっている僕は、個人であって、個人では無い。

公人なのだ。


自分一人の損得では、動けぬ身であれば、行動にはある程度の慎重さが求められる。


「ご説明するまでも無く、我がツバイシュタイン家は、代々続く東部軍管区を守護する武門の名門という家柄です。


それに対して、インテグラ家は、辺境伯とはいえ、元の家柄も伯爵家から始まっており、現在では既に5代に渡って辺境伯として、権勢を誇っております。


ご承知の様に、代々武門の我が家とは些か趣が異なりますが、辺境伯領内には、未だに開拓地も多く、これからの開墾などで、更なる発展が望めることでしょう。


そのためにも、インテグラ家では、大勢の労働力が必要です。


我が伯爵家では、領内にある未開墾地と言えば、南方側に残る『シュバルツラント』と若干の荒れ地くらいです。


支配下にある領都や町村に於いても、貧困層や日雇い労働者も一定数抱えている状況ですから、これらの貧困層の人々を、婚姻を機に辺境伯領へ護送、開墾作業へ従事させることで、両家の問題が解決されるでしょう。


更に言えば、平時に限って我が家の兵士たちを派遣して、開墾作業へ従事させることも可能となり、兵農一体となった開墾が促進されて、王国全体にとっても益することとなるのですっ!!」


嗚呼。成程。

それこそ、『絵に描いた餅』だ。


我が弟ながら、領民のことや、両家の発展を願って考えてくれているのだろう。

しかし、それは実現不可能というものであろう。


「お前の気持ちは良く分かったよ。」

「それではっ!!」

「うん。でも、それだけでは、両家の益とはならないだろうね。」

「え?」


背伸びしたいとはいえ、弟バイエルは未だ若干12歳だ。

子供の目線からだけであれば、彼が述べたことは、理想だろう。

だが、理想と現実は違う。


「魅力的な提案であるとは思う。

だけど、それでは、両家は動かないだろうとも思うよ?」

「何故ですか?

ガエラ先輩は、『それだけでも十分に両家にとって益となるだろうね』と仰ってました。

何が足りないというのですか?」


理解不能だと、顔を見れば書いてあるのが手に取るように伝わってくる。

でも、それでは、今後の為にならない。


「それは、自分で考えてみてくれ。

僕だって、直ぐに答えてやりたいけど、それでは、お前の成長には繋がらないだろう?」


なるべく、感情的にならないように、努めて冷静に伝えてみたけれども、どうも今一つ気持ちがすれ違いのままのようだ。


「兄上は、僕に意地悪をされるのですか・・・?」


目元に涙を浮かべて、今にも泣きだしそうな顔で、尚も言い募るバイエル。

僕の気持ちを伝えてやりたいけど、成長を促すには、時間を置いた方が良いだろう。


「そうじゃない。

そうじゃないんだ。」


残念ながら、僕の気持ちは伝わらなかったようで、納得が行かない顔をしたまま、弟は従者たちを連れて部屋から去って行った。





疑惑のタラフライについて、どう扱えば良いかとバイエルは従者たちを従えて厨房へ向かった。


「アルバスっ! アルバス料理長っ!!」

「はい。なんでしょうか?

バイエル坊ちゃま。」


右後ろに執事のティム、左後ろには専属メイドと従者を一名ずつ従えたバイエルは、胸をのけ反らせて、精いっぱい威厳を出そうとしながら尋ねた。


なにせ、12歳の少年ショタが、男盛りな年代の料理長であり、厨房勤めの総勢10名の頂点に立つ男を前にしているのだ、このくらいの背伸びはご愛敬だろう。


「例のタラフライについてだが・・・」

「ああ。それなら、今夜の夕食用に全部再加熱して出す予定ですよ?

ドラコっ!!」

「ヘイっ! 料理長!!」


副料理長のアルバスよりも若いドラコが、空になり洗い終えた巨大な金ダライと包丁を片手で運んで来て見せた。


「そんなっ・・・・!?

いつの間にっ!?」

「上で何があったかは、私らには分かりませんけどね、食材を無駄にするなんてフザケた真似は、私の目の黒いうちは許しませんけどね・・・。」


この人本当に料理人なんだろうか?

と、バイエルが少し涙目になりながら、後ずさりしてしまうと、代わりにティムが前に進み出てくれた。


「これは失礼を致しました。

バイエル様は、兄上であられるアーデルハイド様への忠義故の確認に来られたまで。

何も、料理人である貴方がたの領分まで犯そうだなどとは、考えてもおられません。」

「それなら結構。

この屋敷でも、どこでもそうだが、食材を無駄にすることは、兵士の命に直結する重大な問題だってことを、肝に銘じてもらえれば、私の出番はありませんや。

あと、このでっかい金ダライは、ソフィーお嬢様への贈り物ってことですから、お嬢に渡して構いやせんね?」

「あ、ああ。」


涙目のバイエルがようやく答えた。

ドラコは用が済んだとばかりに、スゥっと体重を感じさせない動きで重心を移動させ、自分の手元にある下ごしらえの作業へと戻ってしまった。


気を取り直したのか、バイエルは尚もアルバスへ向かう。

正直、彼の方が物腰も柔らかく、丁寧に応対してくれている分、話しやすかったのもあるのだろう。


「では、そのタラフライから何か異物が見つかった時には、真っ先に僕へ報せて欲しいのです。」

「あー そんなモンが出たら、最初にお知らせしますよ。

見つかればですけどね。」


これから、夕食までの時間に全ての準備をしなければならない厨房は、既に戦場と化していた。


「あ、ああ。頼みます。では、お忙しそうなので、僕はこの辺で・・・。」

「ええ、お構いも出来ませんで。」


バイエルに告げるが早いか、料理長もまた、自分の指示を待っている者たちへ、次々と必要なことを告げていった。


所在無気だったメイドと従者も、ホっとした表情でバイエルが屋敷内へ割り当てられた部屋へ戻るのを喜んでいる様子だった。





夕食の時間となり、珍しくソフィーとバイエルが僕と同じ食卓に座っている。

やはり、ソフィーの真意は計り知れないな。


「こちらが、本日の魚料理ポワゾンでございます。創作料理として、タラフライに若干手を加えまして、トマトソース和えに、オニオンマリネとタルタルソースを添えたものでございます。」


スープ皿が下げられて、空いたスペースへ、執事たちが恭しく一人一人の前にタラフライの乗せられた皿を運んできてくれる。


「美味しそうだな。」

「ええ、そうですわね。」

「・・・・。」


何の疑問も持たずに、手にした魚用ナイフとフォークを持った僕とソフィーは、感想を述べたけど、バイエルだけは緊張した面持ちを崩そうともしない。


前にも伝えたけど、こんな不特定多数が食べる物に、異物なんて混入しても、誰が引き当てるか分からないというのに。


僕とソフィー、バイエルがそれぞれナイフとフォークでタラフライを一口サイズに切り分けて、口元へ運んだ時だった。


「あら? 私のフライには、悪戯が仕掛けてあったみたいですわね?」


何気なくソフィーが一言呟いたのだ。


「「「「なんだって!?」」」」


僕たちは思わず立ち上がってしまった。






それからが大騒動だった。


バイエルは全てのタラフライをこの場に集めろと喚き出すし、屋敷中の者たちを大広間へ集めて、未だ調理していないタラフライを捌かなければならないとか、蜂の巣をつついたような騒ぎとはこのことだろう。


ところが、そんなバイエルとは対照的に、ソフィーはと言えば暢気なもので


「そんな面倒なことをしなくっても、屋敷中の者たちで、美味しくタラフライを食べれば良いのですわ。

そうすれば、異物が混入されていても、すぐに発見できますでしょう?」


と、何事も無いように言うだけだったのだ。


「・・・・ところで、ソフィー姉上のフライに入っていたという異物は?」

「コレでしてよ?」


小さな通信用の筒だった。


所謂『おみくじ』などが入れられている小さな筒状の物を思い浮かべてもらえれば良い。


ゴクリと唾を飲みこむと、バイエルが受け取り、開封しようとした。


「お待ちください。中に何が入れられているか分かりません。

私が開けましょう。」


バイエル専属執事のティムが進み出た。


「そうか、では頼む。」

「ハっ!」


ティムは、丁寧に受け取ると、全員の視線が集まる中で、小さな筒状の通信筒のフタを開いた。

中からは、クルクルと丸め込まれた紙片が出て来る。


「・・・っ!? 

コレはっ!!」


バイエルが疑惑が確信に変わったと、鋭い視線をシフィーへ突き立てる。

が、ソフィーは柳に風とばかりに、変わらずのんびりとくつろいだままだ。


「何が書かれているのでしょうねぇ~♡」

「・・・姉上・・・・。」


ギロリと睨みつけるけど、バイエル。

僕が怒鳴っても、怖がらない奴だぞ?


一触即発なバイエルと糠に釘なソフィー。

その二人の前で、ティムが紙片を拡げる。


『ハズレ』


ズルっと一同がズッコケる。


「おちょくっとんのかーーーーーっ!!」


耳まで真っ赤にしながら、バイエルが怒り心頭とばかりに、ハズレと書かれた紙片を何度もゲシゲシと踏みつける姿を、ソフィー一人だけが、心の奥底から愉しそうに笑いながら眺めていたっけ。



※変更済み。


今回のお話しのラストには手を加えておりません。

『学園祭』と『廃嫡疑惑』を分けただけの変更です。

混乱させてしまったらごめんなさい。

(`・ω・´)ゞ


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