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妹がヤンデレ過ぎて怖い件について  作者: 所天駄
第一章 妹と僕 ― アーデルハイド親衛隊は妹の旗下へ従属するか? ―
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13.王都伯爵邸の日常 ~ アーデルハイドの日課(朝編) ~


僕の一日は、ソフィーに叩き起こされることで始まる。


大抵は文字通り叩き起こされることが多いんだけれども、時には違うパターンもある。


「・・・ぅ・・・ん・・・。」


おや?


今朝はソフィーの姿が無いぞ?


一体どうしたというのだろうか。


先日などは、仔猫クレオに代わって僕を毎朝起こしに来ると息巻いていたというのに、忘れてしまったのかな。


そう思って、身体を起こそうとしたら何故か重い。


「あれ? どうして起き上がれないんだろうか・・・?」


「ぅ・・ぅーん・・・。

お兄様・・・・。」


「え?」


ガバっと飛び上がるようにして起きようとした僕の胸の上には、いつの間に忍び込んでいたのかソフィーの頭が乗っていた。


そればかりか、ソフィーの全身が僕の身体に覆いかぶさるようにして眠っていたのだから本当に驚いた。


「わっ!? 

ソフィーっ!!」


「・・・あら、お兄様、オハヨウございますですわ。」


「『あら、お兄様』じゃなーーいっ!!

一体全体何をやってるんだっ!?」


モゾモゾと羽毛布団の中で身を捩りながら、更に僕の身体に抱き着いて来るソフィーと少しでも密着した状態から解放されようと抵抗する僕。


「何って・・・ 昨夜は少し肌寒かったから、お兄様で暖を取ろうと思いましただけですわぁ。

お陰でとぉーーーっても素敵な夢が見れましたの。

うふふふふ。」


うっとりしたように僕にしな垂れかかって、満足げにフゥーっと溜め気を吐くソフィーの貌をまともに見れなくて、恥ずかしいような、それでいて嬉しいような・・・。


って僕は一体何を思っているんだっ!!


まあでも、可愛い妹が幸せそうならそれでも・・・。


「それは良かったなぁ・・・・ 

ってぼくで暖を取るなぁぁぁぁぁっ!!


仮にも貴族の上に、若い男女だっ!!

万に一つでも過ちがあってはだなぁ・・・?」


イカンイカン。


ついソフィーのペースに乗せられそうだった。


そうなのだ。


この時代、貴族たるもの若い男女は決して結婚までは肌を重ねるなどあってはならないのだ。


あれ?


注意しているはずなのに、逆に嬉しそうな表情を浮かべているのは何故だ?


「・・・アーデルお兄様・・・・。

私のことを『若い男女』として、意識しておられるのですわね・・・。

嬉しい・・・・。」


待てコラ。


どうして顔が真っ赤に染まっているんだ?


何故息がハァハァしてるというのだろう?


いや、だからダメだって言っているじゃないか!!


「ちょっ! 待てぇーーーーーい!!

ストップ! タンマ!

ちょっと待って!!

堂々堂っ! 

落ち着けぇーーーーーーっ!!」


ソフィーは潤んだ瞳で僕をジィーっと見つめて来る。


知ってるぞ。


この瞳は、狩人が獲物を仕留める時に放つ光だっ!!


え、てことは、ナニコレ?


ソフィーが狩人で、獲物が僕ってコトですかっ!?


しかも、状況は二人揃って既にベッドの中。


二人を隔てている物は、薄い肌着とその上から着ている夜着ナイトウエアだけだ。


今のソフィーを止めるには心許なすぎる。


せめて、全身鎧フルプレートアーマーか大盾でも無ければ、防げない自信がある。


「待てっ!

ソフィーっ!!

待てだっ!!

待てっ!!」


「フッシャァァァァァァァァァーーーーーっ!!」


「ドウドウドウドウドウドウ・・・。

ドウドウ・・・。

落ち着けぇー


待て、だぞ、ソフィー。

待て・・・。待て・・・。待て。

ヨォーシヨシヨシ・・・。」


既に理性を飛ばしてしまって、獣にでも堕ちてしまったというのか、人語を理解出来ているのであろうか・・・。


「そうだっ!!

深呼吸だっ!!

深呼吸っ!!


いいか?

ゆっくりだぞぉーーーっ!!」


耳まで真っ赤に染まった美少女に全身で抱き付かれながら、その瞳に狂気を宿して尚も僕の着衣を脱がそうとマウントポジションで迫って来るソフィーを宥めようと悪戦苦闘していた僕には、その時は他に良い知恵が思い浮かばなかった。


「お・に・ぃ・さ・ま・ぁぁぁぁぁぁっ!!」


「だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

効果が無かったかぁぁぁぁぁぁっ!!」


身を捩り、ボタンを外そうとし、夜着ナイトウエアのズボンを降ろそうとするソフィーに必死で抵抗していたら、突然冷静な声が浴びせられた。


「おはようございます。

アーデルハイド様。ソフィー様。

まもなく朝食のご準備が整います。

着替えなどお早めにお済ませください。」


いつの間に部屋へ入っていたのか、僕付の執事ハンスが、まるで何一つ異常な出来事など無いかのように、冷静沈着なまま告げて来た。


「お、おはよう・・・。

ハンス。」


「あら。ハンス、おはよう。

もうちょっとで良いところでしたのにぃっ!」


僕付の執事とは言え、ハンスに醜態を見られてしまった僕は、気恥ずかしく、彼に何か弱みを握られたような気持になってしまった。


一方ソフィーは、自分が原因であるにも関わらず、全く恥じたり憶する様子も見せずに、極普通に振舞っているからすごいと思う。


「お兄さまも、このくらいで恥ずかしがったりなさらなくても・・・ 

うふふ。」


クィーンサイズはある天蓋付きのベッドから降り際に、僕だけにしか聞こえない囁くような小声で告げると、片方の口角だけ軽く上げてソフィーは去ってしまった。


「助かったよ・・・ 本当に。

今朝は礼を言うよ。ハンス。」


「私は仕事をしたまでですから。

お気になさらず。」


多くは語らない男ハンス。


でも、ハンスの家とは祖父の代からずっと我が家で代々執事職を務めてもらっている。


一番信頼が置ける一人であり、僕個人は親友であり幼馴染だとさえ思っている。





「今日の朝食は、スープにミネストローネをご用意いたしました。

メインにスコーン、マフィン、クロワッサン、シリアルからお選びいただけます。

副食としては、野菜サラダとフルーツ盛り合わせ、焼きベーコン、ソーセージ、スクランブルエッグ、ポーチド・エッグ、ハッシュドポテト、蜂蜜入りヨーグルトでございます。」


執事長のポールが恭しく朝食のメニューを告げてくれた。


「うん。僕は、メインはクロワッサンで焼きベーコンとスクランブルエッグ、ポテトとヨーグルトを持って来てくれ。」


「私は、マフィンにポーチド・エッグ、ソーセージとヨーグルトだけで良いわ。」


僕たちはそれぞれ好きな物を選んで、オーダーを告げるだけで良い。


「畏まりました。」


側で給仕してくれる執事の一人がオーダーを厨房へ伝える。


すると、メイドたちがワゴンに載せた朝食のために準備された品々が運ばれてきた。


「それでは、サラダからお召し上がりくださいませ。」


メイドが運んで来たワゴンから、執事たちが料理を受け取り、一人一皿ずつ給仕してくれる。冷たい物はワゴンに置いたままで構わないけど、暖かい物は、厨房から直接運ばれてくる。


そうやって、朝の優雅な食事を一時間ほど楽しむと、すぐに学園へ行く時間になってしまうのだ。


「若様。

本日の放課後にご予定の変更などございますか?」


「いや、今日は特に入れていないな。

もし変更があれば、誰か使いを寄越すよ。」


「畏まりました。」


従者たちに手伝ってもらいながら学園の制服へ着替える間、僕はポールや他の執事たちとその日の予定を再確認する。


前日に一応大まかな予定などは告げてあるけど、気が変わったり、抜け落ちてる場合もあるので、朝の短い時間で最終確認となるのだ。


身支度が終わると、2階にある準備室から階段を下りて、執事とメイドがズラリと勢揃いした玄関エントランスホールへと向かう。


「若様。

それでは、いってらっしゃいませ。」


執事長であるポールが見事に撫でつけられた銀髪頭を下げると、集まっていた一同が同様に見送りの挨拶と共に頭を垂れる。


右側に執事隊と男性従者たち。


「若様。いってらっしゃいませ。」


左側にメイド頭のカーミラさんを筆頭にメイドたちが並んで見送る。


「坊ちゃま。いってらっしゃいませ。」


そして、玄関正面にはソフィーが


「んーーーーーーっ」


またしても唇を前へ突き出して僕を待ち構えている。


ソレ、この前もやったよね?


学習能力と言う大切なものが欠落しているのではなかろうか、と心配する僕を他所に、尚もソフィーは前のめりに近づいて来る。


それにしても、相変わらず可愛いな。


もういいや。


チュッ


「まぁ、アーデルお兄様っ!?」


目を開けたソフィーは少しだけがっかりした顔をした。


「もう、恥ずかしがり屋さんですのねっ!」


「そう言うなってば。」


ちょっと照れ隠しもあるけど、まさかソフィーの唇に自分の唇を重ねる訳にもいかないよね。


僕は咄嗟にほっぺたを妹の唇に押し付けてみた。


ソフィーは少しむくれるけど、周囲で見守っていたメイドたちや執事たちは生暖かい視線で、何やら良い物を見たとでも言いたげな表情で僕たちを見ていた。


「コホン。

おっと、遅れてはいけない。

ハンス、行くぞ。」


「はい。」


僕は待たせてある馬車へ、僕付きの執事であるハンスを伴って乗り込んだ。


「出してくれ。」


「へい。畏まりやした。」


50過ぎの御者ヤンに促すと、彼は慣れた手つきで鞭を振るい馬車を発車させた。


「お兄様ぁーお早いお帰りをぉーーーーっ。」


「ソフィーは家で大人しく留守番しているんだぞーっ。」


「分かってますわぁー」


いつも馬車が見えなくなるまで手を振り続けるソフィーの姿が、車輪の勢いと共に徐々に小さくなって行く。


僕も一応見えなくなるまでは手を振り返しているのだけど、そうしないと帰ってからが怖かったりする。


「もう宜しいかと。」


「ああ、そろそろ見えなくなる頃だな。」


頃合いを見計らってハンスが手を振るのを止めても大丈夫そうなタイミングを告げる。


僕も窓の外にソフィーの姿が見えていないことを確認してから、手を振るのを止める。


これが、僕の毎朝の日課なのだ。



ブクマ&評価、本当にありがとうございます。

時々立ち止まって、どんな風に書いていこうかと考えたりしながら続いていおります。

これも登録や評価をしてくださる皆様(読者様)のお陰です<(_ _)>



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