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妹がヤンデレ過ぎて怖い件について  作者: 所天駄
第一章 妹と僕 ― アーデルハイド親衛隊は妹の旗下へ従属するか? ―
18/104

18.ダイエット。それは過酷にして地獄のような苦しき日々・・・。


王都内を有閑マダムたちが駆けずり回っていた理由。


それは、毎年9月中旬に王立学園にて行われる行事。


その名も『queenクイーン ofオブ nightナイト』だった。


誤解しないで欲しいのだけどれども、決して夜のお店の名前では無い。


所謂『舞踏会』というものだ。



実際には、ダンスの練習を重ねた生徒たちに、いきなりの社交界での本番前に学園生徒という身分で、経験を重ねさせることに主眼を置いている。


故に、成人済みの王侯貴族などは招かれず、あくまでも高等部の生徒のみという限定された舞踏会なのだ。


踊る内容も、実際に社交界でのデビューへ向けたもので、ワルツを基本とし、ウィンナーワルツ、カドリーユ、ポルカなどの日ごろ練習を重ねてきた踊りを披露しあうという優雅で、貴賓に満ちた行事だ。


ところが、肝心の娘たちのウエストサイズが、ここに来て急成長=急激肥大化!

正に由々しき事態が発生しているのだ。


queenクイーン ofオブ nightナイト』まで残り僅かに二週間。


母親たちは必死で娘たちから高カロリー&高タンパク質な食事を控えさせ、ダイエットに励ませてはいるものの・・・。


一度ついた脂肪は、まるでしがみ付いて離れようとしない男のように、そう簡単には別れを告げてはくれない。



更なる深刻な問題。


それが、サイズ調整ではもはや対応不可能なまでに、布面積を広げると、全体的なデザインが狂ってしまう。

さりとて、別人のドレス、たとえば叔母や祖母などのお古を使おうと思うと、どうしてもデザインが古かったり、娘の髪の色に映えなかったりと、頭の痛い問題ばかりが発生するのだ。


せっかく苦労して、タンスの奥から見つけ出したお古を屋敷の女性陣で仕立て直して着せても

「こんな古臭いデザインの嫌よ!もっと若々しくて可愛らしさや華のある、流行遅れじゃないのにしてちょうだいっ!!」

と投げ返される始末。


こうして、王都在住の有閑マダムたちは今日も急場を仕立ててくれる店は無いかと馬車で疾走する事態となってしまったのだ。





学園寮の一角にある部屋でも、乙女が一人・・・、今は乙女と言うより『太め』という形容詞がピッタリ当てはまってしまう娘が悲鳴を上げていた。


「ふみぃーーーーん!!」


「もうっ! あれ程ドーナッツは控えろと言ったっしょ!!

そんなんじゃ、舞踏会では壁の花で終わっちゃうっしょ!!


その前に、着れるドレスはっ!? 

もうパッツンパッツンで着れないっしょ!!」


「だぁぁってぇ・・・ グスン。

神様は、神様はどこへ行ってしまわれたのよぉぉぉぉっ!!」


隣部屋同志のユーリ子爵令嬢とカーラ男爵令嬢だった。


共に現在花も恥じらう16歳。


貧しい貴族家に生まれた二人は、領地も近所ということもあり、幼い頃から行動を共にしていた。


やがて、ユーリはアーデルハイド相手に初恋に目覚め、カーラはそんなユーリを時々からかいながらも親友の恋路になんとか光明をと願っている。


ドジなところはあるものの基本的には少女趣味で、花や小動物、甘い食べ物をこよなく愛するユーリに対して、カーラは容姿は美少女だが、蓮っ葉な口調のせいか、どこか少年のようなものを感じさせていた。


「アーデル様と一緒に踊りたいっしょ?」


「・・・・ぅん。」


涙を一杯溜めた瞳で、コクンと頷くユーリ。


顔も体も真ん丸に変身しており、その姿はどこかコミカルでさえある。


「なら、今は我慢っしょ?」


「良しっ! 私頑張る!!」


「その意気っしょ!!」


とはいえ、これで何十回目の気合入れだろうかと、カーラは内心溜息をつきながらユーリの一向に効果の見えないダイエットに付き合うのだった。





今日は、王都伯爵邸の池の畔にある東屋にて、ソフィーが優雅にティカップを片手に紅茶を楽しんでいた。


すぐ脇には白髪に赤い瞳のメイドが立っている。


「お嬢様。例のアレが間もなく開催予定です。」


「そう、『queenクイーン ofオブ nightナイト』まで二週間弱。

ここまで順調なまま推移できたわね。」


「ええ。敵対勢力の中でも、シャーロット辺境伯とその愉快な仲間たちは堕ちております。

どうなさいますか?」


「ねぇ、ミラ。

フォザグラはね、一番丸々と太った時が、一番美味しいのよ?」


「では、作戦は第二段階へ移行でよろしいですね?」


「ええ。そうして頂戴。」


「畏まりました。」


所作も流麗に、ミラは一礼するとその場から去って行った。


「さぁーて、誰が一番美味しく調理されるのかしらね・・・?」


一人残されたソフィーが風に紛れるように言葉を霧散させた。





その頃、学園内の尖塔の一室では、重大かつ真剣で緊急性を要する会議が行われていた。


題して『ー第34回ー『queenクイーン ofオブ nightナイト』への参加がマジヤバイ。どのくらいヤバイかってゆーとアーデルハイド様と踊れなくなっちゃうくらいヤバイ。どうするよ?』会議。


主催:シャーロット辺境伯令嬢。

後援・お茶請け提供:プロネシス商会

参加:シャーロット辺境伯令嬢と愉快な仲間たち(80名)

ゲスト:謎の白髪美少女メイドさん


ツッコミどころが多いのは置いておいて、これまで通算33回まで話し合いを繰り広げたものの、有効な対策方法も結論すら出ずにここまでズルズルとお茶会だけやって終わっていたのだ。


ちなみに、これまでのお茶会かいぎでは、そもそもの原因である双白百合印クロスリリーの食べ物を受け取り、配下に分配し続けたシャーロットの責任を弾劾する者たちやユーリのように変わり果ててしまった自分の姿に嘆き悲しみ、傷をなめ合ってみたりと方向性すら見失っていたりしたものだ。


だがしかし、今回は違うのだ!


ゲストとして、白髪に赤い瞳を持つメイドさんが訪ねて来てくださったのだ。


線が細く、キリリとした眼差しも意志の強さを感じさせる。


ダイエット失敗経験を重ねて来た自分たち(肥満)とは異なる存在。


非肥満な美少女が、自分たち意志薄弱な者たちにとって『良い知らせ』を持ってきたと言うのだ。



これは拒む理由が無い。


否。これを拒んでしまったら最後の希望が失われてしまうかもしれないのだ。


ダイエット中の女性にとって、たとえ視野狭窄と思われようと、一途に『アーデルハイド様と踊りたい』この目標のためならば、何だって出来る気がする。


筋肉が付くことを無視して、片道5km往復10kmを歩いてみたり、毎日リンゴだけを食べ続けたり、一日朝の一食だけにサラダボウル一杯分の野菜のみを食べ続けたり、彩取り取りなフルーツだけを食べ続けてみたり、五穀断ちをしてみたりと、様々に試行錯誤を重ねて努力はしてみた。


全てに惨敗している彼女たちにとって、藁にも縋りたい気持ちでいた処へ、救いの手が伸べられたのだ。


「私に従いなさい。」


と。


無論、最初は反発した者の方が多かった。


しかし、これまでの双白百合印クロスリリーの高カロリー&高タンパク質な揚げ物中心の菓子類や料理とは異なる新商品がメイドの手にする籠に載せられていた。


「あの・・・それは・・・?」


「低カロリー、低タンパク質な、ヘルシーフードです。」


「なんと・・・・・・・・っ!?」


打ちひしがれた彼女たちに福音が齎された瞬間だった。


メイドが手にした籠には、これまで見向きもして来なかった品々が並べられていた。


「この半透明な、四角くて乾燥した物はなんですの?」


「寒天です。ゼラチン質よりも油分、脂質がほとんど無く、カロリーはほぼゼロですから、ダイエットにはもって来いです。味付けも自由にできますから。」


「なんですってっ!?」


海沿いに住む者たちならば、寒天の存在を知っていたかもしれない。


しかし、多くの令嬢たちは陸地に領地がある者が多く、その存在を知らなかったりする。


「この、緑色した葉っぱは?」


「モロヘイヤです。

ジュースにして良し、そのまま刻んで食べて良し、食物繊維、栄養素共に豊富で、寒天と併せて食べれば最強です。」


「す、すごいっ!!」


籠の中の品を見つめる眼差しに熱が籠り、集った者たちの鼻息が荒くなっていた。


「こ、このビンの中身は一体・・・?」


「果実酢です。

桃・パイナップル・ザクロなどがあります。

下手な果実汁を飲むよりも、水や氷で割って飲めば、健康的に過ごせるでしょう。」


「「「「「おぉぉぉぉーーーーーっ!?」」」」」


そして、最後にと、メイドは告げる。


「私と共に、『queenクイーン ofオブ nightナイト』までに更なる美を磨きたい者はおりますか?」


「か、神(ダイエット神的な意味で)はここにおられたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!?」


ダイエットに失敗した女性にとって、救いの手を述べてくれる存在は、神にも等しい。


白髪メイド美少女の淡々とした説明に、失望は希望へ変わり、挫折は成功へと生まれ変わろうとしていた。


このままでは新興宗教が誕生していたかもしれない。


「いいえ。

私は使者にしか過ぎません。」


あくまでも淡々と自分の務めだけを述べるメイドに、シャーロットやユーリを始め、周囲に集まっていた貴族令嬢たちは、恭しく頭を垂れ、片膝を着いて服従の意を示した。


「使者様。貴方様がどなたにお仕えかは存じませぬが、どうか、哀れな我らをお導きくださいませ・・・。」


「我があるじは、貴方を決して見捨てませんよ。」


「「「「「ハハーっ。」」」」」


スックと立ち上がったシャーロット辺境伯令嬢は、もはや何の迷いも無い眼差しで、メイドを見つめた。まるで信仰心でも宿したかのようなまなざしで。


すみません。偏見かもしれないけど筆者にとってはそういうものだとご理解いただければ・・・。

あ、実体験ではありませんよ?

フィクションですから。フィ・ク・ショ・ン。


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