48.インテグラ先輩との結婚!?
※変更更新済み
王都伯爵邸内にある、談話室には、深刻な顔をした者たちが集まり、額を寄せ合いながら、中央に置かれた物を取り囲んでいた。
「それで?」
「ええ・・・ ですから、コイツがザルツブルグ侯爵令嬢から、ソフィーお嬢様宛てでの届け物です。」
困惑顔のバイエルが、ギュスターブへ尋ねたが、聞かれた当人も困惑している。
「『贈り物』は、分かります。しかし、何故『巨大金ダライ』なのでしょうな?」
「それは僕も知りたいよ・・・ ポール・・・。」
そうなのだ、僕たちが、今、何故困惑しているかというと、ソフィー宛てに送られた品が、巨大な金ダライであり、中にはフライになったタラが大量に入っていたのだ。
「もしや、このタラのフライの中に、姉上へ宛てたメッセージが隠されているのかもしれませんよっ!!」
まるで、名探偵にでもなったかのように、バイエルがビシっと金ダライの内に満ちているタラフライを指差した。
しかし、誰も喜ぶ者は居ない。
当然だ。
誰が、どうやって、この大量に送り付けられたタラフライの身を毟って、中に密書が込められていないかと確認すると言うのだろうか?
「バイエル、お前やるか?」
「っえ・・・・ ぼ・僕・・・・・ですか・・・?」
全員の視線が一点に集まる。
当然だ。
この場に集まった全員が、そこまで暇ではないのだから。
「カ・・・カーミラ・・・さん?」
「バイエル坊ちゃま。私どもメイドたちも、屋敷の掃除やお三方のお世話などで、忙しくしております。
タラフライと格闘する暇があったら、日常生活と闘う所存にございます。」
キッパリと断られてしまった。
次に正面に位置する者へ視線を送る。
「ポール・・・・・?」
「恐れながら、私ども執事及び従者たちも同様に、屋敷の維持管理、お三方が出来ない分の対外的な交流など、多岐に渡り仕事をしている身なれば・・・。
ご容赦のほどを。」
素気無く断れられた。
「アーデル兄上・・・・」
「あのな、どこまで疑心暗鬼になれば気が済むんだ?
こんなタラフライの中に密書なんか仕込んだって、誰が食べるか分からないじゃないか。
それに、油でギトギトだぞ?
どうやって密書なんて仕込むんだよ?」
そうなのだ、ざっとだが見たところ、タラフライに裂けた跡や何かを仕込まれた形跡は見当たらない。
仮に、誰かが食べたとしても、密書などが仕込まれていれば、不特定多数が食べる調理済みの魚を、どうやって選び出してソフィー一人の下へ届けるというのだろうか。
議論は一旦打ち切りとなった。
尚も、見張らないと気が済まないのか、恨めしそうに大量のタラフライを睨み続けるバイエルを放置しておいて、僕たちはソフィーの部屋の前で立ち止まった。
「ソフィー。居るかい?
僕だ。開けてくれ。」
ドアノッカーを三回軽くノックすると、内側からドアが開いて、ミラが中へ僕とポールの二人だけを招き入れてくれた。
「お兄様。どうかなさいまして?」
「ソフィー。僕の質問に正直に答えてくれ。」
「まあ。なんでしょうか?
私に答えられる質問であれば、よろしいのですけど。」
いつもの様に、相変わらず美しい小首を傾けて、微笑んで見せる。
本当に、いつもと何一つ変わらない姿だ。
だが、今は確かめなければならないことの方が、より重要だ。
軽く深呼吸を一つすると僕は心を鬼にして、ソフィーに詰問した。
「何故、ザルツブルグ侯爵令嬢から、お前へ宛てて、大きな金ダライと大量のタラフライが贈られてきたんだ?」
「プッ・・・・・・ アッハッハッハッハッハ・・・
可笑しい・・・・・ アハーッ・・・・ フゥ。
プックックックックックッ・・・・ アハハ。」
何故だか分からないけど、急に笑われてしまった。
悔しいっ!
なんか、ソフィーに負けてしまった気がするぞ!?
何故だっ!!
「笑うなっ!!」
真面目な話しをしているというのに、何故、ソフィーは急に噴き出して、我慢できないとばかりに笑っているのだろうか。
そこのところを小一時間ほど問い詰めてやろうか?
「だって・・・ お兄様があんまり深刻そうなお顔をされて、真剣なお顔で、そんなくだらない駄洒落みたいなことを・・・ アッハッハッハッハー
あー 面白くも無い駄洒落よりも、お兄様のお顔の方が、よっぽど面白くって笑ってしまいましたわ。」
え、ソッチ!?
まさか・・・ マジで、ザルツブルグ侯爵令嬢は、くだらない駄洒落のためだけに、あれだけの大量のタラフライを金ダライ一杯に仕込んで寄越したとでも言うのだろうか!?
そんな馬鹿なっ!?
「いやっ! それよりも、僕の質問に答えろっ!!
ザルツブルグ侯爵令嬢と、ソフィー、お前は、繋がりがあるのか?」
「ええ、私、レベッカ様とは、文通友達でしてよ?」
「えぇぇぇぇ----っ!?」
一拍置いて、僕は大声を上げてしまった。
ソフィーが・・・・?
いや、だって・・・・・!?
え?
目の前が急に真っ暗になってしまい、僕は・・・・・
◇
気が付くと、僕はベッドへ寝かされていた。
「お兄様。目覚めましたの?」
「ソ、ソフィー・・・!?」
何故だ?
どうして、ソフィーがここに居られるんだ!?
そして、何故当然と言わんばかりに膝枕の体勢なのだ!?
だって、僕のことを裏切っているって白状したじゃないか・・・。
それなのに。
「どうして、僕の部屋にお前が居られるんだい?」
そうなのだ、ここは僕の自室だ。
僕は、天蓋付きのクイーンサイズベッドへ寝かされていたのだ。
ソフィーは、広いベッドの上で積み重ねたクッションに寄りかかりながら、僕の頭を柔らかな両膝の上に乗せたまま、髪を梳す様に撫で続けている。
「あら? 私が何か罰を受けなければならないようなことをしまして?
金ダライとタラフライをプレゼントしてくださった、私の友人も、何か我が伯爵家に仇名す行為をしておりまして?」
いけしゃあしゃあとは、このことを言うのだろうか。
ソフィーは全く悪びれることも無く、普段と全く変わらぬ口調と態度で受け答えしてくる。
なんだか調子が狂うな。
「主治医の診断によると、ショックによる軽い眩暈でしょうって。
良かったですわね。お兄様。
学園祭へは、参加できそうでしてよ。」
「そうか、僕は一体どのくらい気を失っていたんだい?」
「ほんの、2時間ほどでしてよ?」
そうか、僕はソフィーからの自白を聞かされて、ショックで2時間も気を失ってしまっていたのか。
「ところで、ソフィー。」
「またどうしましたの? お兄様。」
「最初の質問に戻るんだけど、どうしてバイエルたちがお前を放っておいているんだい?」
真剣な眼差しで、もう一度聞いてみる。
「それでしたら、本人たちに聞いてみればよろしいのではなくて?」
悪戯っぽくペロっと片方だけ舌を出してウィンクを送って見せるソフィー。
嗚呼。やっぱり可愛いな。
なんだか、もうどうでも良く思えてしまうほどに・・・。
ソフィーのお陰で、少し吹っ切れた気がする。
イカンイカン。それどころではなかった。
ソフィーに促されて、僕はもう一度話し合いをした談話室へと戻ってみた。
◇
談話室には、苦虫を噛み潰したような表情をしたバイエルと、普段と変わらない表情な屋敷の主だった者たちが集まっていた。
「ですから、先程から繰り返しておりますように、ソフィーお嬢様にはなんら落ち度はございません。」
「分かっている! そんなことは分かっているさ!
でも、実際に侯爵家と繋がりを持っていると白状したではないかっ!!
それだけでも十分に有罪だろっ!?」
叫び声を高らかに上げているのがバイエル。
普段と変わらず、理路整然と宥めているのがポールだった。
「若様。」
「坊ちゃま。」
「アーデルハイド様」
僕が入室したことに気が付いた執事たちとメイド頭、ギュスターブが恭しく頭を下げてきた。
「兄上っ!!
もう、お加減は大丈夫なのですかっ!?」
「ああ、心配させて悪かったな。
もう大丈夫だ。」
僕は皆を安心させるように、片手を振りながら、問題が無い事を伝えた。
「それで?
バイエルが何やら喚いていたようだけど、今回のソフィーに関することかな?」
我が意を得たりと、バイエルが水を得た魚の様に、説明してくれた。
「そうなんです! アーデル兄さんっ!
ソフィー姉様が、ザルツブルグ侯爵家令嬢であるレベッカ嬢と文通をしていると白状したのですよね!?
しかも、当のレベッカ嬢からは、金ダライと大量のタラフライと言う、訳の分からない贈り物を送り付けて来て、これはもう、立派な宣戦布告じゃありませんか!?
相手の意思だって、明確なのに、ポールや屋敷の者たちは、ソフィー姉様を庇い建てしているんですっ!!」
オイオイ。
可愛い弟よ。
最近ずっと背伸びして、『アーデル兄上』『ソフィー姉上』なんて恰好付けて、呼びにくい呼び方をずっとしていたくせに、興奮して無意識のせいか、昔の呼び方に戻っているぞ。
まあ、そこは重要でも無いから、ここは話しを進めよう。
「お前の言い分は分かった。
それで、ポールや他の者たちの考えは?」
ここで、一同を見回してみる。
「ハイ。私は、ソフィー様はなんら我が伯爵家に対しても、若様に対してさえ、敵意はおろか、不利益になる行為もしておられるとは思いませなんだ。」
この中では一番年長者となる執事長ポールが、持論を述べてくれた。
「私もです。確かに、現状ではザルツブルグ侯爵家令嬢であるレベッカ嬢が、坊ちゃま廃嫡疑惑に関係がありそうな手紙は見つかってはおります。
しかし、それ以上の証拠となる決め手に欠けているのもまた事実。
しかも、レベッカ様から贈られてきたのは、金ダライと大量のタラフライだけであり、なんらソフィー様を不利に追い込むような物証とはなり得ません。」
メイド頭のカーミラもまた、意見を述べてくれた。
「俺たちも同意見です。
今回の件。戦場に例えて、敵味方で分けるなら、侯爵家はイエロー。
敵味方識別不能であり、レッド=敵と断定するには、証拠が足りていません。
大量の食糧を送って来たからと言って、それが敵対行為かと問われれば、否と答えます。むしろ、友好の印かと。」
ギュスターブ隊長も同意見のようだ。
「だからっ!! 盗まれてしまったとはいえ、あの手紙が、確かに伯爵領から持ち帰られて!!
アーデル兄さんを廃嫡させるって、書いてあったじゃないかっ!!
どうして、それを敵対行為じゃないって言えるんだよっ!!」
激高して、怒鳴り散らしているのが弟のバイエル一人だけだ。
「兄さんっ!! コイツら全員駄目なんだっ!!
きっと、ソフィー姉さんに買収させられているか、丸め込まれてしまっているんだっ!!
僕だけが、僕だけが兄さんを救えるんだっ!!」
真剣な眼差しで、僕へ訴えかけるバイエル。
確かに、弟の忠誠心は本物だろう。
だけど、今回の件では、どうもそれが空回りしているような気がしてならないのだ。
屋敷の者たちの支持を得られなかったのも、その辺にあるような気するんだ。
「バイエル・・・ 落ち着こう。な?
確かに、僕だってソフィーが侯爵令嬢と文通しているなんて聞かされた時には、裏切られたような気がして、目の前が真っ暗になってしまったさ。
実際、ショックで気を失って、お前たちにまで心配を掛けさせてしまったくらいだ。
だけど、今、ポールたち屋敷の者たちの冷静な判断力に基づく意見を聞いて、やはり、僕も同じ思いになっているんだ。
ソフィーを断罪しても、手紙以上の証拠が現状では出て来ては居ない。
であれば、副執事長であるマシューが戻って来て、本領で何が行われているのかを確かめてから判断を下しても、遅くはないんじゃないだろうか?
だから、僕はこれ以上ソフィーを疑うことをしたくは無いんだ。
お前の忠誠心や僕のことを兄として敬ってくれている気持ちには、本当に感謝しているんだ。でも、今はこれが僕の本心なんだ。」
一気に本音を曝け出してしまった。
バイエルはといえば。
「・・・・そうですか・・・・僕は、ソフィー姉様よりも、信頼しては貰えないのですね・・・・。」
暗い表情をして、心を閉ざしてしまいそうな勢いでブツブツと何やら呟いている。
「そうじゃない。バイエル。そうじゃないんだ。
ソフィーとお前を比べてとか、信頼していないという意味じゃないんだ。
考えても見てくれ、僕もお前も、未だ十代の若者なんだぞ。
今、屋敷に仕えてくれている者たちは、皆人生の先輩たちばかりだ。
そんな人生の先輩たちが、誰一人ソフィーを疑わずに、今なお従ってくれているんだ。
きっと、そこには僕やお前みたいな、十代の若者ではたどり着けない経験や、人を見分ける力が養われているはずだと、僕は信じているんだ。
もしも、お前の言う通りで、ソフィーや屋敷の者たちが僕を裏切っているのなら、僕に人を見る目が養われていなかっただけの話しさ。
それに、あの手紙にも書かれていたけど、大事なのは、僕と言う個人でも無ければ、伯爵家でも侯爵家でも無い。
『領民と王国の民を護ること』だろ?
万が一、侯爵家とマーロンたちが結託して、僕を廃嫡させたって、お前が残るじゃないか、バイエル?
それならば、僕が居なくなったって、お前が伯爵家を継げば良いんだ。
そうやって、侯爵家と繋がりを持って、軍事力やら影響力が強化されれば、結果として、領民や王国の民が護られるんだから、悪い事ばかりじゃないだろう?
僕が、こうやって嫡男として振舞っていられるのも、全てはお前や皆が支えてくれているからなんだ。
だから、今回の騒動でも、僕はどんな結果になったって構わないと思うんだよ。」
僕が語り終えると、ポールをはじめ、屋敷の者たちは何度も頷いて、肩をポンポンと軽く叩いたり、グっと拳を握りしめたり、ハンカチで目頭をぬぐっていた。
あれ?
何かやらかしちゃったかな?
分からないけど、バイエルの反応は・・・・?
「分かりました。アーデル兄さまが、僕のことをそこまで頼ってくれていて、そればかりか、いざという時には、僕を後任に考えておられたなんて・・・・。
僕が浅はかでした。
謝ります。
すみませんでした。」
良かった。
なんとか分かり合えたみたいだぞ。
フゥ。
「でも・・・ 最後に一つだけ、お願いがあります。」
「うん?」
「我が伯爵家のためですっ!!
インテグラ先輩と結婚してくださいっ!!」
「ハイ?」
最後にどうしてこうなった?
解せぬ。
なんかこー あんまりにも深刻な感じとか、シリアスな物を書き続けてると・・・
シリアル書きたくなるってゆー?
ありますよ(*・ω-)(-ω・*)ネー




