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妹がヤンデレ過ぎて怖い件について  作者: 所天駄
第二章 学園祭編 ―悪役令嬢暗躍―
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33.悪役令嬢 ~ ティファニー伯爵令嬢 ~


「フン。やはり元隊員番号10番、現116番シャーロット辺境伯令嬢は失敗したわね。

わらわならば、このような失態は演じないわ。」


「まったく、大言壮語とはこのことよねー

取るに足らないダッサイ女だよねー。

あたしもー これじゃぁアーデル様へ顔向けできないと思うわー」


学園女子寮の一角で、6名ほどの従者たちにかしずかれながら二人の令嬢がそんな会話を交わしていた。


一人は、低身長で幼さがやや残るものの将来の美しさを約束されたと誰もが認める程の蕾のような愛らしさを持つポアゾン伯爵家第一令嬢で、頭の上にウェーブがかかった銀色のツインテールを掲げた姿が印象に残るであろう姿であった。

親衛隊No29。名をティファニーという15歳の少女。


気だるげに受け答えしていた170CMほどのスラリと均整のとれた肢体で青に近い薄紫色

の髪と瞳をした少女もまた伯爵家の人間だ。

親衛隊No30。ペリゴール家第二令嬢、名をイヴォンヌという16歳の整った顔をした少女だった。


二人は所謂中流貴族と呼ばれる、比較的恵まれた階層に位置する地方貴族の令嬢たちであり、先程まで馬鹿にしていた一学年上のシャーロット辺境伯令嬢よりも資産力も使用人の数も違う。





貴族。一言でいえば全て同じ階級に見えるかもしれない。

しかし、その内情はやはり異なるのだ。


一例として、貧乏騎士家だと、最低限の家禄高では領民200名前後の小さな寒村か、百名以下の寒村を幾つか併せて合計200名ほどの村々から租税を集めたとしよう。

その場合、所得に応じて納税させるか、頭割りで税を課するかによって若干収入は違うと仮定しても、一人頭銀貨10枚~20枚を集めたとする。


200名なので単純計算で1000枚から2000枚の銀貨が収入として得られるはずだが、実際は作物の出来不出来、出生や病死者による自然な人口増減、経済力が無いために物納や税代わりの労役で支払う者も居るため、全額を所得として計算することは出来ない。


小さいながらも領主であるならば、最低限の騎士としての務めや義務、体面を保たなければならないのだ。


領地や特産品など、様々な要因もあって、同じ家格でも経済力では大きく異なる場合もある。それがこの国の貴族社会であり、ある程度完成された階級社会ヒエラルキーでもあるのだ。


それ故に、各階層に一定割合で富める貴族と中流貴族、比較的貧しい貴族の三種類が存在している。





ティファニーとイヴォンヌの二人は、そのような格差社会の中でも比較的ゆとりのある、中流層の貴族で、幼馴染でもあった。


そんな二人のうち、最初にアーデルハイドに恋をしてしまったのはティファニー嬢の方だった。


初等科から学園に入学できていれば、彼女ももっと早くから彼を意識していたかもしれない。

だが彼女の場合は家庭教師から初等科の学問を学び、中等科から王都で人脈を広げるべく実家から送り出された。


幼馴染のイヴォンヌと共に馬車で揺られ、中等部女子寮へ辿り着いた初日には、事前に使用人たちによって整えられた部屋へ入り、夜遅くまでイヴォンヌと二人で夢を語り合ったものだった。


そうやって入学式以来幾日かを順調に過ごせていた。

そう思っていた矢先だった。


「ここは・・・ どこかしら?」


自分の学ぶべき学科は、定まった教室ではなく、教えてくれる教授の教室へ移動。

これが王立学園の授業方法だ。


いつもであれば幼馴染のイヴォンヌと共に移動して歩くのだが、今日は風邪で親友が欠席だった。


気が付けば、見慣れぬ廊下と見慣れぬ教室の数々。

周囲を歩いているのは、上級生ばかり。

そうか、妾は迷子になってしまったのか・・・。


そう気が付けば、尚のこと自分で自分が情けなくなる。

不安に顔を歪ませても、小柄な自分の存在に誰も気づいてくれない。


急いで道行く上級生に声をかけようかと思ったが、「ぁの・・・」と小さくモゴモゴと語りかけても気づいてもらえない。


時間はどんどん過ぎていくのに、どうやって次の移動先の教室まで行けば良いのか、解決策が見つからない。


そんな悪循環の中で、たった一人だけ、自分という存在に気づいてくれた人が居た。

それが、アーデルハイドとの運命の出会いだった。


「どうしたの? 

大丈夫?」


たったその一言にどれだけ救われたことか・・・。


心細さの中、誰一人顧みてくれぬ人の流れの中で、アーデルハイドだけが立ち止まり、彼女と言う存在に気づいてくれた。


「ええ・・・。少し迷ってしまったみたいで・・・。」


「一年生だね?

次の授業は何だい?」


「文法・・・です・・・。」


「それなら、こっちの通路を通った方が近道だよ?」


そう言うと、彼は自然と手を取って周囲の人の流れからティファニーの小柄な身体を護るようにして進んでくれた。


「さあ、ここの教室だよ。

文法の先生は厳しいから、遅れないで良かったね。」


柔らかくて優しい笑顔だった。


姿かたちは中性的で、少女のようでもあり少年のようでもある。

でも、そのしなやかな手は確かな力強さと異性を感じさせるものだった。


その優しさと、力強さ、頼もしさに、初対面であるにも関わらずティファニーは一瞬で恋に堕ちた。


所謂『吊り橋効果』という側面もあったのかもしれないが、恋心を意識してしまったティファニーにとって、そんなことはもはやどうでも良かった。


「好き」


この気持ちを伝えることが出来たならば・・・。

それから恋文をしたためたことが一体幾度あったことか。


残念ながらこれらの恋文は一通としてアーデルハイドの手元には届けられていない。

何故なら、全てティファニー自身の寮の机の引き出しに鍵付きで仕舞い込まれているからだ。


引き出しにしまい込まれたままの伝えたいけれども、伝わらない想いの数々・・・。

その数が増せば、増した分だけアーデルハイドへの切ない気持ちは膨らんでゆくばかりなのだ。


下世話なことを言えば、ティファニーには既に親の決めた婚約者が居る。


互いに挨拶も交わし、将来は結婚するものだと互いに信じていた相手だ。


だが、ここで、非情ではあるが、『貴族』特有の利己主義エゴイズムも在る。

即ち、『より条件の良い相手が現れた場合、破棄という選択肢も起こり得る。』というやつだ。


この場合、アーデルハイドにとっては、ああまりお得感は無い。

だが、ティファニー嬢とポアゾン伯爵家にとっては、アーデルハイドとの婚姻もしくは側室ねじ込みでさえ、『玉の輿』レベルでの利益が見込めるのだ。


無論、将来ティファニーが次期当主であるアーデルハイドから寵愛を受けたり、子を成せば、跡継ぎとなる可能性さえ拓けるのだから、ティファニーが恋心を抱いても、現時点ではなんら損失にさえならない。


これまでは、そのような損得勘定さえも自身の恋愛感情を正当化させるために用いて来たが、一歩を踏み出せずにいた。


だが、これからは違う。

前へ進む決意をしたのだから。



同じ収入があっても、使用人の数とか、立地条件、特産品の有無などで、同じ階級に居ても

大分差が出ると思うのです。

(例:年収2千万で10人を養うのと、百人を養うでは違いますよね?)



本作中での、王侯貴族収入目安(設定)


王族:王族10億~ 王:10兆(身代金換算)

公爵:年収3000億~

侯爵:年収500億~5000億くらい

辺境伯:年収500億~3000億くらい

伯爵:年収100億~2000億くらい

子爵:年収10億~50億くらい

男爵:年収2億~6億くらい

準男爵:年収8000万~1億くらい

騎士:年収2000万~6000万位


※年貢・税収入等総計であり、全額使えない前提。

 使用人・軍事費・開発・整備・開墾等ここから賄われるから。


実際の所有市町村の数や、人口、特産品や国境沿いなど、諸条件によって収入は大幅に異なる。

そう考えれば、王侯貴族というのは、現代に置き換えると「中小企業や大企業・財閥など」の経営者みたいな感じになるのかなと? (・・?


上記の中でも、シャーロット辺境伯やユーリ嬢は、収入も低い方なので、当主や嫡男にはお金を掛けれるけど、世継ぎ以外は、なるべく節約はしたいグループ。


ティファニーやイヴォンヌは、中流なので、それなりに当主、嫡男以外の子にも、お金が使える。


アーデルハイドやソフィー(表よりはもっと多い)、エリカ、クララなどは、上流階級なので、王都や他にも別宅があり、お金をあまり気にしなくても良い。(ご都合主義ではありますが)


王を『身代金換算』としたのは、戦争時に捕虜として捕まった場合の身代金=一年分の総収入位としてみました。


重ねて書きますけど~

爵位を持っている本人の年収換算なので、妻や子供たちがこの全てを使える訳では在りません。


※あくまでも、本作中での目安設定というものですので、実際の規模がどのくらいかは分かりません。

(大事なことなので二度書きました。)



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