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妹がヤンデレ過ぎて怖い件について  作者: 所天駄
第一章 妹と僕 ― アーデルハイド親衛隊は妹の旗下へ従属するか? ―
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24.『queen of night』~閉幕と衝撃~


それから、自由舞踏フリータイムを挟んで、小休止となった。


普段であれば、ここで談笑など交わしながら交流を深め合ったり、日頃目を付けていた人物を自分の派閥へ招き入れたりと、休憩のようでいて人によっては忙しかったりする。


ところが、今年はいつもと趣が異なるようだ。


「お集りの紳士淑女諸君。

本日は、特別なゲストをお招きしている。

是非、諸君にもこの方の踊る姿を見てもらいたい。」


常であれば開会宣言後には、控室か壁際で教授陣を従えて政略に勤しんでいるはずの学長が自らゲストの紹介をするなど、前代未聞だ。


いや、正確には余程特別ゲストであればあり得るが滅多に起こることでは無い。


突然、大広間の証明が落とされ、壁際の間接照明だけとなる。

薄明りの中で戸惑う学生や教授たち。


そこへ、学長が「ミュージック! スタート!!」と司会者紛いのことまでやって見せ、右手を大広間中央へと向けた。


人々の視線とスポットライトの光が大広間中央に設けられた両開きの大扉へ集まる。


ビューグルと呼ばれる、軍楽隊などが使う小型のラッパが二重奏で甲高く吹き鳴らされたと思うと、両扉が大きく開け拡げられ、そこから純白のナイトドレス姿の美少女たちが次々と舞い踊りながら入場した。


「ほぇっ!? 

ユーリ!!」


「え!?

あら、本当だわっ!?」


行方が分からなかったユーリ嬢の姿もその中にあった。


「あれ、シャーロットじゃなくて!?」


「本当だ、他にも三年生の先輩まで何人か混ざってるぞ!?」


エリカとアドルフも見知った顔を見つけ驚いてしまった。


驚愕する周囲を気にした風も無く、一糸乱れぬ秩序立った優雅な踊りを踊りながら、大広間中央にあるダンスホールへ入場し終えた80名からなるアーデルハイド親衛隊員たちは、そのまま軽やかにコッペリアのリズムに合わせてマズルカと呼ばれる優雅な踊りを披露する。


女性同士が二人一組で手を水平に繋ぎ合い、スキップするような軽やかな動きでクルクルっと回転する。


そうかと思えば、パッと手を放し、左腕を垂直に高らかに挙げて、クルリと回転。

両腕を交差しては、左右から立体交差のようにすれ違う。


そのリズミカルな動きは、見る者をすっかり魅了していた。


「・・・学長の言っていた特別なゲストって言うのはまさか?」


「・・・この子たちじゃ無いわよね・・・?」


彼女たちは学園の生徒であり、身に付けている純白のドレスをお揃いにしている以外にどこが特別だと言うのだろうか。


その場に居た全員の頭に巨大なハテナマークが乱舞した頃、更にビューグルが四重奏を吹き鳴らした。


すると、二列に分かれて恭しく中央両扉の方へ純白の乙女たちが整列しながら踊りを続け、その中へ進み出るように薄い桃色のナイトドレスと薄い水色のタキシード姿の男女が踊りながら表れた。


「アーデルハイドっ!?」


「ウソ・・・・

ソフィー・・・。」


アドルフとエリカがそれぞれ驚きながら、堂々と進み出る二人の姿を凝視していた。


ソフィーは薄い桃色を基調とした背中をザックリと開け、百合の花をイメージさせるイブニングドレス姿に、小さなティアラに見える髪飾りと小さなピンクダイヤのイヤリングで装っていた。


一方のアーデルハイドは、薄い水色と濃い蒼色をアクセントとしたタキシード姿で、胸元に一輪の小さな百合をあしらったコサージュを身に付け、中性的ではありながらも、普段よりは男らしさを感じさせる装いであった。


二人はまるで、桃色と水色の対照的でありながら、互いをより美しく、凛々しく引き立たせるために対になった一つの洗練された芸術品のようですらあった。


そんな二人を送り出した両開きの大扉は音も無く閉ざされ、踊りの舞台を中央ダンスホールへと移した。


すると、ポルカからウィンナーワルツへと曲調が変わる。


『宮廷舞踏会』が流れ出し、アーデルハイドとソフィーの二人が一礼を交わして、手を取り合い、ホール中央にて優雅に踊り始めた。


軽快な動きに、ワルツよりも更に早くクルクルと回り、ソフィーは時に背をのけ反りながら両腕をふわりと軽やかに羽の様に広げ、動きをより大きく見せる。


アーデルハイドもまた、時に軽々とソフィーを持ち上げ、腕を必要に応じて、肩へ、腰へ、踊る女性の重心を支えるようにさりげなく移動しながら、クルリと回転する。


二人の周囲には、こちらも百合の花をイメージしたような純白のイブニングドレスを身に纏った親衛隊員が、男性役、女性役を交互に入れ替えながら、見事な踊りを披露して見せた。


その美しさと、一糸乱れぬ統率の取れた動きに、周囲では羨望の眼差しや溜息、見惚れてうっかりワインを零す者が続出したという。


そうして、BGMの終了と共に、片手を繋いだままの姿勢でアーデルハイドは直立姿勢で、ソフィーは片膝を着いて、共に優雅でしなやかな一礼を観客へ向けた。


周囲の親衛隊員たちもまた、放射状に外向き片膝を着いて、一糸乱れぬタイミングで優雅に一礼を送る。

呼吸すらも忘れて、夢のようなひと時をボーっと眺めていた者たちも、一拍置いて正気に戻った。


彼女たちの踊りが終わると、周囲から一斉に鳴りやまぬ割れんばかりの拍手が起こった。


「素晴らしいっ!!

実に素晴らしい踊りでしたなっ!!

今宵の特別出演に相応しい演出でしたな。」


学長が、幅広のメガホン片手に絶賛するがその声すらもかき消されそうだ。


「今宵特別ゲストとして出演してくだされたのは、かのソフィー伯爵令嬢であります。

ソフィー嬢は、我が王立学園特別課外特待生として、高等科一学年に所属しています。」


ここで学長はわざと一瞬だけ言葉を区切った。


「特別課外特待生?」

「知ってるか?」

「いや、俺は知らないぞ・・・。」


周囲では生徒らがザワつく。


「ぇ!?」


「あら? 

私、ちゃぁーんとお兄様に言いましたわよ?」


驚くアーデルハイドにソフィーは、しれっと言い放つだけだ。


「コホン。特別課外特待生については、初耳な者も多いことだろう。


なにせ、我が校でも近年稀に見える逸材故、ここ10数年程では久々で飛び級が実現したのであるからして・・・。」


ここでも、わざとらしく言葉を区切る学長。

この狸親父めぇ。


しかし、その効果は絶大だった。


「飛び級っ!?」

「え、この学園って飛び級なんてあったのか!?」

「・・・知らなかった・・・・。」

「・・・・。」


それぞれの胸中をよぎる思いはなんであろうか。

ともかく、近年稀に出現した奇才の存在に驚愕が走ったのは確かのようだ。


十分に場が落ち着くことは不可能と判断した学長がなおも言葉を続ける。


「とにかく、特別課外特待生としてソフィー嬢は、この学園で普段授業を学ぶ必要は無い。

自宅にて好きに学び、研究に励んでもらって構わない存在。

それが、特別課外特待生だということを諸君にも認識しておいてもらいたい。


今宵は、ソフィー嬢たっての希望ということもあり、特別ゲストという形で参加してもらったが、今後も学園内の全ての授業でも行事でも好きに出入りできるのだということも、周知してもらいたい。


以上で、ソフィー嬢の紹介を終える。」


パンパンっと甲高く手を打ち鳴らすと、BGMが再会し、戸惑いの表情を浮かべたり、ソフィーのことを噂し合う者たちが彼処で見受けられたが、ひとまず中断されていた舞踏会は再会された。


学長が説明している間に、ちゃっかりソフィーとアーデルハイドらは控室へ戻っていたけどね。

結局その夜は、ソフィーとアーデルハイドと80名からの親衛隊員らが再登場することは無かった。


そうして、様々な衝撃と余韻を残しつつ『queenクイーン ofオブ nightナイト』は無事に幕を閉じた。





「ユー ・ ウー ・ リィ ~ !!」


「カ、カーラ・・・・!?」


「こんのぉーーーーっ!!

アンタは私やみんなに散々心配させてからにぃーーーっ!!」


「ひぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


高等科女史学生寮の一室では、そんなやりとりが交わされていた。


「んーで?

アンタ一体何処で何やってきたのよ!?

でもって、あのめっちゃスンゴイ踊りはなによ?」


興奮のあまり首に両手を当てて力が入ってしまう親友に、ユーリが悲鳴を挙げた。


「ギブ、ギブ、ギブーーーー!!


力は入ってるからっ!!


絞まっちゃう、絞まっちゃうからぁぁぁぁぁああああああーっ!!


グェ。」


「あ、悪ぃ。

もう絞めて無いから大丈夫っしょ?」


「ぅ、ぅん。

ハァ・・・。」


そうして、ユーリは双白百合クロスリリーの衣装箱が届いてからの経緯を話し出した。


「昨日、祖母ちゃんのふっるいドレスを見て、絶望に襲われたじゃん?」


「うん?」


「そんでね、手紙と一緒にこの真っ白なドレスが入ってたのよ。」


「フムフム。」


ユーリは宝物でも見つめるようにウットリとした目をしながら、今の自分の身体のサイズにピッタリに仕立てられているイブニングドレスを抱きしめた。


「もー地獄に仏、渡りに船、四面楚歌とはこのことかと思ったわよ!」


「最初の二つはともかく、最後のは誤用っしょ?」


冷静にツッコミを入れるカーラ。


ユーリはめげない。


「とにかく、手紙に目を通したら、今日の夕方、憧れのアーデルハイド様とご一緒させていただけるって書いてあったのよっ!!」


「あー そんで、姿隠してたの?」


コクコクと可愛らしく頷くユーリ嬢であった。


「あのね、普段はなかなか・・・その・・・声も掛けれないし・・・


こんな機会でも無きゃ、私たちなんて・・・。」


モジモジと顔を赤らめ、消え入るようにポショポショと想い人のことを語る姿は、やはり恋する乙女のそれだった。


「それで、今夜の特別枠で一緒に踊ってくださるって言うから、親衛隊のみんなで控室での踊りのタイミング合わせと練習をしてたら、一学年のダンス出れなかったのよ・・・。」


「そっか。

でも、まあ、良かったっしょ?」


「うん。

心配させちゃって、ゴメンね。」


「本当に!」


ちなみに、同様の光景はあちらこちらで行われており、参加者は皆一様に「それでも、アーデルハイド様とひと時とは言え、同じ空間で、一緒に踊りを練習したり、時には声を掛けて貰えて、幸せだった!!」と瞳を輝かせて言うのだから、呆れるやら羨ましいやら。


queenクイーン ofオブ nightナイト』に参加したアーデルハイド親衛隊の一部の者たちにとっては、そんな青春の甘酸っぱいひと時を思い出の一つに加えることに成功した。





「ところで、ソフィー・・・。」


「何かしら? 

お兄様?」


「お前・・・ ハァ。

まったく、いつの間に特別課外特待生なんてものになっていたんだ・・・?」


そうなのだ、やっぱり僕はソフィーの告げた言葉を最初に信じられなかったのもそうだけど、学長までそのことを認めたことに驚きを隠せなかった。


「んーー、そうですわねぇ・・・。

例の最後の家庭教師の先生がお辞めになられた直後ですわねぇ・・・。」


「へ?」


ソフィーの言う「最後の家庭教師」とは、第一話で

『貴方にはもう教えられることが何もありません・・・。次回からは別の家庭教師をお探しください』

と告げて辞めてしまった元学園の学部長を務め、引退した教授だ。


「その先生がどうして?」


「ええ、その先生が『貴女なら、中等科3学年へ編入学などせずとも、もっと上へ直接行けるハズでしょう。なんなら私が推薦します。』と仰って、いきなりお兄様と同じ学年では他の方々も面白く無いかと思い、一学年へ編入学しましたのですわ。」


まさかの、嘘から出た実かっ!?

確かにソフィーは自分で優秀だと言ってはいた。


がしかし、それはてっきり誇張したのだとばかり思っていたけど、どうやら本物らしい。

いや、普段の言動見てるとマジで疑わしいんだけど・・・。


すると、ソフィーが言った通り、僕が留年するか、ソフィーが本気を出して飛び級してしまえば、僕と机を並べることさえ実現してしまうと言うのか・・・。


「分かった。

お兄ちゃん。今日から本気で頑張るから。


お前に追い抜かれるのは、僕のプライドがぁぁぁぁぁぁっ!!」


「あら? お兄様ったら、急に張り切っちゃって。

そんなに私に追い抜かれるのが悔しいのですの?

ウフフフフフフフフフ。」


ソフィーはむしろ嬉しそうに微笑むばかりでちっとも僕の悔しさが分かっていないのか、それとも、まさかとは思うけど、僕の困る顔を見るのが好きとか言わないよね?



多分ですけど、読んでいて「あれ? アーデル17歳。

ソフィー15歳・・・アレ?」


と思ていた読者さんも多かったのではないかと思います。


実は、第一話で『飛び級』と言っていたので、中等部三年ではなく、高等部一学年へ。


別に謎でもなんでもなかったとは思いますが一応。


BGM年代も『仕様コメディー』です!

(`・ω・´)ゞ




それから、エリカさんの内心の叫びを声にして表すと


「(視線と主役的な全てを)持ってかれたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


でしょうか。


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