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妹がヤンデレ過ぎて怖い件について  作者: 所天駄
第二章 学園祭編 ―悪役令嬢暗躍―
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46.張り巡らされる陰謀と親衛隊分裂の危機



「お兄様・・・・。」

「ソフィー・・・。

こんな明け方にどうしたんだい?」


僕は、寝ぼけ眼をこすりながら尋ねた。

だって、突然僕のベッドの中で、僕の身体に抱き着いているソフィーを発見してしまったから。


「・・・お兄様。以前私に『全身全霊を委ねる』と仰ってくださいましたわよね?」

「・・・っ!?

それは・・・。」


確かに、以前ソフィーに監禁されて、全身拘束具状態にされた時に、僕は言ってしまった。

でも、あの時は、そうでも言わないと、ソフィーが拘束具を外してくれないと思ったからで・・・。


「ソフィー。」


僕は真っすぐな瞳で、ソフィーの澄んだ瞳を見つめる。

相変わらず美しい瞳だ。


「あれは、きっと夢だ。」


伝えてはいけない胸の想い。

それならば、『夢』で終わらせてしまった方が、僕にとっても、ソフィーにとっても最善の選択なのだろう。


「・・・そう・・・・ですの・・・・。」


それだけ告げると、ソフィーはスっと僕から離れてしまい、振り返すことすら無く、扉をくぐって部屋から出て行ってしまった。


僕は、何故か僅かに残るソフィーの温もりが失われてゆくのを淋しく思い、少しの間だけ、未練たらしく堅く閉ざされた扉を見つめてしまった。





それからは、事態は急変することも無かったけど、僕は学園祭の準備へ戻ることが出来た。


あとは、副執事長のマシューが戻れば、本家の様子を知ることができるのだけど、恐らく早く戻れたとしても学園祭が終わった頃だろう。


そんな状況なので、インテグラ先輩たちのバンドのメンバーとして、毎日放課後には第三音楽室で練習し、その他にも必要な備えに打ち込むことが出来るようになったのだ。


「ストーップ! アーデル、今のところ、少し先走り過ぎているようだぞ。

もう少し、私たちの音に合わせてくれないかい?」

「分かりました。もう一度良いですか?」

「皆。もう一回第二楽章の二段目からやり直しだ。」

「「「ハーイ」」」


こんな感じで、心中穏やかにとはゆかないけれども、一応の表面上の平穏な日常が戻り、バイエルと共にインテグラ先輩たちと共に過ごす時間は、飛躍的に増えた。


まあ、敵味方が不明な現時点では、仕方のないことかもしれない。

一応、僕なりに用心はしているけれどもね。


その分、ソフィーと過ごす時間が、若干減っている気がするけど、相変わらず朝食と夜食は共に過ごす時間もあるから、それほど不満は出ていないみたいだけど。


「ところで、アーデル。

今年の学園祭では、君の家からは何を出す予定なんだい?」


ふと、インテグラ先輩から質問された。

そう言えば、例年僕個人か、伯爵家で模擬店に参加させていたっけ。

財力や影響力を誇示する意味合いもあるから、出さない訳にもいかないし。


「ああ、そのことなんですけど・・・。

今年はちょっと慌ただしくて、何も準備できなかったんです。

そこで、今年はバイエルと共同で、奉公人たちに協力を頼んで、メイド喫茶を出そうかと。」


隣でバイエルがウンウンと頷いている。

実は、昨日急に決めたばかりだけど、そのくらいしか思い浮かばなかったのだ。


「そうなのか。ボクも是非伺わせてもらうよ。」


何故か身を乗り出して、嬉しそうな先輩。

まさか、僕まで女装するとか勘違いしてないよね?


「そういう先輩は、何か出店されるのですか?」

「我が辺境伯領土から、特産品の山の珍味と狩猟用の武具を少々ね。」


インテグラ先輩の領土は、険しい山脈がある辺境なので、そこから珍味を販売するのだろう。狩猟用の武具にも少し興味があるな。


「僕も、先輩の出店に顔を出しますよ。」

「ああ、是非来てくれ。」


そうやって、裏に陰謀がある割には、比較的穏やかと言える日々を過ごしながら、僕たちは学園祭の日を迎えようとしていた。





その一方では、学園地下一階の一室では、更なる気勢を上げている者たちが居た。


「諸君。私はアーデルハイドが好きだ。

諸君。私はアーデルハイドが大好きだ。


学園で、授業中も、家に帰っても、食事中も、入浴中も、就寝中だって構わないっ!


365日、いつどこに居たって、何をしていたって、頭の中からアーデルハイドのことが離れないんだっ!!


それ程好きなら、いっそこのまま自分だけの者にしてしまえば良いとさえ思えるほどにっ!!


だが私は諸君に約束しようではないか!

自由で平等な告白の権利とアーデルハイドへの恋愛の解放をっ!


だがしかしっ!

現状ではそれは成し得ない!

これまでの歴代の先駆者たちがやって来た行いを見ればそれは明白だっ!


私は諸君らに問いたい!

何故、告白しては失敗してきたのかとっ!


答えは明白であるはずだっ!

我々に、ほんの僅かな勇気が足りなかったからだと。


省みるべきは省み、改めるべき点は、素直に認めて改めようではないか!

私は、諸君にはその能力も、勇気もあるであろうと信じている!


その勇気があるのならば、私は、諸君のことを『我が同志である』と呼びたいと思う。


そして、同志であるならば、私は、常に我が同志諸君と共に在る!

そして、我が同志諸君が本懐を遂げるためならば、私は自らを犠牲にしてでも構わないとさえ思っているっ!


その証拠に!

私は、現在私が持っている親衛隊Noでさえも、惜しいとは思わないっ!!


今、同志諸君は気付くべきであるっ!

今、同志諸君にはその僅かな勇気があるはずであると!


希望を取り戻せっ!

勇気を奮い立たせよっ!

自由を我が手にっ!


打倒すべき敵は、現体制にこそあるっ!

現在親衛隊に所属する者は数百名からに上る!

にも関わらず、自由に告白する特権を有しているのは、僅かに30名だけだ。


同志諸君に問をう。

この30という数字は何だっ!?

何の根拠があって設けられた制限なのかっ!?


知っている者も居るであろう?

予想した者たちだって大多数ではないのか?


この30名という数字の根拠は、初期メンバーの中でも、アーデルハイドと同級生だった女子のみに与えられた特権だったのさ。」



演説の効果を確かめるかのように、扇動者アジテーターは言葉を区切った。

そして、自分が発した言葉を、聴衆が噛みしめ、理解するのを待った。


効果は絶大なようだ。

この場に集まった者たちの中から、事情を知らなかった者たちがザワつく。


その様を確認すると、鷹揚に手を挙げて、場を鎮めると、尚も扇動者は言葉を続けた。


「だが、この僅かな数字は、本当に現状に見合う数字なのだろうか?

私は問い質したいっ!!


現在の会長とその取り巻き立ちの姿勢をっ!

彼女たちは、特権数字であるはずの30番までの番号を得ていながら、一度も告白すること無く、他者へ番号を譲りもしないっ!


それでいて、持たざる者たちが告白しようとすると、何故不当に制限を設けるのだっ!


同志諸君っ!


私の問いは、果たして間違ったものなのだろうか?


同志諸君っ!


正しいのは、どちらなのだろうか?

現体制に疑問を持つ、私か?

それとも、現体制こそが正義だとでも言うのだろうか?


決してそうでは無いと、私は確信しているっ!!


ましてや、三学年においては、間もなく卒業と言う、強制的な親衛隊からの排斥を迎えようとしている者も多く居るではないかっ!!


このまま手をこまねいていて良いのだろうか!?

同志諸君!


今こそ自由を我が手にっ!

好きな人に想いを伝える。

こんな簡単なことを、不当に圧力を掛けて制限するなど、今こそ撤廃するべき時ではないだろうか?


私は、君たちの先駆けとなって、告白して見せようっ!

そして、無残にも散ったとしたら、その時は、潔くキッパリと諦め、親の決めた婚約者とだって添い遂げて見せよう。


だが、それは正々堂々と告白をしてからでも遅くは無いはずだっ!


自由を我が手にっ!

平等な告白の機会をっ!


ジーク・アーデル!」


扇動者が、心臓に右拳をトンっと当てて、Lの字に掲げると、その場に集った者たちが同様に自分の右拳を心臓へ当て、腕をLの字にビシっと掲げて見せた。


「「「「「ジークッ! アーデルッ!!

ジーク! アーデルっ!!」」」」」


呆れたことに、その場には200名を超える生徒たちが集まり、全員が薄い水色の円錐形の目だけがくり抜かれた布を被っており、誰一人顔が分からないようになっていた。


その中には、背の高い者も居れば、低い者など、そのほとんどが女性らしいという以外には、特徴を捉えにくいように偽装されていた。


だが、扇動者の台詞から推察するに、アーデルハイド親衛隊の中から、現体制に不平不満を持つ者たちが、これほどまでに居り、クーデターを企てているらしいということは察せられた。


「カーラ・・・ なんかちょっと怖いよぉ・・・。」

「あー だからあたしは、こーゆー所にはあんまし来たく無かったっしょ

ユーリが興味あるー なんて言うからっしょ?」


おや、こんなところに、ユーリ子爵令嬢とカーラ男爵令嬢も居たようだ。


「シッ! あまり自分の名前や素性が分かることを言うものでは無いわ。」

「はい・・・ シャーロット先輩・・・。」

「だから! 名前を出さないでとっ!」


それどころか、シャーロット辺境伯令嬢と二人の親友まで、一緒に加わっていたようだ。


「ソコ! 何をヒソヒソ話してますのっ!

演説の妨げになるでしょっ!!」


小さな声でやりとりしていたが、すぐ前で熱狂的に傾聴していた女子から注意されてしまった。


「ほらー 怒られたぁー」

「ゴメンナサーイ」


三人は素直に謝り、扇動者が語る『明るい未来へ向けた計画』とやらに耳を傾けた。


「同志諸君。

諸君には、もう一つだけ、心に刻んでおいて欲しい共通の敵が居る。」


またしても、芝居がかって言葉を区切る。

ザワザワと周囲を見回す親衛隊員たち。


「共通の敵?」

「誰かしら?」

「一体現会長以外に、どなたが敵だと言うのかしら?」


扇動者は、もう一度手を振り、場を鎮める。


「アーデルハイド様には、常に側に張り付き、身動きの自由、及び、恋愛の自由を妨げている強力な敵が居る。


残念ながら、これまでは、その認識すら持たない者が多く、『彼女』の存在に阻まれてきた。


実に賢い。

実にずる賢いやり方だ。


だからこそ、これまでは、失敗を積み重ねて来ていたんだっ!

何せ、敵は姿さえ表しては来なかったのだからな。


だが、過日の学園行事に、その敵は大胆にも公に姿を晒したのだ!

諸君は、覚えているだろうか?


あの『queenクイーン ofオブ nightナイト』の場で、アーデルハイド様のパートナーを務めていた『妹』の存在をっ!!」


その場に集まった多くの者たちの頭上に、巨大なエクスクラメーションマーク『!!』が浮かんだことだろう。


「・・・・そうよ・・・ そうだったわね・・・・。」

「私たちがー 失敗したのはー 妹のせいだったもんねー」


顔は隠しているが、ティファニーとイヴォンヌもこの場に紛れていたようだ。


「そうだ!

『妹』という身分を利用して、アーデルハイド様を束縛している悪女こそが、『ソフィー・ツバイシュタイン』であるっ!!


さあ、我が同志諸君っ!


これで、全ての敵の存在が明らかになったっ!!

これでもう、我らに懼れるべき者は、何者も存在しないっ!


輝かしい勝利は、既に約束されているっ!

自由を我が手にっ!

ジーク! アーデルーっ!!」


「「「「「勝利を我らにっ!!

ジークッ! アーデルッ!!

ジーク! アーデルっ!!

ジーク! アーデルっ!!

ジーク! アーデルっ!!」」」」」


後には、割れんばかりの歓声と、耳をつんざくような唱和する声が繰り返された。



L(゛ `-´)ジーク・アーデル!! 

L(゛ `-´)ジーク・アーデル!! 


うん。やっぱり馬鹿っぽいですよね?


「いかにも」な感じの安っぽい扇動演説というのを描いてみたいかなと・・・。

上手く描けているでしょうか?


とりま、親衛隊も一枚岩では無い訳で~

どうなることやら(・・?




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